低分子医薬、抗体医薬に続く第3の医薬品と呼ばれる核酸医薬。これまでの医薬品とは違うメカニズムで作用し、これまで根治が難しかった難病にも効果的であると考えられています。以前のコラム「次世代医薬品の核酸医薬が、不治の病を治す可能性も」では、前述した3つの医薬品の比較を踏まえながら、核酸医薬について簡単に紹介しました。近年、世界規模で核酸医薬開発競争が激化してきているので、今回は改めて核酸医薬の最新状況についてまとめたいと思います。
実は一時期停滞していた?!核酸医薬開発
核酸医薬は、低分子医薬のように化学的に合成することが可能という簡便性と、抗体医薬のように特異性が高い結合能を持つという利便性の2つを併せ持つため、次世代の医薬品として期待されていました。
しかし、核酸の1つであるRNAの生体内での不安定さや、ドラッグデリバリーシステム※がしっかりと確立されていなかったことから、一時期は複数の大手製薬企業が核酸医薬開発を停止するなど、実は停滞していました。その後の研究の成果によって、安定性の向上や円滑なドラッグデリバリーシステム開発が進み、近年再び核酸医薬開発に注力する企業が増えてきました。
※薬を必要な時、必要な場所に必要な量だけ作用させるための技術のこと
核酸医薬の種類とは??
核酸医薬は複数タイプ存在しますが、代表的なものは、下記5つです。
(1)アンチセンス
(2)siRNA
(3)miRNA
(4)アプタマー
(5)CpGオリゴ
簡単に作用機序をまとめると、(1) アンチセンス・(2)siRNA・(3)miRNAは、タンパク質自体が作られないようにし、(4) アプタマーは、タンパク質に結合してその機能を阻害します。タンパク質は生体内では構造や酵素を構成する重要な分子なので、これが作られない、またはこの機能が阻害されることで、生理機能に影響を与えることになります。一方、(5) CpGオリゴは違ったメカニズムで、免疫賦活化を解して生理機能に影響します。
この中でも、(2) siRNAに関しては、そのメカニズム(RNA干渉)に対してノーベル賞が授与されたことと、これまでも基礎研究で広く使われてきて、システムがきちんと構築されているため、核酸医薬の主要なものになると考えられています。
最新動向と薬剤師の関わりとは??
日本では2つ核酸医薬が承認されています。
日本で初めて承認された核酸医薬であるMacugen®(成分名:pegaptanib)は加齢黄斑変性の薬で、種類としてはアプタマーになります。続いて承認されたSpinraza®(成分名:nusinersen)は、2017年に脊髄性筋萎縮症の薬で、は種類としてはアンチセンスになります(これまで承認されているものの大部分はアンチセンスです)。
世界的に見ると、1998年に米国でVitravene®(成分名:fomivirsen)が承認されたのを皮切りに多くの薬が承認されています。また、臨床試験中のものも多くあり、今後はより多くの薬が承認されることが見込まれています。2018年には、米国で世界初のsiRNAの薬であるOnpattro(成分名:patisiran)が承認されており、今後は前述したようにsiRNAの薬が多く増えてくると見込まれます。
これまで日本の開発は遅れていましたが、日本新薬が筋ジストロフィーの新薬として、Viltolarsen(NS-065/NCNP-01)を開発中です。この薬は2019年中に承認を受けることが予想されており、日本初の核酸医薬が登場することが期待されています。加えて、第一三共も同じく筋ジストロフィーの新薬を開発中のほか、大塚製薬やアステラスなどの大手製薬メーカーも核酸医薬開発を進めてきています。
こういった動向を鑑みるに、今後薬剤師の扱う医薬品の中で核酸医薬のシェアが増えてくることは明白です。ぜひ動向を注視するとともに、自分でも核酸医薬のメカニズムなどについて勉強してみてください。
参考
AnswersNews Plus – 製薬業界のキホンがよくわかるキーワード解説集
核酸医薬 来年日本でも相次ぎ承認へ―初の“国産”日本新薬の筋ジス薬も
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