最近、週刊誌などで特集を見かけるようになってきたバイオ医薬品。詳しく知りたいという患者さんも増えてきました。ただ、実際に説明するとなった際に正しく説明できる方は意外と少ないです。今回は、そもそもバイオ医薬品とは何か、そして、バイオ医薬品の後発品であるバイオシミラーの特徴について確認してみましょう。
バイオ医薬品の特徴は??低分子医薬品と比較してみよう
バイオ医薬品とは、簡単にまとめると、生物の持っている機能を応用して製造された医薬品のことです。具体的には、いわゆる生物学的製剤などが該当しますが、微生物や動物細胞に培養をさせたり、遺伝子を組み換えたりして作られた医薬品のことをいいます。例えば、全血および血液成分などの血液製剤、受動免疫のための抗体などのワクチン、血液成分などがバイオ医薬品にあたります。
医薬品の大部分は、化学合成によって製造された低分子医薬品です。一方で、バイオ医薬品は低分子医薬品に比較して、かなり分子量が大きいことが特徴です。糖、タンパク質、核酸(またはそれらの混合物)といった高分子の成分を含むことが多いのです。大きくて複雑な分子によってできているため、バイオ医薬品は気温や光などの影響を低分子医薬品に比べて受けやすく、多くは保存方法に特別気を使う必要があります。わずかな変化でも最終産物が変わってしまうおそれがあり、現に冷蔵保存や遮光が必要なものばかりです。製造工程も複雑であることからも、製品の安全性・有効性を保つべく、様々な基準に高い精度を保って適合しなければならないのです。
また、経口投与しても有効成分が分解されてしまうため、現状、錠剤のバイオ医薬品は存在せず、注射剤が主であることも特徴として挙げられます。実際に商品化されているものとしては、関節リウマチなどに適応されるヒュミラ®や乳がんの抗がん剤のハーセプチン®などが存在し、多くの患者さんを救っています。
参考資料)
一般社団法人くすりの適正使用協議会「これだけは知っておきたいバイオ医薬品」
日本製薬工業協会「バイオ医薬品 医療の新しい時代を切り開く」
余談ですが、インスリンもバイオ医薬品に含まれます。かつては動物からインスリンを採っていましたが、近年はリコンビナントDNAを用いた遺伝子組み換えによって作り出したリコンビナントタンパク質を用いることが多くなっています。遺伝子組み換えと聞くと外的で人工的な印象ですが、生体内での現象を利用するという点ではバイオ医薬品に分類されます。
最近よく聞くバイオシミラーとは??
バイオシミラーは「バイオ医薬品の後発品」という意味です。「生物」を意味する「バイオ」と「類似の」を意味する「シミラー」に由来します。ここでポイントがあります。一般的に後発品というと、先発品と「同等の」という表現をすることが多いですが、ここでは後発品にも関わらず「類似」という意味になっている点です。なぜかというと、生物を起源とするこのバイオ医薬品に関しては、いくら成分が同等でも、品質や有効性などが同じとは限らないからです。同じ生物でも臓器の大きさも違えば、当然それに伴う品質も違ってきます。さらに遺伝子組み換えによって生体内でリコンビナントタンパク質を作り出す際には、その生物内での代謝過程はさらに違ってきます。
また、バイオ医薬品自体が高分子なので、品質などの分析も低分子医薬品に比べて困難という側面もあります。タンパク質のアミノ酸配列が同じでも立体構造が違うとその生理機能が変化してくる可能性もあります。このようなことが理由で、バイオ医薬品の後発品は同等と言うことは不可能であり、あくまで類似ということでバイオシミラーという名前になっているのです。
バイオシミラーの承認申請の際には、一般的な後発品とは異なり、同等性・同質性を検証するための臨床試験を行うことが求められています。しかしながらまったく同じにするのはやはり不可能です。そのため、バイオシミラーの承認の際には、品質特性の点で先行バイオ医薬品と類似性が高く、かつ、品質特性に何らかの違いがあったとしても最終製品の有効性・安全性に有害な影響を及ぼさないことを証明することで医薬品として認定されることになっています。
薬剤師の中にも、バイオシミラーをただのバイオ医薬品の後発品とだけ認識していて、結果として誤った説明を患者さんへしてしまうという方も少なからずいるようです。生物由来のバイオ医薬品は化学合成した低分子医薬品に比べて生体との相性もよく、それに伴って有効性がより高いことが多いという特性から、今後さらに製品化されるでしょう。薬剤師であれば、ぜひ正しく患者さんに説明できるようになってください。