診療報酬改定の時期になるといつも話題になるのがリフィル処方箋についてです。多くの先進国で既に導入されていて、我が国でもこれまで議論自体はされてきているものの、未だに導入されていません。ただ今年に入って、国の経済財政諮問会議において、薬剤師の対物業務重視から対人業務重視へと転換する一環で、かかりつけ薬剤師・薬局機能の取り組みの先にはリフィル処方の推進も盛り込まれており 、少しずつではありますが現実味を帯びてきています。導入されれば薬剤師や薬局が果たす役割は当然のことながら拡大してきます。その時にすぐに活動できるよう、今回は、そもそもリフィル処方箋とは何か、そのメリット・デメリットは何か、確認してみましょう。
リフィル処方箋とはそもそもどんなものか??
ある患者さんが処方箋を持たずに来局され、「いつも飲んでいる薬欲しいのだけど、今日病院が混んでいてね。同じ薬が欲しいだけだから薬局の方で出してもらえるかな?」とおっしゃったときに、「申し訳ございません、規則で必ず医師の診察を受け、処方箋をこちらにお持ちいただかないとお薬はご用意できないんです」と答える。それに対して、さらに患者さんが、「面倒くさいけど、仕方ないから病院で並んでくるよ。おそらく3時間後にまたこちらに来ます…」
薬剤師の現場にいると、こういったやりとりに出くわすと思います。法律で決まっていることなので仕方がないにしろ、歯がゆく感じてしまう薬剤師も少なくないと思います。これを解決する手段こそが、リフィル処方箋です。
リフィル処方箋の定義は、定められた期間内に反復使用できる処方箋です。リフィルとは補給やおかわりという意味を持つ英単語です。このことからもわかるように、リフィル処方箋は分割調剤とは異なります。分割調剤は医師の指示に従って、投薬上の問題を一時的に解決する調剤です。一方でリフィル処方箋の実施は、実施医師と薬剤師によるチーム医療活動の一環だと考えられます。
リフィル処方箋は、アメリカ、カナダ、イギリス、フランスなど多くの先進国では既に導入されています。例えばアメリカでは、患者さんは薬局にリフィル処方箋を預け、必要なときに薬局に調剤を依頼するという流れになっています。アメリカで薬剤師の地位が高いことには、薬剤師が医療活動の中での経過観察ケアを担っていることが1つの要因であるとも考えられます。
リフィル処方箋のメリット・デメリットとは?!
リフィル処方箋のメリットとしては、医療費の削減につながる、医師が高度な治療に専念できる、患者さんも手間が減る、残薬確認がこれまで以上に定期的に行える、などです。デメリットとしては、漫然と処方が継続されてしまう恐れがある、これまで以上に患者さんによる薬の転売の危険性が増す、薬剤師の技量によって再度受診するタイミングが変わってくる、などが挙げられます。
リフィル処方箋の良さを活かすためには、薬剤師の技量が大きく関わるところが大きいのです。そのため、薬局によってはリフィル処方箋のメリットを活かせないというところも出てくるかもしれません。まずは薬歴や服薬指導、また在宅業務やかかりつけ薬剤師をきちんと行うことが基本で、それをしっかりとできてからリフィル処方箋導入をすべきだという意見もあります。現に、いくつかの薬局で薬歴未記載や違法調剤などが問題となっています。確かにこういったことがたくさん出てきてしまうと、「このような状態では薬局にリフィル処方箋の扱いを任せていいのか?」と思われても仕方がありません。つまり、リフィル処方箋導入の可能性を左右するのは我々薬剤師一人ひとりの責任感・倫理観の推進、加えて、知識・技能の向上であると考えられます。
ぜひこれまで以上に、薬剤師は一生向上すべき職種であることを意識してみください。