コロナ禍もあり、免疫能を向上させようという気運がさらに高まっています。その一環として、腸活ブームも加速し、乳酸菌系商品の売れ行きも好調なようです。そこで気になるのは、どういったエビデンスがどこまでわかっているのかです。今回は、乳酸菌についてまとめたいと思います。

そもそも乳酸菌とは?

「乳酸菌」という言葉はかなり一般的になっていますが、実は、分類学的な呼び名ではありません。つまり、乳酸菌という名前の細菌は存在しないということです。乳酸菌というのは、「炭水化物などを消費する(発酵する)ことで、乳酸を大量に作り出す細菌の総称」になります。

作り出された乳酸によって、腸内が酸性に保たれることで、悪い働きをする悪玉菌の増殖が抑制され、腸内環境が改善する訳です。また、乳酸が腸を刺激して腸のぜん動運動を促進したり、腸内に水分を呼び込み便の硬さを調節したりすることも、腸内環境改善につながっています。これらは乳酸菌が持つ整腸作用の説明に該当します。

乳酸菌が持つのは整腸作用だけに有らず?!

乳酸菌の整腸作用は代表的な効能ではありますが、ここまで乳酸菌が注目されている一番の理由としては、実は整腸作用以外にも色々な効果があるという点です。具体的には、免疫能活性化作用、老化予防作用、抗がん作用、血圧降下作用、コレステロール低減作用、動脈硬化予防作用などが挙げられます。これらの効果は多くの研究で科学的にきちんと証明されているので、「乳酸菌が健康に良い」というキャッチフレーズがあったとしても、それは決して言い過ぎではないということになります。

ただし、ここで一つ押さえておきたい注意点があります。前述したように、乳酸菌とは色々な細菌の総称です。そして、細菌の種類によって、効果も当然変わってきます。ですので、すべての乳酸菌がすべての効果を持っている訳ではないのです。つまり、薬剤師であれば、「どんな乳酸菌がどんな効果を持っているのか」をきちんと把握しておく必要があるということになります。

各乳酸菌の種類と効果を整理してみる!

乳酸菌の種類とその効果を覚えておくと、乳酸菌商品を販売する際の説明にも有効です。

LG21乳酸菌:胃がんを引き起こすと考えられている胃の中のピロリ菌を抑制する働きが報告されています。つまり、胃がん予防をしたい方に適しています。

1073R-1(R-1)乳酸菌:インフルエンザや風邪の予防が報告されているため、新型コロナウイルス感染症対策としてはこれが向いています。

L-92乳酸菌:皮膚の不調や通年性アレルギー性鼻炎などの症状を緩和するという報告があるので、アレルギーの方向けということになります。

ガゼリ菌SP株:内臓脂肪の低減作用、コレステロール低下作用、血糖値の上昇抑制作用などが報告されているため、生活習慣病が気になる年代の方に特に向いているものになります。

乳酸菌シロタ株:整腸作用や免疫能調整作用の他、大腸がんのリスク低減作用も報告されているため、特に大腸がんの予防を目的とした方に適しています。

ラブレ乳酸菌:更年期症状緩和作用などが報告されていますので、どちらかというと女性向けと言えます。

乳酸菌の中でも特別な細菌がある!

善玉菌の一種として有名なものにビフィズス菌がありますが、実はこれも乳酸菌の一種です。しかしながら、他の乳酸菌とは少し違っているため、特別視されることがあります。他の乳酸菌と同様、乳酸を産生したり、腸内に棲息したりといった共通点はもちろんありますが、酢酸を産生する、菌の形が独特、酸素の存在下では発育しないなどのビフィズス菌特有の性質も持っています。このビフィズス菌のうち、BB536株に関しては、インフルエンザ発症予防やアレルギー症状緩和などの効果が確認されています。前述したL-92乳酸菌と一緒にビフィズス菌BB536株も取ることで、アレルギー症状緩和にはとても有効であると言えます。特にアレルギーに関しては、ビフィズス菌の寄与の方が大きいとも考えられているため、アレルギーで悩んでいる方に勧めてあげると良いでしょう。

生きた乳酸菌が大事なの?

よく、「生きて腸に届く乳酸菌」と聞くので、乳酸菌のサプリメントや錠剤は乳酸菌が生きていないため、効果がないのではと思う方もいらっしゃるかもしれません。現に筆者も患者さんや知人からも何度もそのような相談を受けた経験があるため、多くの方が気にされていると思います。実は近年の研究で、生きている乳酸菌と死んでいる乳酸菌、どちらを摂取したとしても健康に対する効果はきちんと発揮されることがわかっています。この点もきちんと説明することが有効だと思います。
ぜひ、乳酸菌の知識も持って、患者さんの幅広い健康相談に対応できる薬剤師を目指してみてください。

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