薬局に必ずある精製水や蒸留水。これらは名前だけでなく性質が異なります。また、患者さんが薬を飲むときの水も、水道水、ミネラルウォーターなど様々な種類があります。これらの水の違いを、薬剤師の皆さんはきちんと説明できるでしょうか?今回は水を切り口にまとめていきたいと思います。

水の違いは効果の違い?

 水の分類については、不純物がどのくらい含まれているかが重要になってきます。まず一番身近な水道水から順を追ってみてみましょう。

(1)水道水(常水)

 水道水は水道法に規定されて水質基準を満たす飲用可能な水のことで、井戸水とともに通称常水と呼ばれています。河川水などをろ過した後、殺菌によって汚濁成分や大腸菌を除いた水です。
 殺菌成分でいわゆるカルキ臭さが残ってしまっていますが、このおかげで長く置いても腐りにくいという利点もあります。煮沸するとこの殺菌成分が飛ぶため、臭いは抜けますが、裏を返すと長持ちしなくなり、長期保存には注意が必要です。

(2)精製水

 精製水は逆浸透膜(RO膜)などで水道水を処理し、有機物やイオン成分の大半を除去した水になります。これを滅菌すると滅菌精製水になります。コンタクトレンズの洗浄に使われることが多いです。
 ただ、微量の有機物などが残っているので菌が増殖しやすいため、開封後は早めに使うことがベストです。

(3)純水(イオン交換水)

 さらに、微量のイオン成分を除去するために、精製水をイオン交換樹脂で処理した水はイオン交換水と呼ばれています。これを別名純水とも呼びます。
 スーパーなどでは最近自分で容器に入れる飲料用水の装置がありますが、この純水のグレードに近いものです。

(4)超純水

 純水に、残存した有機物を紫外線によって分解殺菌処理し、さらに微量イオンをイオン交換樹脂によって除去処理を施し、最後に限外ろ過膜処理で微粒子を除去すると、超純水と呼ばれる一番キレイな水が出来上がります。
 ただし、この水はイオンなどのいわゆるミネラル分を何も含んでいないため、飲むとかなり不味いです。

(5)蒸留水

 水道水を蒸発させたときに出る水蒸気を再度冷やしたものは、蒸留水と呼ばれます。水蒸気を再び冷やす際に空気中の不純物を拾ってしまうので、グレードとしては超純水よりもやや劣ります。

(6)注射用水

 蒸留水・超純水に近いグレードの水のうち、発熱性物質試験に合格したものは注射用水として使用されます。

 つまり、不純物の多い順としては、水道水>精製水>蒸留水>超純水となります。

ミネラルウォーターって何?!

 最後にミネラルウォーターについて。国によって基準は様々ですが、日本での定義を紹介します。

(1)ナチュラルウォーター・ミネラルウォーター

 特定水源から採取された地下水は、ナチュラルウォーターと呼ばれています。さらに、地下で滞留・移動している間に地層中の無機塩類が溶解したものは、ナチュラルミネラルウォーターです。
 これらはろ過・沈殿及び加熱殺菌以外の処理は行ってはいけない決まりとなっています。これらの処理以外に、ミネラル分の微調整やばっ気などの処理を加えるとミネラルウォーターに名前が変わります。

(2)ボトルドウォーター

 ナチュラルミネラルウォーターにさらに処理を加えて、本来の成分を大きく変化させたもの、または、地下水以外の水(前述した純水や蒸留水や水道水など)に、食品衛生法に基づく殺菌を施したものは、ボトルドウォーターという名前になります。

 余談ですが、日本ではボトルに詰めた水はすべて殺菌処理しているのに対し、EU加盟国の統一基準では殺菌処理が禁止されています。これは身体に良い影響を与える自然の菌が入った水でないと、意味がないという考えに基づいています。ですので、旅行先などでボトルの水で薬を飲むと、少し吸収などが変わったりするかもしれませんので注意が必要です。

 さて、蛇口をひねって出てくる水道水にも、ボトルに入って売られている水にも、実はきちんとした違いがあることがわかります。ぜひ患者さんにも説明できるようになってくださいね。