薬局での初回の問診などで、コーヒーを飲んでいるかの確認をする方も多いでしょう。薬との相互作用という点では、お酒やグレープフルーツジュースなどと並んで影響度は高いものと言えます。薬との飲み合わせは悪いコーヒーですが、実は健康へ良い影響を与えるものでもあります。10月1日はコーヒーの日に制定されていますので、これを機にコーヒーの健康への影響に関して考えてみましょう。

コーヒーの歴史

飲料としてのコーヒーとは、コーヒーノキの種を焙煎して挽いた粉末に、水やお湯をかけて成分を濾過した液体です。名前の由来はアラビア語の「カフア」からきています。カフアとはもともとワインを表す言葉でしたが、コーヒーにワインと同じような覚醒作用があったのでコーヒーがカフアと呼ばれるようになり、発音が訛って今のコーヒーになりました。

オランダ人によって日本へと持ち込まれたのが18世紀末で、お茶などと比べると比較的歴史が浅いです。さらに日本人がコーヒーを広くたしなむようになったのは、日本にコーヒーが伝わってから100年近くも経った1899年に、真空乾燥法によるインスタントコーヒーが開発されてからです。

コーヒーの成分のうちメジャーなものはカフェインで、興奮作用・解熱鎮痛作用・利尿作用などの幅広い作用を発揮することが知られています。余談ですが、コーヒーの苦みはカフェインによるものではなく、焙煎時の化合物がその主な成分で、かつ深入りコーヒーのほうがカフェイン量は少なくなることもわかっています。

科学的にわかっているコーヒーの健康への影響とは??

長年の研究により、最近ではコーヒーを飲むことによる様々なメリットがわかってきています。例えば、国立がん研究センターの10年以上にわたる追跡調査に関する報告によると、1日のコーヒー摂取量によって全死亡リスクが変わることがわかりました。ほとんど飲まない人を1とした時に、1日1杯未満で0.91、1日1~2杯で0.85、1日3~4杯に飲む群では0.76といった具合に、コーヒーを飲む量と相関してリスクが下がるのです。(※1)

しかし、1日5杯以上飲む群では0.85と、飲まない群よりは下がるものの、1日3~4杯群よりもリスクが少しだけ上がり、1日1~2杯群と同じくらいになります。(※1)健康のためには、1日2~4杯が適量と言えそうです。

また別の観点での2015年の調査研究によると、コーヒーを1日1~5杯飲む人では、心臓病や糖尿病などの病気で死ぬリスクが低いということがわかっています。30杯以上になると、さすがにカフェイン過剰による死亡リスクが上がりますが、5杯以上飲む方でも健康への心配はほとんどありません。(※2)(ただし、妊婦さんのカフェイン安全量は200~300mgなので、コーヒーカップで2杯程度までに抑えることが必要です。)カフェイン摂取量については、コーヒーの過剰摂取よりも、高カフェイン飲料である栄養ドリンクなどの過剰摂取を避けることのほうが大事です。

他にも、前立腺がんリスクの軽減、アルツハイマー・パーキンソン病リスク軽減、勃起不全になる確率低下、うつ病リスク軽減など様々な健康への寄与の可能性が示唆されています。
一方でコーヒーには、発がんリスクがあるのではないか、という議論もされており、今後の研究が待たれます。

※1 コーヒー摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について
※2 大規模な3つのコホートにおけるコーヒー消費量の合計と原因別死亡率

まだまだ謎の多いコーヒー??

コーヒーを毎日適量摂取することが健康へ良いということはわかっていますが、実はそれらがどの成分によるものなのかはわかっていないことが多いです。コーヒーには赤ワインに多く含まれることで有名なポリフェノールも多く含まれており、カフェインの他にその効果も無視できないと考えられています。

実際に、これまでの研究において、カフェインは3~5日程度で耐性がつくことがわかってきていますので、毎日飲む人はカフェインの効果が薄れている可能性があります。また、2016年には、コーヒーが好きかどうかを決める遺伝子がある可能性が報告されています。(※3)つまり、コーヒーが好きか嫌いかは、お酒が飲めるか飲めないかと同じ論理になるかもしれないということです。

まだまだたくさんのネタがあるコーヒー。ぜひ患者さんとの雑談に利用してみてください。

※3 非加法ゲノムワイド関連スキャンにより、習慣的なコーヒー消費に関連する新しい遺伝子が明らかになる