超高齢社会に突入している日本において、がん患者は増加の一途をたどっています。薬局薬剤師ががん患者さんに接することはこれまではあまり多くはなく、知らなくても日々の業務がこなせてきました。しかしながら、在宅医療推進の昨今、薬局にもがん患者さん、もしくはがんサバイバーの方が来る場面も増えてきています。例えば、抗がん剤の点滴治療を病院の外来で受けて、下痢止めや吐き気止めなどの副作用対策の薬は薬局でもらうというケース。今回は今後薬局薬剤師が知っておくべきがん治療に関する知識をまとめます。
そもそもがん治療にはどんなものがあって、どういった特徴があるのか??
基本の「き」として知っておきたいのは、やはり日本における標準治療です。
下記の3つが基本的な療法となります。
(1)手術によってがん組織を取り除く外科療法
(2)抗がん剤を使ってがん細胞をやっつける化学療法
(3)放射線を用いてがん細胞をやっつける放射線療法
併用により有効性を上げることも期待できます。それぞれ特徴をみていきましょう。
(1)外科療法の特徴
根治に最も適している反面、見つかりづらい小さながんや転移したがんには不向きです。また、身体に傷をつけてしまうので、患者さんへの負担が大きくなります。近年はなるべく傷を少なくしたり、出血量を少なくしたりといった進歩もしてきています。
(2)化学療法の特徴
血流にのって全身に到達するので発見が難しい小さながんにも有効である反面、がん以外の組織にも影響することでつらい副作用が起こりやすい特徴があります。がんだけに到達するような分子標的薬などの登場で改善はされてきています。
(3)放射線療法の特徴
手術とは違い身体に傷をつけなくて済むので(この特徴を非侵襲性といいます)、患者さんへの負担が小さくて済むのはメリットです。反面、かなりの高線量の放射線を用いるので、がん以外の組織に放射線が当たると様々な副作用が起こることがあります。これも近年、改善の方向には進んでいます。がん組織だけに放射線があたるように、照射野範囲決定に物理学的知識を活用して計画する治療法や、がん組織だけに大きな影響を与えうるような陽子線などが採用され始めているのです。
その他にも熱を使った温熱療法や、昨今話題の免疫療法などもありますが、まずはこの3つをきちんと理解することが大事です。
薬局薬剤師が直面するようながん治療に関する事例とは??
(1) 外科療法はがん組織時代を除去しますが、(2) 化学療法、(3)放射線療法に関しては、がん組織を体内において直接破壊するというイメージです。
(2)、(3)は確かに身体を傷つけないという点では大きなメリットがありますが、手術適応外の高齢者の患者が今後増えてくることを想定しておかなければなりません。特に注意するべきは、腫瘍崩壊症候群です。これはがんが体内で破壊されることで、がん組織内にあった核酸をはじめとする分解産物が血液中に大量放出され、重篤な病態を引き起こすことをいいます。具体的には、がん組織から流れ出た核酸が血液内で分解して、高リン酸血症を起こすことが挙げられます。また、核酸からヒポキサンチンが生成され、その後キサンチン酸化酵素により尿酸へと代謝されることで、高尿酸血症を起こすこともあります。
予防としては水分補給や尿のアルカリ化に加えて、アロプリノールの投与が必要になってきます。がん治療中の患者さんでアロプリノールを服用していたり、もしくはこの服用歴があったりすれば、痛風ではなく、腫瘍崩壊症候群の予防のために飲んでいる可能性が高いでしょう。予防という観点からも服薬指導をしてみると良いでしょう。
がん治療の知識は今後必要になってくることは間違いありません。ぜひ勉強してみてください。