国際化がますます進む中、薬剤師の働き方も大きく変わってきています。そうした機運の中、海外で働くことが気になるという方も少なくないと思います。今回は海外の薬剤師事情の1回目として欧米地域についてお届けしたいと思います。

欧米地域における薬剤師の給与事情とは?

一番気になるのは給与事情ではないでしょうか。日本は世界に名だたる国民皆保険制度が発展している国なので、制度によってある程度の報酬が決まっています。そのため、普通に薬剤師業務をしているだけでは給与は上がりにくい傾向にあります。欧米地域ではどうでしょうか。一番年収が高いのはアメリカで、薬剤師の平均年収としては1000万円を軽く超えます。カナダやスイスなどもアメリカには及ばないものの、日本よりは高い水準です。ただし、ベルギーなどは、むしろ日本よりも低い水準であり、必ずしも欧米地域だからといって高い年収というわけではないということが理解できます。

アメリカでの薬剤師事情とは?

アメリカの場合を考えてみましょう。薬局や病院での薬剤師はもちろん日本と共通ですが、コンサルタント薬剤師という職種があり、医療施設などに薬物治療などのアドバイスをするといった職種も存在します。何より、アメリカには日本のような国民皆保険制度がないため、病気になったらまずは薬局やドラッグストアに行って薬剤師に相談するというのが一般的な流れです。そのため、薬剤師の地位も高く、日本以上の権限も認められています。

その一つが「依存型処方権」というものです。これは医師から委任を受けることで、薬剤師が処方箋を書くことができるというものです。こうした背景もあり、薬剤師がクリニックを開くという場合もあります(ファーマシークリニック)。また、予防接種も認められているということも加味すると、かなりの権限を持っているといえます。裏を返すと、それだけの信頼を医療者と患者さん双方から得ているといえます。隣のカナダも似たような状況です。

資格取得の王道とは?

まずは単純にアメリカで薬学部を卒業して取得するという王道ルートを考えてみます。実はアメリカでは医師と薬剤師などの高度専門職の資格を取得しようとした場合には、高校卒業後にストレートで進むことはできないという仕組みになっています。まず、一般の大学で2~4年間教養科目(数学や化学など)を学んだ後に、高い競争倍率である4年制の薬学博士号(Pharm. D.)取得課程の大学院に進学して、卒業後に州が定める2種類の薬剤師免許試験両方に合格することが必要です(なお、アメリカの薬剤師は州ごとの試験となっています)。つまり、そもそも日本の薬学部が6年制になったといっても、アメリカは実質博士課程相当の学位となるため、ハイレベルなのは納得です。

すでに取得している日本の薬剤師免許を活かす方法も!?

この場合には、次の3つを満たす必要があります。

・FPGEEという外国の薬剤師免許所持者向けの試験に合格する

・TOEFL(R)で規定の点数を取る

・TSEで規定の点数を取る

その後、インターン免許を取得して、臨床研修を州が定める時間行い、試験を受けて無事に取得となります。大学院へ行くほどではないにしろ、こちらの道もなかなかの高い壁といえます。しかしながら、費用としては抑えることができるというのがメリットです。加えて、就労ビザの取得も必要となります。

アメリカの薬剤師免許なしでもアメリカで働きたいなどの場合には?

アメリカには調剤補助の専門職種としてテクニシャンがあり、まずはこのテクニシャンとして働いて薬剤師を目指すという道もありますが、もっと確実なのは製薬企業などの世界的規模の企業勤めになることです。外資系の製薬企業にいればアメリカ含めて海外での勤務の可能性があり、商社などよりも薬剤師の実務経験が転職に活かせる可能性が高いのでおすすめです。新卒の時に製薬企業に行けなかったという方でも、今は製薬企業の職種も多岐にわたっており、グローバル化の波もあり、英語力が高い人材を欲していることが多いので、薬剤師の経験を武器に再挑戦するのもありではないでしょうか。

今回は欧米に関して見てみました。次回は、欧米以外の地域など、他の国での可能性を見ていく予定です。

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