一般的に薬剤師が活躍できる公務員というと、国公立病院の薬剤師を主として、保健所職員、厚生労働省の薬系技官、麻薬取締官、自衛隊病院の薬剤師などがパッと思い浮かぶことでしょう。実はその他にも薬剤師の知識が大きく役に立ち、かつ幅広い年齢の方が転職可能な「警視庁特別捜査官」という職種があります。今回は筆者も試験を受けたことがある警視庁特別捜査官を紹介したいと思います。

そもそも特別捜査官って何?

特別捜査官は元々アメリカの制度を参考に作られたものです。警視庁において特定の分野の犯罪捜査に必要な専門的な知識及び能力を有する者として採用された警察官のことを指します。種類としては財務捜査官、科学捜査官(電気電子と化学)、サイバー犯罪捜査官、国際犯罪捜査官になります。

1994年に任用規定が改正され、1995年より採用が開始されました。その後採用人数は増えてきていましたが、この背景にはあの有名な「地下鉄サリン事件」があります。元来、警察官というのは文系の方が多いので、こういった科学犯罪に弱いという傾向がありました。首都を守る警視庁がこの事件に強い危機感を感じた結果、専門知識を持つ警察官の採用が促進されていきました。警察官の中から採用される場合以外にも、民間の専門家や有資格者からも多く採用されており、国際犯罪捜査官以外はこちらがメインルートになります。

専門家としての採用後のメリットは?

専門家の採用ということで、採用後はいきなり幹部警察官になります。近年、警察を描いた国民的ドラマが数多くあるためご存知の方も多いと思いますが、国家公務員試験(キャリア、準キャリア)での採用を除き、大半の警察官は地方公務員として自治体ごとに採用試験を受け、試験合格後に警察学校を卒業し、まずは巡査にて交番勤務から開始します。その後、長い年月をかけて昇進試験を受けながら、巡査部長、警部補、警部へと昇進していきます。現実問題、多くの方が警部で退官されるそうで、昇進するのも結構大変です。現にドラマでも警部というとベテラン警察官で現場のリーダーという姿がよく描かれるので理解しやすいと思います。

ところが、特別捜査官として採用される場合には、いきなり警部補(サイバー捜査官の場合には巡査部長の場合もあり)からのスタートになります。つまりキャリアや準キャリア相当として採用されるのです。さらに専門家としての深い経験があれば、さらに上の警部や警視などでの任用もあり得るのです。このことからも警視庁が専門的知識を有する者を強く欲していることがわかるかと思います。

薬剤師が活躍できる特別捜査官は?

薬剤師が受けることができるのは科学捜査官(化学)になります。これは主に違法薬物事件の捜査の中で活躍することが期待されています。

中途採用かつ即戦力採用になりますので、それなりの経験や知識が必要で、狭き門であることは変わりませんが、受験可能年齢が昭和36年~平成6年生まれ(令和2年度試験の場合)までと幅が広いのでチャンスがある方も多いかと思います。採用試験を受ける際の受験資格としては、薬剤師の場合、以下3つのうちいずれかに当てはまると思います。

  • 化学又は薬学に関する修士以上の学位を有し、民間等における5年以上の有用な職歴を有する人
  • 化学又は薬学に関する研究員として民間等における5年以上の有用な職歴を有する人
  • 薬学に関する6年制の学部又は学科を卒業し、民間等における5年以上の有用な職歴を有する人(薬剤師国家試験合格者に限る)

よく勘違いされるのですが、あくまで捜査員なので、科学捜査研究所の研究員とは別職種である点です。もちろん業務の中には、捜査中の分析業務などもありますが、メインは他の一般的な捜査員とともに犯罪を撲滅すべく捜査活動に従事するというのが使命になります。

薬剤師としての知識や経験を活かし、国を守る重大な仕事をしたいと思っている方はぜひ挑戦してみてください。

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