医療機関の一つである薬局は病院同様、常に患者さんの命と関係している場所でもあります。
言い換えれば常にリスクを伴う場所です。
医師や看護師は常にリスクを意識して、リスクマネジメントを積極的に行っています。
今後の医療の高度化による薬剤師の職能拡大の動きの中で、また、かかりつけ薬局推進の中、薬剤師自身もこれまで以上にリスクマネジメント意識を強く持つ必要があります。
今回はこれをまとめてみたいと思います。

医療における意識の変遷は!?

本来、「リスクマネジメント」という言葉は、これまで、事故防止・安全管理の取り組みを表す意味で使われてきました。
しかし、振り返ってみると、事故の発生防止だけではなく、事故の発生時や発生後の対応としての紛争・訴訟なども含まれてきたことから、単純に事故防止・安全管理だけにとどまらない概念として普及してきました。

最近では、安全管理を重視することが事故の減少につながるという発想に変わってきて、「セーフティーマネジメント」と表現されることも出てきました。
その中で特に大事とされているのは、医療が人の手によって支えられている限り事故は起こりうるという考えを常にもって、事故発生時に当事者個人をとがめるのではなく、組織全体を見直すことで安全管理の方法を考えようとする意識だと考えられています。

医薬品の採用時のリスクマネジメントとは!?

国の政策のジェネリック医薬品推進の動きの中で、医薬品採用時に気をつける事柄も以前とは少し変わってきたと考えられます。
もちろんこれまでの医薬品採用時の注意事項を生かしながらの対策が大事です。
まずは調剤ミスを防ぐために、既採用医薬品と名称や外観・包装が類似している医薬品を可能な限り避けることが重要です。

しかしながら、類似した医薬品を採用しなければいけない場合もあります。そのような時には薬局スタッフ全員での徹底した情報共有が重要です。

また、ジェネリック医薬品の中には、先発品と比べて生物学的同等性は同じだと保証されていても、添加物などの違いから溶解度が違うものもあります。
その際には、オレンジブック(品質再評価結果)が有用です。
加えて、継続して使用するために、製薬企業側できちんと安定供給できているものなのかというのも始めにきちんと確認しておくべきです。

在宅医療で必要なリスクマネジメントとは!?

近年盛んになってきている在宅医療においては、日頃の意識とは別の意識を持つべきだと考えられます。
普段の薬剤師業務の思考回路としては、まず先に薬の薬効や副作用などを指導・伝達して、患者さんに伝えた内容を薬歴に記入するというものです。
これはもちろん大切なことですが、薬の副作用や注意点を患者さんに伝えることにとらわれすぎて、一方的・画一的な説明になってしまい、患者さん自体の状態を見逃す危険性があります。

在宅医療においては、まず患者さんの暮らしが先にくる思考に切り替えなくてはいけません。
患者さんの食事・排泄・睡眠・運動・認知などの状態を聞き取った上で、薬の薬効や副作用が影響してないかと薬と結びつけてみるという考え方になります。
そうすることで、薬以外の様々な課題が見えてきて、特に多職種と連携を図り課題に取り組むといったチーム医療の考えも自然と浮かぶようになります。

他にもまだまだ薬剤師としてやるべきリスクマネジメントは多々あるかと思います。
自分でも整理してみてください。