これまでも何度か記念日にまつわるコラムを書いてきましたが、2月20日は日本アレルギー協会が制定した「アレルギーの日」です。アレルギー疾患が増えている昨今、花粉やダニに留まらず、金属や食物など、アレルギーの原因であるアレルゲンの種類は多様化しています。複数のアレルギー疾患を併発している方も少なくないでしょう。
アレルギー症状を抑えるために薬を飲んで対処するわけですが、困ったことに、薬自体にアレルギーを起こしてしまう、本末転倒な事態に陥っている方も少なくありません。医薬分業の中で、薬を患者さんに渡すのは薬剤師。薬剤師であれば薬のアレルギー対策は万全を期したいものです。今回はアレルギーの日を記念して、薬アレルギーの対処法などを復習したいと思います。
薬物アレルギーによりどういった症状が起こるのか??
副作用には、薬物アレルギーによる副作用と、そうでないものと両方存在します。実は薬物アレルギーによる副作用は、副作用全体の約1割程度でしかありません。圧倒的に非アレルギー性の副作用のほうが多いです。薬剤師でも、非アレルギー性の副作用を患者さんから聞いたときに、薬物アレルギーだと決めてしまう方が少なくないので、整理しておくことが大切です。
具体的には、抗菌剤による下痢や抗ヒスタミン薬による眠気などは、アレルギーが原因で起こる副作用ではありません。また、ウイルス疾患治療中に出る湿疹の中には服用している薬による副作用ももちろんあるかとは思いますが、ウイルス自体が引き起こす湿疹も交っているので注意が必要です。
薬物アレルギーは、薬自体がアレルゲンになるよりも、薬が生体内のタンパク質などと結合し、その複合体がアレルゲンとなることが多いです。メカニズムとして薬理作用とは何の関係もないので、その薬の拮抗薬では当然ながら抑えることができません。ただの薬疹などで済めばいいのですが、症状がひどい場合にはアナフィラキシーショックを起こし、急な血圧低下や呼吸困難の末に死に至ることもあります。ですので、どのように対応すべきか、しっかりと考えなければいけません。
薬物アレルギーはどういった薬で起こりやすいのか??
もちろんあらゆる薬でアレルギーが起こる可能性はありますが、強いて統計学的にまとめるとするならば、抗菌剤や解熱鎮痛消炎剤、ホルモン剤、酵素製剤などで起こりやすいことがわかっています。特にこれらを併用されている患者さんに投薬する際には、きちんとアレルギーについて確認することが必要でしょう。中でも特に起こりやすいのは、ペニシリン系の抗菌剤です。なお、ペニシリン系でアレルギー反応を起こした人は、セフェム系の抗菌剤でもアレルギー症状を引き起こしてしまうことがあるので注意が必要です。ペニシリン系は、耐性菌の問題などもあり最近あまり使われなくなってきましたが、セフェム系は耳鼻咽喉科などで結構使われています。ペニシリン系でアレルギーを起こした患者さんでセフェム系が処方された際には、薬剤師側で注意してあげてください。
他にも特に注意したいのは、アレルギーのある食物成分が使われている薬です。例えば、卵の成分が使われている塩化リゾチームは、卵アレルギーの人には注意が必要です。このように、食物アレルギーがある方に対しても、気を付けるようにしましょう。
薬物アレルギーを起こしやすい患者さんは予測できるの??
こちらもあくまで傾向という話にはなってしまいますが、薬物アレルギーが起こりやすい人は確かに存在します。特に、下記のような症状を持っている患者さんは、薬物アレルギーの経過観察が必要になってきます。
① 肝臓や腎臓の機能に問題がある方
② たくさんのアレルギーを持っているようなアレルギー体質の方
③ 服用中の薬が複数ある方
④ 高齢者や子ども
⑤ 栄養状態がかなり悪い方や、虚弱体質などで栄養を取っても吸収が悪い方
これらの方々には、特に注意してください。
このようにまとめてみると、薬物アレルギー対策1つとっても、結構やるべきことはたくさんありますね。
薬物アレルギー対策は、症状経過観察などとは違い、処方医ではマネジメントが難しいものです。ぜひ、薬剤師が積極的に行う業務として取り入れてみてください。