コロナ禍の中で、感染症対策の重要性が一般レベルでも浸透しました。もともと医療機関という場所は感染が起こりやすい場所ということもあり、薬剤耐性菌の院内感染などが問題となっていました。感染症対策としては医療関係者総出で行う必要があると言えます。そうした中で、感染制御に精通した薬剤師の育成も行われてきました。それが「感染制御認定薬剤師と感染制御専門薬剤師」です。どんな資格なのか一緒に見ていきましょう。
感染制御認定薬剤師とは?
感染制御に関する実践能力が一定水準以上あると日本病院薬剤師会が認定する資格です。現時点での認定者数は1,000人以上にはなっていますが、全薬剤師数からするとまだまだ多くはないと言えます。
認定要件としては、薬剤師としての実務経験が3年以上、日本病院薬剤師会、日本薬剤師会、日本女性薬剤師会のいずれかの会員であること、日本薬学会などの学会のいずれかの会員であること、日病薬病院薬学認定薬剤師であること、施設内で感染制御活動に3年以上で引き続き1年以上従事していること、施設内で感染制御に貢献した業務内容及び薬剤師としての薬学的介入により実施した対策事例が20症例以上であること、所定の講習会の単位を取得していることなど全てを満たす必要があるため、とてもハードルが高いと言えます。
更新に関しては5年ごとで、これに関しても厳しい要件が用意されています。ただ、大学病院などの高度医療を提供していて、最先端の研究を行っている施設に所属していれば比較的容易に取得できるとは言えます。
感染制御専門薬剤師とは?
感染制御に関して高度な知見を有すると日本病院薬剤師会によって認定される専門薬剤師です。感染制御認定薬剤師の上位資格という位置づけになります。感染制御認定薬剤師を取得してから、さらに研鑽を積むことで取得することが可能となります。現時点での認定者数は300名ほどで、さらに薬剤師の世界では少数と言えます。
認定要件としては、感染制御認定薬剤師よりもさらに厳しいものとなり、感染制御認定薬剤師を取得していることがまずは必須であることに加えて、感染制御関連の学会での発表を2回以上(うち少なくとも1回は発表者である必要あり)行うことに加えて、複数査読制のある国際的学術雑誌か全国的な学会誌などに感染制御関連に関する学術論文を1編以上(うち少なくとも1編は筆頭著者)発表していることが必要となります。また、博士の学位を取得できるレベルの薬剤師である必要があるため、研究能力やプレゼン能力など高度な能力が求められています。実際に、感染制御専門薬剤師取得を足掛かりに、博士号を取得して、そのまま大学教員などの研究職に転職する方も少なくないです。
取得のハードルがかなり高いものの、その分取得することで、医師を含めた他職種からも一目置かれる存在になれますし、病院内での共同研究プロジェクトなどにも参加できるといったこともあります。更新としては5年ごとで、引き続き学会参加や論文執筆を続ける必要がありますので、維持もかなり大変です。
どういった役割があるのか?
まず押さえておきたいことは、感染制御認定薬剤師と感染制御専門薬剤師の間で実際の業務には差がないという点です。どちらを取得しても一定の知識を持っているということで評価されます。ただし、普段の臨床業務において違いはないものの、専門薬剤師の方がより研究者・指導者という側面が期待されているということは言えます。感染制御認定薬剤師を取得することをまずは目指し、その後ぜひ感染制御専門薬剤師も目指してみると良いでしょう。
2004年より、国が指定する特定機能病院(特定機能病院の承認要件は、高度な医療の提供、開発・評価、研修という3つの機能を有すること、400床以上の病床、医師・薬剤師・看護師等の手厚い人員配置、集中治療室・無菌病室などの設備、紹介制の導入、高度な医療安全管理体制などが含まれます)の承認要件の一つとして、専任の院内感染対策を行う者を配置することが定められるようになったため、自身の職場においては、抗菌薬の適正使用推進、院内感染対策などで活躍できるのはもちろんですが、活躍の場としては自身の職場にとどまらず、地域における災害時の感染症対策、コロナ禍のような大規模なパンデミック発生時のリーダー的役割、小学校などにおける感染制御に関する勉強会の講師などでも活躍できます。
梅毒感染が拡大している昨今ですが、過去の感染症がまた再燃したり、新しい感染症が起こったりすることが今後もあるでしょう。今回紹介したものは薬局薬剤師では実質取得が困難となるものですが、人手不足が深刻な中で、どこの病院も薬局薬剤師経験者の中途採用を行っていたり、給料に関しては以前よりも高くなっている現状で、薬局から病院に転職するという方もいらっしゃると思います。そういった後にはぜひ感染制御のプロとしての薬剤師を目指してみてください。
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