個人レベルでいろいろな情報を管理できるようになってきた昨今、医療業界においてもPHRという概念が話題となっています。薬剤師としてもきちんと把握しておきたいところです。今回はPHRについて見ていきましょう。

PHRとはどんなもの?

PHRとは「Personal Health Record」の略で、日本語では「個人健康記録」と呼ばれています。個人の健康(医療)データを1ヵ所に集約したものです。保存状態さえきちんとすれば、これまでの紙ベースの情報よりも長期保存に向いているため、「生涯にわたる個人の健康・医療情報」とも呼ばれています。ここには、個人的に計測した日々のライフログや介護に関する情報も含まれています。つまり、時計に各々の健康データを持ち歩きいつでも確認できるという時代が来ているということになります。

どういった仕組みで成立しているのか?

これまでは医療機関ごとなど、同様の人物の情報であってもバラバラに管理されていました。そのことで、緊急時であっても迅速な対処ができないという事例も結構ありました。

そこで、これまでバラバラに管理されていた、予防や早期発見のために受ける健康診断や予防接種などの情報、これまでの疾患歴や服薬状況などをマイナポータルなどの国のITツールによって紐づけすることに加えて、各個人が身に着けているスマートウォッチと対応アプリに保存されている日々の運動履歴や食生活情報などもまとめます。

そして、これらの情報を1ヵ所のサーバーなどにまとめて置いておき、そこからダウンロードできるなどといった仕組みの構築によって、PHRは、まさにその個人の過去や現在の情報がすべて個人レベルでいつでも閲覧できるようになるわけです。

どういったことに活かせるのか?

PHRが正式に全国規模で活用されるようになればさまざまなメリットがあります。例えば、医療機関にかかる際に、PHRだけを調べることで、これまでのように手間を取ってしまう初回アンケートや、無駄な検査などを減らせます。さらに、PHRが日常になれば、ほかのインフラ設備の構築も自然とやらなければならなくなり、結果としてデジタル化社会推進につながります。

また、そのPHR所持者自身による同意を得る必要はもちろんありますが、これまで以上に質の良い医療ビッグデータを、新規の医療技術・新薬創出などの研究開発に活かすことができるというメリットもあります。ただし、個人レベルで管理することにより、情報流出の危険性が上がってしまう、バラバラなツールによって管理されているデータの統合が難しい、PHRデータの質が使いこなす個人のITリテラシーにかなり依存するなどのデメリットももちろん存在するため、まずは情報セキュリティ体制の構築をすることが必須となります。

こんな場面にも貢献できる?

世界規模で仕事をすることが多い昨今において、日本以外の国において病気になることももちろんあります。これまでは、例えば日本でいつもかかっていた病院から診療情報を印刷してもらい、これを海外に行く際に持参するといった状況でしたが、PHRの確立によって、何らかの電子機器とインターネット環境があればどこでもいつでも情報を取得できるということが可能になります。

さらに、データが日本語だとしても、翻訳アプリにかけることで現地での言語にも変換できます。これによってグローバルな仕事についても安心して従事することができるでしょう。

また、近年特に問題となっている災害の際にも活用できます。災害時には、紙のデータは消失することが多いですが、PHRならそのリスクはありません。たとえ自分のスマホなどが壊れた場合であっても、ほかの電子機器で確認することが可能なので、よりよい災害時医療を提供できる可能性が上がります。

こういった特徴から、厚生労働省や総務省などの国はもちろん、一般社団法人PHR普及推進協議会などの専門組織もできて、これまで以上に応用化・実現化・推進化などに向かっています。薬局業界もこの流れに関わっていくことは必須ですので、ぜひ薬剤師としても把握しておいてください。

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