病気の症状の中でも誰もが身近に経験する頭痛。慢性的なものから突発的なもの、鈍痛や激痛など症状もさまざまで、頭痛は数ある痛みの中でも厄介な部類に入ると思います。頭痛の仕組みは複雑であり、なかなか西洋医学での対処が難しいという側面もありますが、実は漢方医学が得意とする場面もあります。今回は頭痛でよく使われる漢方薬についてみてみましょう。
頭痛にはどんな種類がある?
風邪や二日酔いなどの頭痛のように一過性のものならそれほど問題にはなりません。風邪の原因ウイルスなどが体内からいなくなったり、二日酔いが治まったりすれば、頭痛も治まることがほとんどだからです。
問題は慢性的な頭痛です。この頭痛を大きく分けると、(1)一次性頭痛と(2)二次性頭痛になります。(1) 一次性頭痛は、さらにa.片頭痛、b.緊張性頭痛、c.群発頭痛に分類されます。一方、(2)二次性頭痛は他の疾患によって引き起こされるもので、その原因疾患として、クモ膜下出血、脳腫瘍、副鼻腔炎など多種多様なものが存在します。
(2) 二次性頭痛は頭痛の治療というよりはその原因となる疾患の治療を優先することになります。前述した風邪や二日酔いもこちらに含まれるとも考えられます。
これに対して、(1) 一次性頭痛は原因がはっきりしないものが多く、また3つのうち2つないし3つを併発する方もいらっしゃるので西洋医学的なアプローチが難しい場合も出てきてしまいます。そのため、人全体のバランスから診断をする漢方医学が向いているのです。
一次性頭痛の症状の特徴と違いとは?
症状としても複雑にはなりますが、一次性頭痛のそれぞれの頭痛には特徴もあります。
a.片頭痛の特徴としては、脈打つようなドクドクとした痛みが特徴です。人によっては固い石で殴られたような強烈な痛みを訴える方もいます。片頭痛と言っても頭の片側だけではなく、実は頭の両側全体で起こることもあります。光や音などの刺激で痛みが悪化することもあり、吐き気や嘔吐を伴ったり、悪天候や寝不足などで発症したりする方も少なくないです。西洋医学では鎮痛剤やトリプタン系の薬剤を使用することが多く、確かに即効性はありますが、各人に合っているものを選ぶのが難しい、かつ、連用により片頭痛が日常化してしまう方もいて、治療薬選択には注意を要するため、漢方薬を優先的に考慮してもよいと思われます。
次にb.緊張型頭痛ですが、頭をタオルで強く締め付けられたような痛みが発生します。片頭痛の強烈な痛みと比べると重い感じの痛みになります。片頭痛と比べると寝込むほどの痛みという訳ではないのですが、頭痛全体の中で一番頻度が高い、かつ、起こったり治ったりを繰り返す反復性という特徴もあるので、人によっては毎日痛いという状態に陥ってしまうことがあります。この頭痛も原因がはっきりしないものになります。
最後にc.群発性頭痛ですが、こめかみや眼の周辺に非常に強い痛みを生じるものです。比較的短時間で治まりますが、数ヵ月間痛みが繰り返されることが多く、自律神経系の症状が出ることもあります。じっと横になっていたいと感じる片頭痛と比べると、じっと耐えることができず動き回ってしまうというのも特徴です。この頭痛も原因がはっきりしません。
漢方医学ではどのように診断する?
漢方医学では、頭痛は何かのせいで体の巡りの阻害が起きて、頭へ気や血がうまく流れていない状態と考えます。
例えばその原因が冷えの場合には胃腸にも影響を与えて吐き気などを伴うことがあるので、気を補い胃腸を暖めることで、頭痛だけでなく随伴症状も改善することを目指します。
また、天気が悪くなると頭痛になるという場合には、水が偏在して水毒の状態になることで頭痛になるだけなく、随伴症状としてむくみや車酔いなどを併発することが多いです。こういう場合には水の偏りを改善すれば改善します。梅雨や台風が多く、かつ海で囲まれた島国である日本では水毒になる方が比較的多いのも特徴です。
いずれにしろ、気血水の偏りを改善し、頭にまできちんと循環させれば改善するということになります。以前の漢方の気血水のコラムでも紹介したように、気血水は連携しているため、どれかが異常になることにより各々へと悪影響を与えるものですので、トータルで診断することが重要になります。
実際に使用される漢方薬とその特徴とは?
よく使われるものとしては、I.呉茱萸湯(ゴシュユトウ)、II.桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)、III.五苓散(ゴレイサン)、IV.釣藤散(チョウトウサン)、V.葛根湯(カッコントウ)になります。
I.呉茱萸湯(ゴシュユトウ)は胃腸が弱い、吐き気がある場合に特に向いていて、片頭痛への第1選択薬として向いています。
II.桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)はのぼせや疲労感、冷えが強い場合に向いています。
III.五苓散(ゴレイサン)は天候に左右される水毒から起こる頭痛に適しています。
IV.釣藤散(チョウトウサン)は頭が重い、イライラが強い、めまいがあるなどの場合に適しています。
V.葛根湯(カッコントウ)は有名な風邪の引き始めの漢方薬ですが、実はかなり万能で頭痛でも使えます。頭全体、肩や首などにこりがある場合には特に向いています。
もちろん他にも頭痛で使われる漢方薬はたくさんあります。ぜひご自身でも勉強してみてください。
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