薬剤師の業務をやっていると絶対に避けては通れない「疑義照会」。疑義照会と一言で言っても実はけっこう奥が深いのです。もっとデキる薬剤師になるべく、疑義照会の極意について学んでいきましょう。

疑義照会ってそもそもどのようなもの?

医師(歯科医師、獣医師含む)の診療後に発行される処方箋を基に、薬剤師は調剤を行います。裏を返すと、一部例外はありますが、処方箋が無ければ調剤は原則行えないのが現状のルールです。ただし、処方箋を受け取ってそのまま調剤をするのは基本的にはNGです。受け取った処方箋に対して、まずは内容に誤りがないかなどの処方監査を行います。この際に何らかの問題があれば、疑義照会を行わなければいけません。問題がある場合には、調剤を行ってはいけないのです。これは患者さん側も勘違いしやすく、よく、「なぜ処方箋通りに薬を用意するだけなのに、あんなに待たせるのか?」とおっしゃる方もいます。しかしながら、本来、この疑義照会について患者さんにもきちんと説明するなどの努力が薬剤師側でも必要です。そのためには、薬剤師側が疑義照会について正しく理解しておく必要があります。もし問題があるのにそのまま調剤してしまうと、最終的には患者さんが被害に遭う危険性が生じるからです。疑義照会は「薬局のためのリスクマネジメントシステム」である以上に、「患者さんの安全を担保するためのシステム」であることを薬剤師と患者さん双方で理解しておく必要があります。

疑義照会にも種類がある?

疑義照会には大きく分けて、「形式的」と「薬学的」があります。形式的では処方箋自体(正規の処方箋の様式かなど)の不備がないかの確認を行い、薬学的では処方内容(用法用量が適切かなど)を専門的見地から確認します。2つとももちろん大切ですが、薬剤師として本領発揮できるのは薬学的の方で、薬剤師としての経験が長くなればなるほど、この実力が身についてきます。なお、どちらの疑義紹介を行っても、きちんと薬歴に残しておかないといけません。

疑義照会はどのくらい行われている?

近年の疑義照会率としては、約3%と言われていて、形式的と薬学的の割合はおよそ1:4となります。この疑義照会率は一見少ないと思われがちですが、命に関わる業務で何らかの疑義照会が必要なものが3%という数字は決して少なくありません。そして、さまざまな新薬が登場したこともあり、薬学的の方が圧倒的に多くなります。これらのことから、近年存在意義がいろいろと議論されている調剤薬局の役割は、実はかなり大きいことが理解できます。患者さんにもこのことをきちんと伝えることで、調剤薬局の存在意義、待ち時間の理由などを理解してもらいやすくなると考えます。

疑義照会のポイントは?

疑義照会は、ただ間違いに気が付く能力だけでは不十分で、コミュニケーション能力なども必要となってきます。裏を返せば、疑義照会率が上がってくると予想されていることもあり、疑義照会を上手にできない薬剤師は今後淘汰されていく可能性が高いと言えます。疑義照会の重要なポイントをいくつかまとめてみると、

(1)医師への伝え方に注意する
(2)代替案を用意しておく
(3)患者さんへの配慮を忘れない
(4)ほかのスタッフとも情報共有する

などが挙げられます。

(1)医師側のミスであるかもしれない場合でも、決して追及するような言い方ではなく、理路整然と説明することを忘れないようにしましょう。
(2)間違いを見つけて、急いでいるからとすぐに疑義照会を行うことは避けましょう。例えば医薬品の量が間違っているならば、正しい量を調べておくこと。また、流通不足によって記載されている医薬品の在庫がない場合は、その同じ薬効の代替薬について調べておくことが重要です。
(3)医師とのやりとりに夢中になって、肝心の患者さんに何の説明もないまま待たせてしまうことは避けましょう。あくまで主役は患者さんということを今一度理解しましょう。
(4)疑義照会の際にはほかのスタッフにも内容を共有しておきましょう。異なる視点から解決策をもらえますし、今後同じような事例があった場合にはより円滑に疑義照会を行うことができます。
疑義照会という当たり前の業務ですが、薬剤師としての実力が試されるものでもあるので、今一度きちんと理解しておきましょう。

リクナビ薬剤師では働く薬剤師さんを応援しています。転職についてお悩みの方はこちらのフォームよりご相談ください。