ヒトの体の臓器で薬と密接に関係している臓器の一つである腎臓。肝臓とあわせて薬を語る上では大事な場所です。腎臓が弱っているいわゆる腎機能不全の方では薬を服用する際に気を付けるべき点が多くあります。今回一緒に復習してみましょう。

そもそも腎機能って何を指すのか?

腎機能という言葉はよく聞くものの、そもそも何を具体的に指しているのかがいまいちピンとこないという方も少なくないと思います。腎機能とざっくりとまとめると、「血液中の老廃物や過剰な水分を尿として排泄することで、体内の水分量や電解質バランスを調整して体内環境をベストな状態に保持する」という仕組みのことです。

一般的には腎臓は尿を作る場所という認識ですが、実は一番大事な点は、「体内環境をベストな状態に保つこと」です。つまり、いくら尿が作られたとしても、体内環境がおかしくなる場合には、それは腎機能が弱っているということになります。この腎機能が弱り過ぎると、いよいよ人工透析が必要になってくることもあります。

どうやったら腎機能の状態を見られるのか?

腎機能の指標として主なものとしては、Cr(血清クレアチニン)とeGFR(推算糸球体ろ過量)があります。Crは筋肉の代謝物で、腎機能が弱ってくると血中に蓄積してきます。一方、eGFRはCr、年齢、性別から腎臓のろ過機能を推定する値で、この値が小さいほど腎機能が低下していると判断されます。

さらに、eGFRに関しては標準化eGFRと個別化eGFRがあり、前者は体表面積で補正しているもので慢性腎臓病の診断などの長期的変化のスクリーニングに使用される一方、後者は体格補正をせず、個人ごとの薬の投与量を決定する際に使用されたりするものです。

また、Crに関しては、筋肉の代謝物という特徴から、筋肉量が多い人ほど高くなる傾向があり、かなりの個人差があります。つまり、元々筋肉量が少ない方における軽度な腎機能低下では正常範囲内になってしまうことが多いです。

まとめると、Crの方が直接的指標ではあるものの、やはりeGFRで判断した方が正確と言えます。さらに、eGFRにはCysC(シスタチンC)を用いたeGFRcysというものもあり、これはクレアチニンを使用しないため、筋肉量の影響を受けにくく、アスリートなどでよく用いられます。ほかにも、ACR(尿蛋白)というものもあり、これは腎機能低下だけでなく、心臓や血管の疾患リスクなどにも使用できるものです。要するに、ACRだけでは腎機能低下だと断定はできないため、前述したeGFRと組み合わせるとより有効です。

腎機能不全に有効な薬はあるの?

まずここで覚えておきたいことは、腎機能不全に陥った場合には、それを完治させる薬は現時点では存在しないということです。ただし、ほかの治療薬の中には、腎機能不全をこれ以上進行しないように持っていけるものは存在します。例としては、糖尿病のSGLT2阻害薬、高血圧のACE阻害薬・ARB・利尿薬などが有名なところです。

裏を返すと、これらの疾患の方で、これまで飲んでいた薬から、これらの薬に変更された場合(例えば、これまで高血圧治療でカルシウム拮抗薬を服用していた方で、血圧は落ち着いているのにARBに変更されたという場合)には、もしかしたら腎機能不全が進行しているからという処方意図が隠れているかもしれません。薬剤師としても検査値の確認などをしっかりと行いたいところです。

腎機能不全で注意すべき薬の盲点とは?

薬剤師であれば誰しもが、薬のどれが腎排泄型ということは理解しており、こういった種類の薬が腎臓に負担をかけるので不可ということもしっかりと分かっているはずですので今さら語るまでもないでしょう。ただ、意外と盲点の部分があるため紹介したいと思います。

薬の流通問題が深刻な昨今、元々錠剤を服用していた患者さんで、在庫不足により、散剤や液剤に変更になったりする場合が増えてきました。同じ成分であれば、散剤や液剤のものは比較的流通がまだあるということも多いからです。ここで注意が必要です。

散剤は錠剤よりも服用時に多くの水分を必要とします。そして、液剤自体が水分を多く含んでいます(錠剤を液剤に変更した場合に、同じ成分量を維持しようとすると薬の量が増えるということが多いです)。腎機能の患者さんは水分排泄が通常よりもうまくいかないという特性があります。そういった状態で水分を多く摂取することは問題となります。腎機能不全の患者さんの場合には、もし同じ成分のものでOD錠やODフィルムがあるならば、それに変更がベストです。唾液でも服用できますし、水で飲む場合でも少ない水で済みます。もし同じ成分のものでこういった剤形がないなら、類似成分のものに変更ということも必要になってきます。

そして、ここで薬剤師としての腕の見せどころです。処方医に問い合わせる際に、「腎機能不全では水の排泄がうまくいかないため変更した方がいいです」という旨をきちんと伝えることで、医学的知識をベースとした疑義照会、そこからの適切な処方変更へとつなげていけます。

腎機能に関しては、普段検査値は参考にするものの、あまり深くは意識していないことも多いです。ぜひ腎機能に精通した薬剤師を目指してください。

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