1月20日は血栓予防の日。納豆に含まれるナットウキナーゼが血栓を分解することから、日本ナットウキナーゼ協会が制定しました。今回は身体に良いとされる納豆の興味深い話をご紹介します。
そもそも納豆とはどんな食品か?
コロナ禍の中、これまで以上に食生活に気をつかう方が増えたと思います。特に免疫能を活性化しようと発酵食品の売れ行きが好調で、発酵食品の代表である納豆も店頭から姿を消す日があるほど人気のある食品です。
納豆は蒸した大豆を納豆菌によって発酵させたもので、特有の粘り気をもつ糸引き納豆のことを指します。余談ですが、お菓子の一種である甘納豆とは別物になります。原始的な作り方としては、まず大豆を煮込むと同時に藁を熱湯の中にくぐらせ殺菌します。その後熱いままの大豆を殺菌した藁につめて、40℃程度に保温しながら1日ほど置いておきます。こうすることで藁に付着していた納豆菌が大豆に移り、増殖することで発酵が起こり、納豆が出来上がります。
ここで一つ疑問になるのは、藁を殺菌した時点で納豆菌が死んでしまわないのかという点です。実は納豆菌は芽胞形成菌で、高熱下では芽胞を形成することで不死化する細菌になります。つまり、藁を熱湯にくぐらせる時に、納豆菌は芽胞形成して生き残るが、その他の雑菌は死滅するということです。そしてその後40℃程度にすると納豆菌が再活性化するので、芽胞から発芽し増殖を始めます。非常に理にかなっている工程で作るわけです。
ただこの方法では大量生産が困難でした。これを克服したのが半澤博士です。彼は研究を重ね、納豆菌の純粋培養法と衛生的で安定した納豆の製造方法を確立しました。現在では、以下のような手順で製造していることが多いです。
まず、蒸した大豆に純粋培養した納豆菌の分散液をかけ、発泡スチロール容器や紙パック容器に充塡して約40℃で6時間程度保温させます。
納豆菌増殖に伴う発酵熱で温度が上がるので、その状態で約24時間経過後、冷却により発酵を停止します。
最後に、アンモニア増加を抑制するため10℃以下に保ちながら流通経路に乗せていく、というような流れです。
納豆の健康への効果とは?
納豆はまさに「スーパーフード」と呼ぶにふさわしいくらい多くの健康効果が期待できます。整腸作用、免疫アップ、血栓の予防、感染症・アレルギー予防、解毒・抗菌作用、骨折の予防、更年期症状の改善、アンチエイジング効果、血糖値の上昇抑制などと本当に多くの効果が挙げられます。最新の知見では、認知症予防、体重減少、運動能力の増加、ストレス軽減なども報告されてきています。他にも発酵食品は多数ありますが、ここまで多種多様な効能を持つものは納豆くらいで、いかにすごい食品かがわかります。その中でも特筆すべきはやはり血栓を溶かす作用だと考えられます。
血栓を溶かすメカニズムは?
よく「納豆を食べると血液サラサラ」というフレーズを聞きますが、まさにこれが血栓を溶かすメカニズムになります。血栓形成とその溶解のメカニズムはとても複雑で色々な因子が関与しています。医薬品の中にも血栓を溶かす作用を持つものはいくつもありますが、どれも複雑な因子のうちの一つをピンポイントで狙いうちして血栓を溶かすように誘導するものが多いです。
納豆の中のナットウキナーゼと呼ばれる酵素が血栓を溶かす働きを担っていますが、このナットウキナーゼは現時点では納豆にしか含まれていないこと、そしてナットウキナーゼが血栓を溶かす仕組みには複数のメカニズムが関わっていることがわかっています。ざっと挙げると、血栓の主成分であるフィブリンを分解する、血栓を溶かす酵素であるウロキナーゼの前駆体であるプロウロキナーゼを活性化する、血栓を溶かすt-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)を増やす、などの効果があります。血栓を溶かすという点で見てもとても優秀な食品だといえます。
正しい食べ方と注意点とは?
多くの方が朝ごはんの時に納豆を食べると思います。血栓予防という点では、実は夜に食べた方が効果は高いのです。血栓は深夜から早朝にかけて形成されやすく、それに合わせて夜に納豆を食べておくと予防としてはかなり有効です。例えば飲んで帰ってきた時には、ラーメンやお茶漬けを食べる代わりに納豆を食べると良いということです。また、ナットウキナーゼはタンパク質なので熱に弱く、加熱を避けて食べないと効果があまり出ません。ご飯にかける時には少し冷ましてからかける、納豆味噌汁を作る時には味噌汁が少しさめてから納豆を後から加えるなどの工夫をするとよいでしょう。
そして、薬剤師であれば常識ではありますが、納豆に含まれるビタミンK2はワルファリンの作用を弱めるため、ワルファリン服用中は納豆を食べないことが必要です。ここでさらに気になるのは、最近ではナットウキナーゼのサプリメントがいくつも存在していますが、これとワルファリンとは一緒に飲めるのかという点です。これに関しては、多くのナットウキナーゼサプリメントでビタミンK2は除かれているので併用は問題ない場合が多いです。サプリメントを販売する際などにはきちんと説明できるように普段から調べておくとよいでしょう。ぜひ患者さんともシェアしてください。
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