薬剤師業務をしていると、色々な吸入薬を目にするかと思います。薬剤師であれば使い方の基本は知っているものの、細かい特徴などはあまり知られていない場合も。今回は吸入薬の使い分けを確認してみましょう。
吸入薬の種類をデバイスの点で見てみると?
まずは分類について見てみましょう。大きく分けて、(A)加圧式定量噴霧式吸入器(通称pMDI)、(B)ドライパウダー式吸入器(通称DPI)、(C)ソフトミストインヘラー(通称SMI)の3つのタイプがあります。
(A)加圧式定量噴霧式吸入器は、ボンベの底を押すと噴霧ガスであるエタノールと薬がエアゾールを形成して噴霧されますので、吸入する力が弱い方でも使用可能ですが、タイミングよく息を吸う必要があります。(B)ドライパウダー式吸入器は、息を吸うことで薬が供給されるため、(A)と比べると、しっかりと吸入を行うことが必要になります。(C)ソフトミストインヘラーは、噴霧ボタンを押すと1回分の薬がエアゾールとして噴霧される点では(A)と同じですが、吸入ガスは使用しません。粒子系が小さいので肺胞にまでしっかりと達するといったものです。
さらに細かく見てみると、(A) 加圧式定量噴霧式吸入器では、a.懸濁タイプ、b.溶液タイプに分けられ、また、(B)ドライパウダー式吸入器にも、a.イーヘラー、b.ディスクヘラー、c.タービュヘイラー、d.ディスカス、e.ツイストヘラー、f.ハンディヘラー、g.ブリーズヘラー、h.エリプタといった複数の吸入器具タイプのものが存在しています。ざっと見ただけでも色々なデバイスの種類があることが理解できると思います。
成分と薬効で見てみると?
成分と薬効で分類してみても興味深い特徴が見えてきます。大きく分けて、(1)吸入ステロイド薬(通称ICS)、(2)長時間作用性β2刺激薬(通称LABA)、(3)短時間作用性β2刺激薬(通称SABA)、(4)長時間作用性抗コリン薬(通称LAMA)の4つになります。
(1)吸入ステロイド薬は、喘息治療の際の第一選択薬で、強力な抗炎症効果を持ちます。(2)長時間作用性β2刺激薬は発作の予防に使われるもので、効果が長時間持続するものです。(3)短時間作用性β2刺激薬は(2)に比べると即効性が期待できるもので、喘息の発作時に使われます。(4)長時間作用性抗コリン薬はCOPD治療の際の第一選択薬で、気管支収縮を抑制することで気道を広げます。医師や看護師の間ではよくラバ、サバ、ラマとかと呼ぶことがあるので、通称を覚えておくと、他職種間でも円滑にコミュニケーションが進むと思います。特に日頃はあまり他職種と接点がない薬局薬剤師の方は覚えておくとよいでしょう。
(1)吸入ステロイド薬、(2)長時間作用性β2刺激薬、(4)長時間作用性抗コリン薬はコントローラーと呼ばれ、継続使用によって発作予防が発揮できるものなので、症状がなくなったからと言って自己判断では中止することないように毎日決まった時間に吸入するように説明する必要があります。
特に注意すべき点とは?
まれに患者さんの中で、吸入薬を使いたくないという方もいらっしゃいますが、そのような方には、まずは、飲み薬よりも吸入薬のほうが少ない薬剤量で効果を発揮すること、同時に全身への副作用が少ないことをお伝えしましょう。吸入薬について、誤解している方が意外と多いので注意が必要です。
また、発作が起きてから使う薬に関して注意すべきは、この発作の症状が咳だけではないということです。咳以外にも、のどがいがいがする感じがしたり、胸が圧迫される感じがしたり、たんが異状に出てきたりなども発作の中に含まれますので、そういった場合にも薬を使用することが必要です。
そして、一番気をつけたい点は、アルコールアレルギーの方では噴霧ガスとしてアルコールを使用しているものは使用不可なので、必ずアレルギーの有無を使用前に確認する必要があります。参考までに、アルコールアレルギーの方でも使用できる具体的なエアゾール剤としては、インタールエアロゾル®、サルタノールエアゾール®、アドエアエアゾール®などです。ぜひご自身でも表にまとめたりして常に勉強しておくとよいかと思います。
吸入薬の間違った使用の防止は効果発揮にかなり有効となりますので、吸入指導する際の参考知識として今回の内容を覚えておいてください。
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