まだまだ寒さが残る中、冬という季節の峠もいよいよ超えて次第に春に向かってきています。そういった中で徐々に気にかかるのが花粉症です。花粉が飛び始めてきているので、目がかゆくなったり、鼻がムズムズしたりする、という方も多いのではないでしょうか。
花粉症用の薬を処方してもらうために、クリニックを受診される方も多いと思います。ですが、花粉症に使用できるOTC医薬品も、かつての処方薬が並ぶようになったことで、選択肢が増え、充実してきています。
普段患者さんに薬を勧めたり相談にのったりするにもかかわらず、薬剤師が花粉症用のOTCを理解できていないことも少なくないと思います。今回は花粉症に使用できるOTCそれぞれの特徴の違いなどを復習してみましょう。
まずは花粉症のメカニズムを振り返ってみよう!!
薬剤師であれば当然知っていることではありますが、花粉症のメカニズムについて復習しておきましょう。
まず、花粉が体内に入ってくると、鼻粘膜に存在している肥満細胞に花粉がくっつきます(一応確認ですが、肥満細胞は名前が肥満となっていますが、脂肪とは一切関係のない、免疫に関与する細胞です)。花粉に肥満細胞が反応すると、ヒスタミン等が放出されます。そしてこのアレルギー症状の原因物質であるヒスタミン等が神経や血管に作用することで、くしゃみや鼻づまりといったアレルギー症状が発生するというわけです。このアレルギー症状が発生する一連の流れの中で、ヒスタミン等の原因物質自体の放出を抑制する働きのことを「抗アレルギー作用」と呼びます。そして、ヒスタミンが神経や血管に作用するのを防ぐ働きのことを「抗ヒスタミン作用」と呼びます。普段の投薬時には何気なくこの2つの言葉を使っている方も多いと思いますが、元来はこういった作用に由来しているのです。
使い分けのポイントは、その薬を服用するタイミングです。「抗アレルギー作用」を有する薬は、花粉が飛び始めたなと感じた頃に、つまり花粉症の出始めや症状が軽いときに服用するといいでしょう。一方、「抗ヒスタミン作用」を有する薬は、すでに症状が出てしまっていて、すぐに抑えたいというときに服用します。
抗ヒスタミン薬の第1世代と第2世代の違いとは??
すでに症状が出てしまっている際に服用する抗ヒスタミン薬ですが、第1世代と第2世代に区別されています。第1世代は、昔からある抗ヒスタミン薬で症状を抑え込む力は強いですが、眠気が強く出る、という副作用があります。第2世代は、抗ヒスタミン作用だけでなく抗アレルギー作用も持っており、眠気が少ない、という薬です。
第2世代のほうが優れているようにも感じますが、症状によっては第1世代のほうが合っている場合もあります。具体的には、症状を抑え込む力は第1世代のほうが強いことが多いので、症状がひどい方にお勧めする、といったものです。一方、眠気が強く出る方には第2世代のほうが向いています。
また、第1世代と第2世代の違いだけでなく、服用のタイミングでも勧める薬は異なります。例えば、昼外出しているような生活で薬が飲みにくい人には1日2回のものを勧めたり、あまり薬自体を飲みたくない方には1日1回のものを勧めたりすると良いでしょう。その際に、1日3回のものに比べると飲む回数が少ないものほど途中で薬の効果が弱まってくる可能性があることも、きちんと説明する必要があります。
具体的な商品の特徴を見てみよう!!
何といっても市販薬の中で売れ筋のものと言えば、第2世代の「アレグラ®FX」だと思います。これは、CMで国民的アイドルメンバーがアレグラ星人という強烈なキャラで、インパクトを残していることも影響していると思いますが、そのCMで「眠くなりにくい」ことを強調していることも大きいのではないでしょうか。たしかに花粉症の薬で1日ぼーっとしてしまうという方が多いように感じるので、眠くなりにくい薬は、ニーズがあるのだと思います。しかし、「アレグラ®FX」は他のOTCと比べて眠気は少ないほうではありますが、添付文書にもあるように、睡眠障害が起きることもあり、眠くなるという方もおりますので、気を付ける必要があります。
「アレグラ®FX」が1日2回なのに対して、「クラリチン®EX」は1日1回で効果を発揮し、眠気も少ないものです。忙しくて1日に複数回薬を飲めないという方は、こちらのほうが良いでしょう。
一方、既に花粉症の症状が強く出ていて、特に鼻づまりが強い方には、第1世代の「プレコール®シリーズ」や「パブロン®シリーズ」などを勧めるとよいでしょう。ただ、眠気が強く出やすいので、服用後の運転や高所での作業などを避けることを説明する必要があります。どうしても避けられないのであれば「アレグラ®FX」や「アレジオン®」を勧めましょう。カフェイン飲料などで目を覚ますようにすることも対策としては有効です。また、1日1回の薬は夜寝る前に飲むとモーニングアタック(朝起きた直後にくしゃみや鼻水が止まらなくなる状態)を抑えることができて快適な目覚めになります。
各製品の詳細は最新の添付文書を確認してください。
他にも、もちろんたくさんの内服薬や外用薬が花粉症の薬としては存在しています。自分でもぜひ勉強してみてください。