薬剤師を含めた医療従事者にとって、2年に1度訪れる調剤報酬改定のタイミングはいつも気が気でない時期になります。次の改定が来年度に迫っている中、今後何をすべきかということを一緒に考えていきたいと思います。
前回の改定とその後の状況とは?
そもそも診療報酬には医薬品に関わる「薬価部分」と、医療従事者の人件費に関わる「本体部分」とに分けられることは薬剤師であればご存じのことと思います。前回の2024年度の改定においては、本体部分に関しては0.88%引き上げられたものの、薬価部分に関しては1.00%引き下げられたため、全体としては、0.12%の引き下げという結果になりました。
こうした背景と物価高もあって、医療機関によってはかなり厳しい経営を強いられているという状況になってきました。大学病院の大部分が赤字という事態も聞かれるようになりました。
診療報酬を下げることで、ダイレクトに医療費を下げることが可能なので、一見下げることが国民にとっては良いように感じますが、そもそも診療報酬を下げすぎた結果、待遇悪化により、医療従事者になる人が減ったり、はたまた病院が潰れてしまったりしては、結果として国民にとっても負の影響しかありません。
毎回このバランスを意識した改定に政府も骨を折っているのです。この改定には厚生労働省だけでなく、国の財布役を担う財務省の意見も影響しますが、財務省もバランスを意識しており、「利益率が高い診療所よりも病院を優先するといったメリハリをつける」などの考えを表明してきました。
今回の診療報酬改定はどうなりそうか?
前述したように、全体として診療報酬を下げ続ければ医療費が下がって良いという風潮がどちらかというと広がっていた中、高市政権が誕生して風向きが変わりました。高市総理は、診療報酬改定に関しては、「賃上げ、物価高を適切に反映させる」というコメントを発してきました。このような政府の考えによって、最近報道発表されたニュースによると、今回の診療報酬改定としては、薬価部分に関しては、小さく下がる可能性があるものの、本体部分に関しては、前回改定以上の引き上げが見込まれていて、診療報酬全体としては引き上げられることがほぼ確実となりました。
そのことにより、医療機関の活性化が期待できます。特に人件費が高騰しているという背景もあり、そこを補えるという点では有益と感じます。
薬剤師として今後何をすべきか?
確かに診療報酬自体は上がるということが見込まれている半面、薬価に関しては少しとは言え、さらに下げられるという点は薬剤師や薬局にとっては影響必須でしょう。さらに薬価が下がることで、今でも深刻となりつつある医薬品の供給問題がさらに悪化する可能性も否定できません。後発医薬品の供給がかなり悪化しているという背景から、今後もしかしたら、先発医薬品の薬価がかなり下がり、結果として後発医薬品と同じ薬価、またはそれよりも低い薬価になる可能性もあります。後発医薬品だけに留まらず、先発医薬品の種類もどんどん減ってくることもありえるでしょう。
今後さらに医薬品に関して、薬剤師側から処方医に今ある医薬品の在庫の中から診断された症状に対して効果があるものを提案する機会が増えてくると予想されます。効能効果以上に、副作用情報や血中濃度推移などの情報に精通しておく必要があります。同じ効能効果の医薬品でも、特徴としては違ったものということが少なくないので、ほかに処方される併用薬との兼ね合いも含めて、在庫がある医薬品からどれが一番適切なのか、薬剤師から提案するという事例が今後増えてくるとしたら、今までの医薬品の添付文書や教科書だけでなく、時には論文レベルにまで遡って調べるということも必要になってくるでしょう。
特に最近になって新たに誕生した「専門医療機関連携薬局」には当然のようにそういった高度な機能が求められると思います。裏を返せば、薬価低下時代においては、やはり高度なことが普通に行える薬剤師が生き残っていけるのではないでしょうか。
「備えあれば憂いなし」、ぜひ日ごろから備えをしておいてください。
※記事作成時点の情報です
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