痛みを抑えたり、また咳を止めたりといったように、今出ている症状をひとまず抑えるために薬を使用するのが西洋医学です。
これと異なり、体質自体の改善を目指すことが多いのが漢方医学です。

そのため、同じ症状でも人によって使う漢方薬の種類が違ってきます。
漢方薬は効き目が弱いというイメージがありますが、その人毎の証にきちんと合えばかなりシャープな効き目になります。

風邪や生活習慣病、花粉症などに漢方薬を使うことは有名ですが、近年、がん治療の中でも漢方薬を使おうという動きが活発化してきています。
効果が認められるというエビデンスも増えてきました。
今回は、がん漢方薬の具体例をいくつか紹介します。

がん治療のサポート薬として漢方薬は有効!?

外科手術を受けた患者さんは術後に体力低下が見られる事があります。
またそれに伴い免疫力が低下して、ウイルスなどの感染症になりやすくなったりもします。
これらの対策として、術後の体力回復の目的で「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」が使われてきました。

さらに体力回復だけでなく、ウイルス感染に対する感染防御能があることも知られて来ています。
まさに術後にもってこいの漢方薬です。

作用機序として、インターフェロン等の免疫関連因子の産生の活性化等を介しての免疫賦活によることがわかってきています。
このことの裏付けとして、術後で「補中益気湯」を投与した患者群では非投与群と比べて抗菌薬使用が少なかったという研究成果も出ています。

さらに「補中益気湯」は、手術予定患者に術前に投与した際にも、手術侵襲に対する過剰炎症等を制御して、結果として術後合併症の発生を減少させる可能性も示唆されています。
ただ、「補中益気湯」には植物ステロイドであるサポニンが豊富に含まれているので、これらによる複合的作用による結果であり、一つの作用機序では説明できないのではないかとも考えられています。

そのため、更なる研究が必要なのも事実です。
しかしながら、「補中益気湯」のエビデンスの一端がわかってきたことは有益だと思われます。

抗がん剤の副作用軽減にも効果があり!?

現在においても、がん化学療法の主役は何と言っても白金製剤のシスプラチンかカルボプラチンではないでしょうか。
ただし、抗腫瘍効果が強いかわりに副作用も強く、その対処に苦労する場合も多いです。
シスプラチンの副作用として重篤なものに腎障害がありますが、「柴苓湯(さいれいとう)」がその副作用を軽減するとの報告があります。
また、カルボプラチンの重篤な副作用である骨髄抑制を「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう、じゅうぜんだいほとう)」が軽減すること、また加えて、カルボプラチンの効果も増強することが示唆されてきています。

白金製剤とならぶ代表的抗がん剤であるパクリタキセルやドセタキセル等のタキサン系薬剤に関しての副作用に目を移してみると、代表的なものとして末梢神経障害であるしびれや痛み(筋肉痛・関節痛)などがあります。
「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」によりそれらが抑えられたとの報告例も出てきています。

ただ、いずれの場合にも、詳細なメカニズムは未知なのと、漢方薬自体も薬であることに変わりはないので、抗がん剤との相互作用や投与間隔などに注意しなければいけない点などがまだまだ課題としては残されています。
がん漢方薬の研究が進んで、増え続けているがんに対する有効な治療法の一つになる日が来ればいいですね。
他にもたくさんありますので、是非自分でも調べてみてください。