10月20日は「疼(10)痛(2)ゼロ(0)の日」です。
ヒトにとって痛みは、身体の異変を知らせる大事なセンサー。
体温や呼吸などと並び、我々が生きていることを示すバイタルサインの1つです。
しかし、がんなどの疾患に伴う痛みは苦しくつらいもので、ひどい痛みはショックを起こすこともあります。
薬局にも様々な痛みを訴える方が来ますよね。
「疼痛ゼロの日」を迎えるにあたり意外と知らない疼痛関連情報や、鎮痛剤の実践的な使い分けをご紹介します。
障害受容性疼痛と神経障害性疼痛の違いって?!
痛みには大きく分けて「障害受容性疼痛(以下、障害性痛)」と「神経障害性疼痛(神経因性疼痛、以下、神経性痛)」の2つが存在しています。
「障害性痛」のほうは、怪我や骨折などといった炎症や刺激による痛みで、危険を察知するためのセンサーの役割を果たしています。
「神経性痛」のほうは、神経の切断などが引き金となる痛みのことです。
こちらは本来の組織障害の警告という意味は失われていて、苦痛としての痛み自体が障害となりQOLが顕著に低下してしまいます。
どちらかというと「神経性痛」のほうが厄介な痛みが多く、具体的には、ヘルペスウイルスによる帯状疱疹後の神経痛や坐骨神経痛があげられます。
日常あまり経験しないようなヒリヒリやチクチクとした痛みが特徴です。
本当は存在しないはずの痛み…「幻肢痛」とは?
神経性痛の中で最も扱いが難しい痛みの1つに「幻肢痛」があります。
これは交通事故などで腕や足を切断した人が、なぜか存在しない腕や足が痛いと感じる痛みのことです。
当然腕や足は存在しないので治療のしようがなく、とても困難な痛みです。
幻肢痛の治療法として有効なのが、鏡を使ったミラーセラピーです。
失っていない方の腕や足を鏡に映し、あたかも両腕や両足があるように脳に思わせて、その状態で残っている方の腕や足をマッサージしたりして動かすことで、痛みが緩和することがあります。
原因不明な痛みも?!
痛みの原因が不明なものもあり、「慢性痛」がそれにあたります。
以前は心因性疼痛と呼ばれていました。
過去の外傷経験などがある場合に、心理的ストレスや筋肉の過緊張が起こった拍子に引き起こされる痛みのことです。
原因がまだはっきりとわかっていませんが、神経伝達物質の異常が発端となり、内分泌系や免疫系も関与することで痛みが増強することがわかっています。
最近の社会の複雑化の中で、この慢性痛と、前述した障害性痛や神経性痛とが合併している症例もあり、痛み1つを治すのも困難な時代になってきています。
鎮痛剤の使い分けを簡単におさらい
では、これら痛みにはどのような薬剤が有効でしょうか。
痛み止めと聞いてまず思い浮かぶのはアスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェンですが、使い分けには注意が必要です。
※ご使用にあたっては、各製品の最新の添付文書をご確認ください。
アセチルサリチル酸(アスピリンなど)
軽度~中等度の痛みには有効です。
ただし激しい内臓痛には無効となります。
イブプロフェン(ブルフェンなど)
アスピリンよりも強い鎮痛作用を示します。
ただ、胃腸障害が比較的出やすいという特徴があり、小児の第二選択薬です。
ちなみに小児の第一選択はアセトアミノフェンで、こちらは胃を刺激せず、血液凝固などへの影響が少ないです。
一方、抗炎症作用がないので炎症による痛みにはあまり効果がありません。
ロキソプロフェン(ロキソニンなど)
イブプロフェンより効果が高く、かつ胃への不快感を与えにくいのが、ロキソプロフェンです。
効果発現までが短いですが、小児には使いません。
ただ、入手しやすさ・効き目・副作用などのバランスを考慮すると、成人にとっては選びやすいといえます。
セレコキシブ(セレコックスなど)
COX2のみを抑えるため胃への作用がかなり少ないのがセレコキシブで、胃腸が弱い人に使いやすいです。
加えて、1日2回でよく、ロキソニンよりも効果発現が少しだけ早いという特徴もあります。
その他、薬を飲むのが面倒な人には、1日1回で済む血中半減期が長いメロキシカム(モービックなど)もあります。そして厄介な神経痛にはプレガバリン(リリカ)というものも用意されています。
このように鎮痛剤は奥深い薬だということがわかりますね。
ぜひ自分でも調べてみてください。