健康志向の高まりが加速化している昨今、糖質制限ブームが続いています。今回は医療のプロである薬剤師の視点から糖質制限についてみてみましょう。
そもそも糖とはどういうものか?
糖とは重要な栄養素の中の炭水化物の一種です。糖と一口に言ってもデンプンなどの多糖から、それらが分解されたブドウ糖などの単糖にいたるまで多岐に渡ります。
その中でも単糖の代表であるブドウ糖はエネルギー源として重要となります。ブドウ糖はすぐにエネルギーになってくれるので、運動する時に補給するとよいとされています。また、脳の唯一のエネルギー源なので、勉強する時にも補給する方が多いと思います。
現代では誰でもどこでも簡単に食料が手に入りますが、人類の長い歴史を見ると人は度々飢餓に苦しんできました。そのため、進化の中であまり食べなくてもそれなりに生きていけるように体が形成されてきました。糖は特に一番大事なエネルギー源なので、普段からエネルギー源として使わなかった糖を、筋肉や肝臓に貯蔵多糖のグリコーゲンとして蓄えています。ただ、かなり過剰な糖摂取を行うと、余剰分は脂肪に変わって蓄えられてしまうので肥満につながっていきます。脂肪の取りすぎではなく糖の摂りすぎによって肥満につながるわけです。これを防止する発想から糖質制限が生まれました。
糖の過剰摂取のもう一つの怖さとは?
前述した糖の摂りすぎは肥満につながります。加えて、糖尿病にもつながってしまうため注意が必要になります。前述したように人は本来、栄養飢餓に適応するようにできています。その証拠に、血糖値を上げるホルモンはいくつかあるのに、逆に下げるホルモンはインスリンただ1つしか存在しません。過剰な糖摂取などによって、インスリンが分泌異常になったり、インスリン抵抗性がある状態になったりします。こういった状態になると、血糖値を正常に下げることができなくなり、糖尿病につながってしまう可能性があります。よく誤解されがちですが、糖尿病自体が怖いのではなく、糖尿病によって様々な合併症が起きることが怖いのです。
正しい糖質制限とは?
糖によって血糖値を上げること自体は生命にとっては必要ですが、過剰摂取は肥満や糖尿病につながるため、摂りすぎも摂らなさすぎもだめです。医薬品にも言えることですが、栄養摂取においても「正しい摂り方」を正しく理解することが大事になります。
まずあまり糖質制限しないほうがいい方としては、運動選手や受験生など糖が多く必要な方です。また、子どもを授かりたいと思っている年代の方は過度な糖質制限を避けたほうがよいかと思います。精子と卵子を正常に受精させる過程でかなりのエネルギーを要するからです。
逆に、糖質制限が向いている方は、過度な肥満の方、糖尿病とすでに診断されている方などです。これらの方は糖質を減らして、タンパク質と野菜中心の食生活が適しています。また、正しい摂り方のポイントとしては、野菜や肉から先に食べて、糖質を最後に食べること、また、きちんと噛んでゆっくり食べることなどです。
さらに薬剤師の観点からすると、糖の吸収を穏やかにする食品やサプリメントも市販されているのでこれを上手に利用するとよいと思います。しかし、これらの食品やサプリメントを取っているからと安心してしまい、その後に多量に糖質を摂取する方や、糖の吸収を穏やかにする食品やサプリメント自体を過剰摂取する方もいるので、相談された際にはあくまで糖質制限の補助であることを正しく説明する必要があります。薬剤師として糖質制限を正しく伝えられるよう、ご自身でもぜひ調べてみてください。
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