長きに渡る不景気もあり、日本において、精神的な不健康であるメンタルヘルス不調の問題が深刻になってきました。さらにコロナ禍でうつ病患者が増えたというデータもあります。薬剤師がメンタルヘルスケアを少しでも担うことが出来たらという思いを込めて、今回はメンタルヘルスケアについてまとめたいと思います。

国もメンタルヘルスケアには力を入れている!

コロナ禍で多くの方々がテレワークになり、仕事の方法自体が変化したことで、ストレスを感じるという方もいるかと思います。厚生労働省としても近年、メンタルヘルス不調については対策を講じてきています。具体的には、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を策定していて、以下の事項が特に大事と考えています。

  • 心の健康については、客観的な測定方法が十分に確立していないため、評価が容易でなく、また、心の健康問題の発生過程は個人差が著しいため、そのプロセスを把握しにくい。
  • 労働者の心の健康は、職場の配置や人事異動、組織等の人事労務管理と密接に関係する要因によって大きな影響を受けやすい。このため、メンタルヘルスケアを適切に進めるには、人事労務管理との連携が必要となる場合が多い。
  • 労働者の心の健康は、職場におけるストレス要因のみならず、家庭や個人生活等、職場外のストレス要因の影響を受けている場合も多い。
  • メンタルヘルスケアを進めるに当たっては、健康情報を含む労働者の個人情報の保護および意思の尊重に留意することが重要である。

また、メンタルヘルス不調に対する取り組みとしては、一次予防、二次予防、三次予防があります。
一次予防とは「メンタルヘルス不調を未然に防ぐこと」で、2015年に労働者が常時50名以上の全事業場で義務化されたストレスチェックはこの一次予防を目的として行われています。
二次予防ではメンタルヘルス不調を早期に発見して治療につなげるなど適切な対応をし、三次予防では主に休職した労働者の職場復帰支援等を行います。この中でも一次予防に特に力をいれることが大事だと考えられます。

薬剤師がメンタルヘルスケアでできることは?

薬剤師がメンタルヘルスケアを担う場面は、今後増えていくと思われます。その際、精神科医や臨床心理士と同じ目線で患者さんに接するのではなく、薬剤師ならではの視点から出来ることを行うことが大事だと考えます。薬剤師だからこそ出来ることはたくさんあります。ドラッグストアに来た方を想定して、具体的に考えていきたいと思います。

例えば、ちょっと最近うつ気味だと感じている方に、いきなり心療内科受診を勧めるのではなく、まずは漢方薬やハーブ、アロマあたりから対処することを勧めることが挙げられます。ハーブやアロマは「香り」を利用して精神を落ち着かせるものですが、何がいいのかわからない、ちょっと敷居が高い、という方もいると思います。その場合には有効なのは、普段使っているシャンプー、ボディーソープ、入浴剤、洗剤の香りを変えてみることを推奨することです。これらの商品の中には色々な香りのものがあるので選びやすいと思います。どんな香りがメンタルヘルスに重要か普段からきちんと薬剤師側で把握していれば、その香りのものを適切に選べるようにアドバイスできると思います。一日の最後のバスタイムにふとかぐ香りや、仕事を終えて家に帰ってきた後の洗濯の時間が一瞬でも癒しの時間に変わることは意外と有効です。

薬剤師として新しく正確な医療情報の提供を

情報産業が十分に発展していなかった頃は、「情報は武器である」と考えられ、いかに情報をたくさん得ているかが重要でした。しかしながら、情報化社会の現在、テレビやネットニュースで毎日のようにコロナ関連の話題を目にすることができるため、情報量が多すぎることで混乱したり、根拠のないデマや噂を本当だと思いこんでしまったりすることで、メンタルヘルスを病んでしまう(いわゆるコロナ鬱)という方が続出しています。

薬剤師は医療のプロとして、誰よりも身近で、かつ、正確な情報を提供できる人になるべきです。以前よりも、一般の方の薬剤師に関する認知度と信頼度が高まっていると言われていますので、一般の方の情報淘汰の補助をすることは、薬剤師自身が思っている以上に有効です。薬剤師は常にCOVID-19に関しても新しい、かつ、中立性の高い情報を身につけておき、相談された際にはそれをきちんと提供して欲しいと考えます。他にも色々と対処できることはありますので、ご自身でも考えてみてください。

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