一人ひとりに違ったアプローチを取ることで体質改善まで期待できることから、近年注目されている漢方医学。その中で基本とされているのが気血水です。よく知っているようで、実は以外と知らないことだらけの漢方医学の基礎についてみてみましょう。

「気」には実は色々とある?

気血水は漢方医学における基本的な人体の構成要素になります。その中でも「気」は生命活動を営むための活力・エネルギーで血と水を全身へ巡らせる働きをするため、3つの中でも特に大事になります。気持ち、気分、気が合う、気がのらないなど現代でも使われる言葉にも影響を与えている概念です。目には見えませんし数値化もされないですが、昔からこの気が体調に影響すると考えて、漢方医学では重要視してきました。

気についてはさらに細かい分け方として、(1)先天の気と後天の気、(2)宗気・営気・衛気・元気の2つの区分があります。

まず(1)の先天の気と後天の気についてですが、先天の気はこの世に生まれた段階で両親から受け継いだ気、後天の気は生まれた後に食事などから得られる気になります。現代科学風にいうと、前者は遺伝的要因、後者は環境的要因に相当します。こう考えると、漢方医学は実は科学的なのではないかともいえます。

続いて(2)の宗気・営気・衛気・元気については、気が生まれる場所や働きに焦点をあてた分類になります。宗気は食事や大気を起源として、呼吸や発声を司ります。営気は食事を起源として、営気と水によって血を作り出します。衛気は食事や自身の腎中の陽気を起源として、体表を保護します。外邪の侵入を防ぐことに加えて、皮膚や体毛にツヤとハリを与えたり、発汗を調整することで体温維持したりという働きを司ります。元気は後天の気が先天の気に影響することにより作られ、生命活動の源となるので4つの中では一番大事なものになります。今でも元気という言葉はよく使われますが、生命活動の源である元気という考えが含まれているような気もしますね。

気が不足することを気虚の状態では、疲れやすくなったり、気が足りていても滞っている気滞の状態では、憂鬱になったりします。また、気が本来とは逆に流れてしまうことが問題となることもあります。これを気逆と呼び、冷えのぼせなどが起こります。

「血」は広い概念?

血は西洋医学の血液と完全に同等という訳ではなく、もう少し広い概念になり、血液自体とその中に含まれている栄養素も含みます。別の観点で考えると全身に栄養を供給するものと精神活動の基本となるものという意味合いにもなります。

血が不足する状態を血虚と呼び、貧血や皮膚乾燥などの症状につながります。血が足りていても滞っている状態が瘀血で、手足の冷えやのぼせなどが見られます。気と血はもちろん相互連関していて、気が血を作り巡らせるためのエネルギーとなる一方、血はその栄養により気を生じさせ、気を自身にのせて全身を巡ります。

「水」はイメージ通り?

水は別名津液とも呼ばれます。体内の水分のうち、血液以外のものをさします。水は血と一番密接に連関していて、水と血は互い転化しています。水が不足すると陰虚になり、肌や口内が乾燥したり、常に熱さを感じたりします。水が偏在した状態は水毒と言い、浮腫、頭痛、鼻水などの症状が出てきます。

ここで1つ覚えておきたいことは、海に囲まれ、台風や梅雨で多湿になりがちな土地に住んでいる我々日本人は、水毒になりやすい傾向にあることです。また、水は気とももちろん繋がっていて、気が水を生じさせて循環させる一方、水は気を自身にのせて巡ります。

各々に効果的な漢方薬とは?

漢方薬を気血水という観点から分類する方法があり、各々、A.気分剤、B.血分剤、C.水分剤と呼びます。

A.気分剤としては先天の気に作用するものとして、八味地黄丸(ハチミジオウガン)、牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)などがあります。続いて、後天の気に作用して流れを改善するものとして、小柴胡湯(ショウサイコトウ)や葛根湯(カッコントウ)などがあります。また、後天の気の発生量自体を増やすものとして、人参湯(ニンジントウ)や六君子湯(リックンシトウ)などが、逆に過剰な発生量を抑制するものとして、黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)や荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)などが各々あります。

B.血分剤としては、血を補うものとして四物湯(シモツトウ)などが、瘀血を改善するものとして桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)や桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)などが各々あります。

漢方医学やその基になった中医学の理論は本来もっと複雑なため、気血水だけでは症状全般を完全にカバーすることはできません。また、気血水に関しても厳密に説明するともっと深いものになりますが、今回のことは基本的な目安としては有用です。ぜひご自身でも勉強してみてください。

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