きたるべく薬剤師過剰時代に向けて、薬剤師免許以外の資格も取得し「ダブルライセンス」で乗りきるという選択肢もあります。
今回は、消防法に規定されている総務省管轄の国家資格「危険物取扱者」をご紹介。

どんな資格?

医療従事者の中で化学の専門家は薬剤師だけですが、この資格を取ることで、さらに国から「化学の専門家」の太鼓判を押してもらえます。

これからは病院薬剤師だけにとどまらず、薬局薬剤師も検査値の評価、処方された薬との関係の評価をしなければならないと考えられています。
現に京大病院では、院外処方箋に検査値を記載することを既に行っております。

化学の理解が検査値の理解、そして患者さんの理解につながる

検査値は総合的に判断することが求められます。
検査値は化学物質の数値です。
そして処方された薬も化学物質です。
化学を深く理解していれば、生物の専門家である医師とは違った目線から患者さんを見られるようになります。
その意味でも、是非薬剤師は取得して頂きたい資格だと思います。

何に役立つ?

薬剤師にとっては簡単でいつでも取得できると思いこんでしまうからか、薬剤師の中でも持っている方は意外と少ないです。
つまり、競合が少ない分、転職などにも有利に働く可能性があります。

有機溶媒を扱う企業・団体など、転職の幅が広がることも

具体的にこの資格を活かせる仕事としては、危険物(特に有機溶媒)が扱われている製薬企業、工場、研究所などがその代表です。
また、薬学部や医学部を擁する大学の研究室などでも、薬剤師と甲種危険物取扱者の両方を持っている人を技術者として欲しいという求人を見かけることがあります。

病院でも検査室などで危険物を扱っているところで、たまに募集をしているのを見かけます。
もちろん資格手当なども考慮されることもあります。
調剤以外の職種に挑戦したいという方には、特におすすめではないでしょうか。

資格概要

扱える物質によって甲種、乙種、丙種の三種類。
薬剤師なら全種取り扱える「甲種」を狙おう!

[資格の種類]
消防法に規定された危険物の取り扱い、また取り扱いに立ち会うために必要な資格。
扱える危険物の種類によって甲種、乙種(乙のみ第1~6類)、丙種の三種類の区分があり。
危険物の種類は、消防法の分類で第1類から6類の6種類に分かれ、甲種はすべて、乙種は指定された各々の類のみ、丙種は第4類の中でも指定されたもののみを扱える。
身近にあるガソリン・灯油・エタノールなどを含む第4類が、最も取得者が多い。
薬学部出身者であれば薬を含めたあらゆる化学物質の知識を既に学んでいることから、すべての危険物を扱える甲種を狙うべきです。(危険物の中にはニトログリセリンなどのように薬と重複するものも多数あり)
[取得方法]
総務大臣が指定する一般財団法人消防試験研究センターが行う国家試験を受験。
乙・丙種は誰でも受験可能。
甲種の受験資格は「化学に関する学科を卒業した者」「化学に関する科目を15単位以上取得した者」など。
免許発行は都道府県知事が行う。
試験は都道府県単位で年に数回実施。
[難易度]
合格率:甲種は例年約30%。
試験内容:甲種は、5肢択一で、危険物に関する法令15問、物理学及び化学10問、危険物の性質並びにその火災予防及び消化の方法20問で150分。
広く浅くの知識が問われる薬剤師国試に比べて簡単とはいえ、化学に特化した内容を狭く深く問われる。