子どもの夜泣きがひどい、虚弱体質で困っている、おねしょをよくする、など子どもに関する悩みはたくさんあります。これらの症状の原因ははっきりしないことが多く、なかなか治らなくて悩ましいものです。実はこれらの悩みには漢方薬がかなり向いています。今回は子どもに使われる漢方薬についてみてみましょう。

現代の子どもに漢方薬を使うケースとは?

漢方薬は昔から使われている薬で、一見子どもには向いていないと考えられがちですが、実は逆で、西洋医学の治療を当たり前のように受診できるようになった子どもにこそ向いているものです。ここでは漢方薬が向いているケースを5つご紹介します。

(1)耐性菌や副作用を生じやすい抗生剤使用を最小限に抑えることができる
特にかぜの際に力を発揮します。かぜの際に、悪化を防ぐためによく抗生剤が処方されますが、この乱用によって耐性菌ができたり、下痢などの副作用が出たりすることが問題になっています。漢方薬にはこうしたことが起こらないため、有用です。

(2)病気になりやすい虚弱児への対応が可能である
虚弱児の場合には免疫機能や代謝機能が低下していることが多いため、西洋医学の強い薬だと副作用が出やすくなるなどの問題が生じます。

(3)西洋医学の薬で効果が得られにくい症状への対応が可能である
漢方薬は、西洋医学では対処が難しい症状にも使いやすいという特徴があります。

(4)小児心身症に対して依存などの副作用が少ない漢方薬は使いやすい
これも(3)と同様、西洋医学では対処が難しい症状にも使いやすいという漢方薬の特徴を考えれば理解できます。

(5)アトピー性皮膚炎などへの補完療法として使用が可能である
アトピー性皮膚炎などの肌疾患は子どもで多いですが、今はステロイド外用薬を含めて多くの薬が用意されています。ただし、どれも根治的に治すという点では難しいものになります。漢方薬であれば体質から根治的に改善していくことも可能となるので西洋医学で症状を抑えつつ、その補助療法として漢方薬を活用していくということが有益となります。

具体的に使われる漢方薬は?

コロナ禍が続き、子どもも自粛を余儀なくされている中で、大人以上のストレスを感じているという状況も少なくないようです。感染のリスクを上げないために、待ち時間が長くなってしまう病院にもなかなか行きづらいという現状もあります。こういう場合も漢方薬を利用することが有効です。

今回は特に、ストレス増加によって増えていると言われているおねしょ(夜尿症)を中心としてまとめたいと思います。子どものおねしょに使用する代表漢方薬と言えば小建中湯(ショウケンチュウトウ)と桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)です。
小建中湯はお腹が弱くてナイーブな子どもに向いています。おねしょなどの症状が見られたら、まずはこの漢方薬を使用してみるとよいでしょう。子どもの慢性疲労症候群、過敏性症候群、登校拒否、夜泣きなどにも使用できる他、お腹にくるかぜにも使用できます。
桂枝加竜骨牡蛎湯は体質が虚弱で疲れやすく、興奮しやすい子どものおねしょや夜泣きに向いています。

他の選択肢の漢方薬もご紹介します。
柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)は精神不安があって動悸や不眠などを伴う子どもの夜泣きや神経症などに使えます。
越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)はおねしょの他に、目の症状が強い花粉症にも使用できます。
白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)は熱がこもっている子どもの夜間多尿に特に向いていることに加え、熱中症対策としても使用できます。
また、夜泣きやひきつけが強いという場合には、抑肝散(ヨクカンサン)や甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)あたりが適しています。

子どもだと飲ませ方も大事!

漢方薬は特に苦いものが多いので嫌がる子どもも多いと思います。飲ませ方のコツも抑えておきましょう。ヨーグルト、チョコレート、ジャムなどお子さんの好きなものに混ぜる、顆粒が嫌という場合には熱湯でしっかりと溶かす、市販されている単シロップに絡めるなどが子ども用の手軽な方法になります。

乳児の場合には味覚が未熟で苦味をそんなに感じないため、少量の湯で泥状にしてよく練って赤ちゃんの頬に塗りつけるだけで自然と飲んでくれる場合が多いです。その後にすかさず母乳やミルクを与えるとさらに効果的です。余談ですが、ファーストチョイスである小建中湯は偶然にも麦芽糖成分が含まれていて、甘めの味なので飲みやすいです。

コロナ禍だからこそ、親御さんがご自身の手によって適切な漢方薬を薬局やドラッグストアで選んで子どもに与えてあげることが重要となります。そのときの選択を補助するという重要な役割を果たすのが薬剤師を含めた薬局スタッフです。未来のある子どもたちの健康の救世主となれるように、今回のコラムがその一助となるようにと願います。

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