まもなく東日本大震災から7年を迎えます。未曾有の災害が起きた日の1つとして忘れてはならない日です。被災地は、食料はもちろんですが、医療の供給も不足しますから、医療系職種の専門的知識がいつも以上に必要とされる場でもあります。3月11日は薬剤師を含め医療人であれば、再度災害医療について見直す日にしたいものです。筆者は定期的に被災地に赴き、被災地での薬剤師活動も継続してきました。今回は被災地で実感した、災害時のために備蓄しておきたい医薬品やサプリメントの選択のポイントを確認してみたいと思います。

内服薬は服薬に必要な水を節約できるものを選ぶ!

まずはOTCの内服薬について考えてみましょう。
ご存じの通り、被災地では水が貴重です。この貴重な水は、食事の準備や洗い物など、様々な場面で必要になります。そのため、内服薬を飲むときの水の量も、少しでも減らす工夫が求められます。液剤・散剤・錠剤など剤形が選べる状況にある場合は、どれを選択すると良いでしょうか?
被災地では水を使わず服用可能な薬が最も適しているため、剤形に液剤があれば液剤を選択しましょう。また、散剤は必要な水の量が多い傾向にあるので、避けたいところです。飲み込むのが難しい高齢者や子ども以外であれば、錠剤を選ぶと良いでしょう。かつ、唾液とともに嚥下可能である、口腔内崩壊錠の剤形があればそちらを選ぶとより良いと思います。他にも、カプセル剤は、胃粘膜などに張り付きやすいので、服薬時、多めに水が必要である傾向があります。そのため、選択するのであれば、カプセル剤よりも、錠剤のほうが良いでしょう。
水道をひねるといつでも水が出てくる、また自動販売機でいつでも水が手に入る環境にいると、薬を飲む水の量なんて少量だから節約にならないのでは、と感じるかもしれません。しかし、1人あたりが少量でも、何名かが何回も薬を服用するとなると、かなりの量になります。被災地は日常とは全然違うんだ、という感性をまずは持つことが大事だと思います。
剤形以外のポイントとしては、被災地では食事が不規則になってきますので、内服回数が少なくて済み、空腹時でも内服できるものを優先して選択しましょう

外用薬は使い切りタイプがおすすめ!

服用しなくて良い、かつ局所だけに使える外用薬は、被災地では使い勝手が良いです。特に、前述したように空腹時でも薬を飲まなければいけない状況が多い被災地では、胃が荒れやすい鎮痛剤の服用はなかなか難しいので、痛みに関しては外用薬がかなり重宝します。
そんな外用薬の選択の際にも注意点があります。「大は小を兼ねる」という言葉通り、普段は貼布剤やテープ剤は大きめのものを購入し、適宜必要な大きさに切る人も多いと思います。同様に、クリームや点眼剤なども、用量が多いものを購入し長く使うかたもいらっしゃるのではないでしょうか。被災地では、こういった、「大きいものを切って使用する」「内容量の多いものを複数回使用する」といったことは、避けたほうが良いです。被災地の衛生環境はもちろん良いものではありません。そのような中で、例えば、貼付剤であれば、切って使用してしまうと、雑菌がつき、繁殖しやすいです。そのため、1回で使いきれる大きさのものを用意しましょう。また、クリームなども、長く使えるつぼタイプではなく、チューブタイプが良いです。つぼタイプだと直接手をつけてしますので雑菌が繁殖したり、雑菌が繁殖しないまでも汚れが混じってしまったりすることがあります。普段だと、チュータイプは最後まで出し切ることが難しいので、持ち歩くなどの理由がなければつぼタイプをおすすめすることが多いとは思います。しかし、災害時のための備蓄用であれば、直接薬剤に触れることなく出せて、かつ開封後に短期間で使い終わるチューブタイプがおすすめです

不足しがちな栄養素はビタミン・ミネラル・アミノ酸

被災地では加工食品の摂取が増えることが考えられます。加えて、過酷なストレスにさらされます。ビタミンが不足しがちになるため、特に水溶性ビタミン類を含む総合ビタミン剤のOTCを常備しておくと良いでしょう。
またミネラルはビタミンと一緒に酵素反応などに関与するので、ミネラルのサプリメントもともに摂取するとより良いと思います。また、被災地へは米や小麦よりも肉類や野菜類の流通が難しくなったり、すぐにお腹がふくれる炭水化物を中心とした食事になったりするので、タンパク質不足にも陥りやすいです。ついては、酵素自体のタンパク質の材料であるアミノ酸もサプリメントとして常備しておくこともおすすめです。
余談にはなりますが、被災地では添加物不使用のものは長く持たないため、添加物のリスクよりも食中毒のリスクのほうが上回る傾向があります。化学の専門家の薬剤師としては、こういう点にも注意できると良いと思います。普段はサプリメントの意義や添加物の意味などがなかなか理解できず、リスクばかりに目がいってしまいがちですが、被災地では有益になることも知っておいてください。

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