がん治療においては、外科治療、放射線治療、薬物治療が3大治療(標準治療)と呼ばれているメジャーな方法です。
それらとはまったく別枠でサプリメントなどを利用した代替医療というものが存在します。
きちんとしたエビデンスが蓄積されてきた一方、副作用が報告されているものもあります。
今回は代替医療について議論してみたいと思います。

そもそも代替医療ってどんなもの!?

健康食品、サプリメント、漢方、鍼灸といったものは西洋医学を補完・代替するものと見なされ、正式には「補完代替医療」と呼ばれています。
21世紀に入り、厚生労働省がん研究助成金「がんの代替療法に関する研究」が始まり、どのくらいのがん患者が代替医療を利用しているかという大々的な調査が開始されました。

4年間調査した結果、がん患者のおよそ半分が何らかの補完代替医療を利用していて、その大部分は健康食品とサプリメントという事実がわかりました。
がん患者さんは藁をもつかむ思いで治るものなら何でも試したいと思ってしまうのと、かつ健康食ブームの影響がそういった背景にはあると推測されます。
その後も、代替医療の研究調査は続けられていき、その中で、サプリメントや健康食品を利用している患者さんの割合が年々増加傾向にありました。

研究チームの調査で明らかになったのは、代替医療自体にはがんが縮小したり消失したりするのに科学的に有効であると言える報告はなかった一方、標準治療における副作用軽減や全身倦怠感を緩和する効果が報告されました。
代替医療は標準治療と比べて単体でがん自体を治すという点ではあまり有効ではないが、標準治療をまさに「補完」するという点では一定の効果があるようです。
実際に、最近では厚生労働省も、西洋医学と民間医学とを組み合わせた「統合医療」として情報発信を始めています。

最近話題のサプリメントや健康食品にも危険性はつきもの!?

がん患者に最も多く摂取されているキノコ類健康食品としては、アガリクスが挙げられます。アガリクスは食品という印象が強いので、ついつい安全だと思いがちですが、実は、アガリクスが原因と考えられる肝機能障害が数例報告されているという事実があります。
この事実をふまえて、病院によっては、抗がん剤治療を開始する前に、服用の有無を医師、看護師、薬剤師による三重チェックを必ず行っているところもあるくらいです。

アガリクスの次に利用者が多いプロポリスでも急性腎障害の報告が、また、サメ軟骨で嘔吐などの報告が複数あります。サ
メ軟骨という名前からはわかりづらいですが、これにはカルシウムが多く含まれているため、特に高カルシウム血症の患者にはすすめられないことも覚えておくと良いでしょう。

また、服用するものではないですが、ストレス軽減でも注目されているアロマテラピーも精油によっては皮膚が荒れたり、女性ホルモンに似た作用を持つ成分が含まれた場合には乳がんや子宮体がんの状態に影響を及ぼす可能性だってあります。

薬であれサプリメントであれ化学物質を含有するものである以上は副作用の想定は必ず常に意識しないといけません。
化学物質の番人である薬剤師であれば、是非常に意識してみてください。