次第に寒さが増す中、乾燥の季節にも突入します。それに伴い、肌の乾燥で悩む方も多いでしょう。最近では多くの保湿製品がありますが、薬剤師であれば正しく理解したいものです。今回は保湿について見ていきましょう。

乾燥を防ぐバリア機能

外部環境が乾燥しているからといって、すぐに肌も乾燥するわけではありません。なぜなら、肌には「バリア機能」が存在しており、乾燥から肌を守っているからです。
このバリア機能は、紫外線や細菌、ウイルスなどからも肌を守り、異物が体内に入るのを防いでいるのです。また、水分が体外へと逃げていくのも防いでくれています。
特に紫外線で肌がダメージを受けると、水分がさらに肌から蒸発しやすくなるため、このバリア機能は保湿という点でも重要な機能です。

バリア機能に重要な成分は?

バリア機能を担う場所は主に肌の角質層で、そこの3つの成分が重要です。その3つとは、(1)角質細胞間脂質、(2)皮脂膜、(3)NMFです。
まず(1)角質細胞間脂質は水分と油分の層が何層にも重なってバリア機能を正常に維持する働きをします。セラミドや脂肪酸などから構成されています。
続いて(2)皮脂膜は汗腺から分泌される水分(汗)と皮脂腺から分泌される油分(皮脂)との混合成分で、水分が蒸発するのを防ぎます。
最後に(3)NMFは天然保湿因子の英語名である「Natural Moisturizing Factor」の略で、水分を肌に保持する働きをします。この主な構成因子はアミノ酸です。
つまり、日ごろから水分だけでなくアミノ酸や脂肪酸などをしっかりと摂っていないと、そもそもバリア機能に関与する重要な成分に異常をきたし、いくら外からケアしてもあまり意味がありません。肌は体の状態を表すとも考えられますので、薬剤師としては肌トラブルを抱えている方に対して、まずは偏った食生活になっていないかヒアリングすることも重要です。

保湿の際に大事な点とは?

保湿は「水分を補う」という視点だけでなく、「油分を補う」ことも必要です。もちろん肌の状態には個人差があるのでこの2つのバランスを調整することが効果的です。薬剤師としては、まず肌質をきちんと見極めることが大事です。
例えば、油分が不足している方が水分を補う化粧水を頻用してしまうと逆効果になることがあります。化粧水には水分が多く含まれているため、多くの商品では劣化防止用の界面活性剤が使われているからです。この界面活性剤は洗剤に含まれている成分で洗浄力を高める働きをするので、油分が少ない方の肌に大量に塗り込むと油分をさらに減らしてしまい、ますます乾燥します。
最近では界面活性剤フリーのものもありますが、長持ちしないということに注意が必要です。一見肌には良さそうですが、もし細菌やカビが繁殖したものを塗りこむと、肌にダメージを与える可能性があるだけでなく、肌のバリア機能が低下している場合には体内に侵入してしまい、健康を害するということにもなりかねません。
油分が少ない方には化粧水ではなく、油分と水分をバランス良く含んだクリームタイプの方が適しています。ただし、水仕事が多い場合にはクリームだとすぐに落ちてしまうため、油分がメインの軟膏タイプが適しています。

水分と油分が両方とも不足している場合は?

加齢によって水分と油分の両方が不足することが多いですが、若い方でも両方が不足している方もいます。皮膚が硬めで弾力があまりなく、潤いがない方だとこの傾向にあるかもしれません。そのような方は、水分と油分両方を補う必要があります。化粧水を少なめに塗布し、少しおいた後クリームを薄くなじませ、水気が乾いたらその上から軟膏を薄く塗るというのがおすすめです。
保湿のプロとして活躍できるような薬剤師を目指してみてください。

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