新型コロナウイルスが蔓延している中で、新しい研究成果が日々発信されています。薬局にいらっしゃる患者さんから最新の情報について質問されることも多く、今後は医師だけではなく薬局薬剤師も論文から最新の知識を得ることが必要となってくるでしょう。今回は英語で執筆された論文でも読めるようになるためのコツを紹介します。
論文は日本語とは限らない!
思えばコロナ禍の前から疾患や薬に関して、日々最新の情報がアップデートされる状況は変わりませんが、コロナ禍がそれを促進した印象を受けます。日々テレビなどのマスコミが報道する情報はすでに数日前~数ヶ月前に出された情報が多いので、医療人であればもっと新しい情報に触れたいものです。
論文と一口に言っても専門的には実は様々な種類があり、広い意味で知られているのは学術雑誌に掲載される「学術論文」になります。これはまさしく誰かが研究を行って何らかのデータを出し、それをまとめて結論を導き、新しい知見として議論を加えるというものです。これは研究者であっても自分の専門と違う研究の結果の解釈はかなり難しいです。他にも、いくつかの最新学術論文の成果をテーマでまとめたものとして「総説」、ある学会で発表した内容などの知見をまとめた「会議録」などがあります。
学術論文に比べて、総説や会議録などは短いものが多く、かつ解釈を交えながらシンプルにまとまっているものが多いので比較的読みやすいという特徴があります。また、学術論文の中でも特に新しい知見が書かれているものは「原著論文」と呼ばれ、これは世界中の研究者間でシェアすることが前提となっているため、英語で書かれていることが常識となります。
原著論文を読むことで最新知見をいち早く知ることができる!
原著論文に関しては、昔は研究者同士が紙でやりとりしたり、大きな図書館に保管されている分厚い書籍の中から自分で探したりして、一般の方では入手困難でした。インターネットの発達に伴い、最近ではweb上である程度の論文誌を入手できるようになっています(ただし、一部の論文ではお金を払わないと全体を入手できない場合もあります)。
世界最大の論文検索サイトとしてPubMedが存在し、調べたい検索キーワードを打ち込むとそれに関連した論文リストが新しいものから順番にでてきます。最近ではこのPubMedの論文を日本語でも検索できるサイトまで登場し、さらにアクセスしやすくなっているため、論文を調べて読む練習をしたい方には最適な環境が整っていると言えます。ただやはり、日本語に直したものではニュアンスなどが少し変わってきてしまうので英語の原文のものを読めるようになることがベターです。
英語が苦手だから読めないという訳ではない?!
原著論文は前述したように英語になっています。英語が苦手だと読むのは無理なのではないかと言う意見があるでしょう。何本か自分で検索してみるとわかりますが、論文に使われている英語は中学英語レベルでも対応可能なシンプルな文の組み合わせから成り立っています。研究者の中にも実は英語が苦手という方は少なくないですが、それでも読んだり書いたりできるのは、英語自体はシンプルであることに起因しています。もちろん専門用語は難しいですが、これは辞書で調べればわかることなので、まさに中学英語を勉強したあの頃を思い出し、辞書片手に読むことを繰り返していけば次第に辞書なしでも読めるようになってきます。
具体的な読み方は?
学術雑誌によって多少は異なるものの、だいたいの原著論文の構成としては、要約(abstractかsummary)、序論(introduction)、実験の手順や材料(materials and methods)、結果(results)、結論(conclusion)、議論(discussion)の順になっています。
このうち要約に関してはどの学術雑誌でも無料で誰でも読めるようになっています。まずは、この要約を理解できるレベルになることをおすすめします。この要約部分はできるだけ短い方が良いとされているため、大概は100~300単語数(文字数でいうと500~1000文字前後)なので、業務の空き時間にでもさらっと読むことが可能です。どの論文でも同じような表現を使って書かれているため、慣れてくると1日にいくつも読めるようになります。もちろん、もっとしっかりとデータを見てみたいという方は、研究者の友人がいれば頼んでみたり、自分でお金を払って買ったりなどでさらに理解を深めることも可能です。
こういった練習を続けていけば、きっと1年後には薬剤師として見える景色が変わってくると思います。日々少しずつでもいいので、論文に触れてみてください。
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