日本には世界に誇る国民皆保険制度がありますが、公費負担も充実していると言われています。今回は公費負担に関して復習してみましょう。

法別番号前半には有名なものが並ぶ

国が関わる公費負担には法別番号(一番初めが10)がつけられています。前半の番号(10~30)には比較的有名なものが並びます。ラインナップは以下です。

10結核医療
11結核入院医療
12生活保護の医療扶助
13戦傷病者療養給付
14戦傷病者更正医療
15自立支援医療(更正医療)
16自立支援医療(育成医療)
17療育医療
18原爆認定医療
19原爆一般医療
20措置入院
21自立支援医療(精神通院医療)
22麻薬入院措置
23養育医療
24自立支援医療(療養介護医療)
25中国残留邦人
28一類・二類・指定感染症
29新感染症
30心神喪失

生活保護の医療扶助(12)や、自立支援医療に関するもの(15・16・21・24)は見かけることも多いのではないでしょうか?一方、優れた抗生物質の登場により患者数が大幅に減っている結核に関する医療(10・11)や、太平洋戦争終結から月日が経過していることから、戦傷病に関するもの(13・14)、原爆に関する医療(18・19)は見かけることが少ないでしょう。

コロナ禍で見かけることが多くなったものとして挙げられるのは、新型コロナウイルス感染症関連が該当する一類・二類・指定感染症(28)です。新型コロナウイルス感染症という名前から、新感染症(29)が該当すると思う方もいるのではないでしょうか。

「新感染症」の定義は、「人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。」とされています。

新型コロナウイルス感染症は「新型インフルエンザ等感染症」に分類され、2類感染症に近いため、一類・二類・指定感染症(28)が適応されます。なお、新型コロナウイルス感染症は、現在5類感染症レベルへの引き下げが議論されており、今後公費負担の様式が変化することが予想されます。

法別番号の後半にはあまり見かけないものが並ぶ

続いて後半の法別番号(38~79)を順番に並べた以下の表を見てみましょう。

38肝炎治療特別促進事業及び肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業
51特定疾患(一部疾患・スモン等)
52小児慢性特定疾患
53児童福祉施設措置医療
54難病医療
62定期検査費及び母子感染症防止医療
66石綿健康被害救済制度
79肢体不自由児医療及び障害児入所医療

石綿健康被害救済制度(66)は、アスベスト問題が世間を賑わした際に見かけた方もいると思いますが、前半の法別番号と比較してあまり見かけないものが多い印象です。

地方自治体にも公費負担制度が存在する

地方自治体にも公費負担制度があります。具体的には、乳幼児医療費助成制度、ひとり親家族医療費助成制度、障害者医療費助成制度、こども医療費助成制度です。これらは、国の制度とは異なり、地方自治体によって内容が異なる点が特徴として挙げられます。
なお、転職により勤務先の属する自治体が変わる場合は注意が必要です。

公費負担には適用の優先順位がある

公費負担にはさまざまなものがあるため、優先順位が決まっています。
法別番号を優先順に並べると、13>14>18>30>10>21>15>16>24>17>79>19>23>51>38>52>53>66>25>12、そして一番下位に地方自治体の公費です。
公費負担に対して難しい印象を抱く方が多い理由として、計算がかなり複雑になってしまうことが挙げられます。例えば、全負担のうち7割が健康保険、2割が第一公費(優先順位が上位の公費)、1割が第二公費(優先順位が下位の公費)となる場合、慣れていないとなかなか計算が難しくなります。さらに、生活保護のように全額公費負担のものも別途把握しなければなりません。
ぜひ、ご自身でも勉強し理解を深めてみてください。

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