超高齢社会に突入した我が国において、高齢者医療の役割は日に日に増してきています。高齢者医療において薬剤師は何をすべきで、何ができて、かつ、どうやって存在感を発揮するのが良いでしょうか。高齢者医療シリーズとして、今回は前回の第1回目に引き続き、より実践的な内容となる第2回目をお届けしたいと思います。
まずは高齢者医療の専門家を目指してみる?
高齢者医療の専門性を磨きたいと思っても、具体的に何から勉強を開始すれば良いのかが正直分からないという方も少なくないと思います。そういった方は、これから紹介する3つの認定薬剤師を目指されると良いでしょう。具体的には次になります。
(1)老年薬学認定薬剤師
(2)在宅療養支援認定薬剤師
(3)認知症研修認定薬剤師
どれもある程度の薬剤師経験が必要となりますが、きちんとした認定制度が確立されているものですので、網羅的に学ぶことができて大変有益かと思います。
老年薬学認定薬剤師とは?
高齢者医療に関する専門的な知識を有すると認められる薬剤師に付与されるもので、認定要件としてはなかなかハードルが高いものになります。具体的に列挙すると、薬剤師免許取得後3年以上経過していること、日本老年学会の会員であること、日本老年学会の指定する研修や実技実習などを受講していること、認定試験に合格することなどです。実技実習まであるのが特徴です。ハードルが高い分、学べる範囲も幅広く、また、取得後の信頼性も抜群で、他職種との連携もスムーズとなります。加えて、高齢者施設に就職する際にも有利となります。
在宅療養支援認定薬剤師とは?
前述した老年薬学認定薬剤師と比べて、在宅医療に重点を置かれているものになります。高齢者医療で近年増加している在宅医療についての専門家として多職種連携でも活躍できます。一般社団法人日本在宅薬学会が実施しているもので、認定要件としては、3年以上の薬剤師実務経験に加えて、所定の研修受講、学術大会への参加などに加えて、バイタルサイン講習会を受講することや在宅業務の事例報告なども必須とされていて、かなりハードルが上がるものの、今後薬剤師もバイタルサインを確認する時代になると考えられているので、薬局薬剤師であっても先進的かつ実務的知識が学べることが大きなメリットになります。
認知症研修認定薬剤師とは?
高齢者の増加は認知症患者増加と相関するという背景から、認知症領域に特化したもので、一般社団法人日本薬局学会が認定するものです。患者さん自身についてはもちろん、そのご家族などに寄り添える人材になれるようなカリキュラムとなっています。認定要件としては、日本薬局学会の正会員であることなどに加えて、認知症サポーターを取得していること、認知症患者への介入事例の提出、指定のe-ラーニングの受講など、認知症についての専門的な知識と実践的技術が要求されるものの、今後も認知症が増えていくと推測されるので将来性は高いと言えます。
高齢者医療における薬剤師の未来とは?
高齢者人口は今後も増加していくことはほぼ確実です。それに伴い、高齢者医療もより多様化していきます。特に、患者さんの最期の時を一緒に見守るという、いわゆる「看取り」も多様化していきます。
一昔前なら、例えばがんの末期患者なら、病院のベッドでいろいろなチューブを付けられて延命措置をほどこされながら最期を迎えるということが多かったと思いますが、今では家で自分らしく最期を迎えるなども選択肢として増えてきました。それに伴い、在宅医療の重要性も増してきています。在宅医療に特化した薬局が増えてきているのもこういった状況があるからです。しかしながら、医師の指示の下で薬剤師が薬を用意して、そのまま患者宅へと持っていき配置するだけという事例も少なくありません。
今後はこの状況が大きく変わる可能性があります。次回に訪問する際の処方についての提案や高度な医薬品に主体的に関わる、必要なら看取りまで薬剤師も立ち会い、緩和医療の薬の管理に関わるなど薬剤師にもっといろいろな権限を付与しようという動きもある中、肝心の薬剤師側が対応できないのでは意味がありません。これまでは高齢者医療は病院薬剤師の領域でしたが、多くの患者さんが病院を出て在宅にて最期を迎えるということになれば、それこそ地域医療の担い手である薬局薬剤師が主に関わる領域となります。
薬剤師過剰時代において、薬剤師として生き残るためのキャリアとしても、高齢者医療の専門家になることを意識してみてください。
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