学校薬剤師という仕事をご存じでしょうか。薬剤師の方々でも、どのような仕事か説明できないという方も少なくありません。今回は学校薬剤師について復習してみましょう。

どのように誕生したのか?

実は、学校薬剤師制度は日本独自の制度です。この制度が誕生した背景には、1930年に北海道小樽市の小学校にて起こった悲しい事故があります。
風邪で体調を崩していた女子児童に解熱鎮痛消炎薬の「アスピリン」を服用させようとした際、誤って毒薬の「塩化第二水銀」を服用させてしまい女子児童が亡くなったのです。
この事故後、さまざまな薬を保管している学校には薬の専門家をきちんと置くべきであるという声が高まり、1931年小樽市に学校薬剤師が配置されました。
その後、全国の自治体も同様の措置を取り始め、1958年には「学校保健法」が制定されました。この法令で、「大学以外の学校に学校薬剤師または学校歯科医を置くこと」が正式に明文化されました。

どのような業務を担っているのか?

学校薬剤師が配置された当初は、薬品類の使用や保管など学校における薬事衛生業務に従事していました。
その後学校保健法が制定された際に、換気、採光、照明などの学校環境衛生の維持管理に関する指導・助言者としての職務が学校薬剤師の義務として規定されました。
2009年、「学校保健安全法」が新たに施行され、「学校保健安全法施行規則」が定められました。前述した学校環境衛生に加え健康相談や保健指導にも関与することが学校薬剤師に求められるようになりました。
近年では、社会問題になっている薬物乱用やドーピングなどに関する薬教育を行うことも期待されています。

学校薬剤師になるためには

学校薬剤師になるには、薬剤師免許のほかに何か資格が必要なのかと思われがちですが、実は薬剤師免許だけで勤務は可能です。ただ、求人が出ることが少ないので、就職のハードルが高いといえます。
また、多くの学校薬剤師は普段薬局などで働きながら、兼務という形で従事しています。
そのため、まずは他の仕事で薬剤師として働き始めることがベストでしょう。
学校薬剤師に欠員が出た場合、教育委員会から薬剤師会に連絡が入ります。その後薬剤師会から推薦された薬剤師が、教育委員会から学校薬剤師として任命を受けるという場合が多いです。
そのため、学校薬剤師を目指す場合、地域の薬剤師会に入会した上で、学校薬剤師の募集がないかを薬剤師会担当者に問い合わせるとよいでしょう。また、教育委員会に直接問い合わせるという方法もあります。ただし、これらの方法ではよほど信用がないと難しいという側面もあります。
学校薬剤師になる一番現実的な方法としては、すでに学校薬剤師経験者が在籍中の薬局などに就職することです。学校薬剤師経験者に推薦やアドバイスをいただけるからです。また、その方が現役の学校薬剤師であれば、その方から引き継ぐ形でスムーズに学校薬剤師になれる可能性があります。

どのような人が向いているのか?

学校薬剤師という特殊な業務内容上、次に挙げるような経験や知識があると業務に役立つでしょう。

(1)分析化学が得意な方
(2)食品衛生が得意な方
(3)教育に熱意がある方
(4)違法薬物・危険ドラッグ・ドーピングに精通している方
(5)マネジメント経験がある方

各理由も列挙すると、
(1)学校全体の環境衛生に関して幅広い項目の検査を行うため
(2)給食などによる食中毒を防ぐ能力が求められるため
(3)理科の知識が乏しい生徒たちに薬教育を行う際に、教え方の工夫が必要になるため
(4)同じく薬教育の中で特に取り上げるべき項目のため
(5)幅広い業務に関与しつつ、アドバイザーとしての側面もあるため

つまり薬剤師になったばかりの方ではなく、ある程度薬剤師経験を積んできた方が求められるということです。
学校薬剤師に興味がある方は、まずは薬剤師としての基本的な業務をきちんと身につけた上、必要な知識を積極的に深め挑戦してみてください。

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