最近一般のニュースでもよく耳にすることが多い遺伝子という言葉。
21世紀は遺伝子の時代と言われています。

国が力を入れている先進医療推進における遺伝子治療の広がりの中で、薬剤師も今後は関わってくることは必須です。
医療のプロである薬剤師としては身につけておきたい知識かと思います。

遺伝子>染色体>DNA>ゲノム

色々な言葉が乱立して使われていますのでしっかり区別しましょう。
我々の身体の細胞内で、染色体という箱の中にDNAがしまわれています。
そのDNA上に遺伝子がのっています。
そして染色体という箱はヒトだと46個あります。
この数は生物によって違ってきます。

染色体の大半はXの形をしていますが、46個のうちの最後の2個が男女で違います。
女性はXX、男性はXYです。
46個の染色体のセットをゲノムと言います。
46個の染色体セットはヒト特有のものなので、ヒトゲノムといいます。

DNA上の遺伝子部分はわずか約1%

病気のなりやすさや、薬の効き目の違いを決めていると考えられている遺伝子ですので、当然DNA上の大部分が遺伝子であると考えると思います。
多くの研究者はそう考えていましたし、実際、DNA内の遺伝子ではない部分はずっとゴミとか、ジャンクと言われてきました。

しかしながら、最近の研究で、ヒトでは、DNA上の遺伝子部分は実はわずか約1%にすぎないということがわかってきました。
実はほとんどは遺伝子ではない部分なのです。
しかもこの遺伝子ではない部分は高等生物になっていくにつれて増えていきます。
たとえば、下等生物の大腸菌ではほとんどが遺伝子部分です。
この事実により、まだ遺伝子ではない部分についてはよくわかっていませんが、ヒト足らしめているのはむしろ、遺伝子ではない部分ではないかと考えられています。

iPS細胞樹立のメカニズムは、遺伝子ではない部分が関与

医療研究では、遺伝子部分がおかしくなることにより、病気を引き起こすと考えられて研究されてきました。
しかし昨今では、遺伝子ではない部分がどのように病気に関係しているかを調べる研究が活発に行われてきています。

実は、最近話題のiPS細胞樹立のメカニズムにも、この遺伝子ではない部分が関与していることがわかっています。
遺伝子部分は生まれつきの遺伝的要因に関与しますが、遺伝子ではない部分は環境要因に関係するという風に考えている説もあります。
この説だと、ヒトの場合には遺伝的要因よりも、環境要因の方が大切なのではないかという可能性も考えられます。

遺伝子情報を得ることで病気予防や、薬の選択など幅が広がる

遺伝子検査のあり方も将来的にはかわってくるかもしれません。
遺伝子検査というのは文字通り、遺伝子部分を検査し、病気の確率を出すというものです。
最近米国某女優がこの検査を受けて、乳がん・卵巣がんになる確率が大きいと診断され、予防的に乳房切除手術うけたことが話題になりました。

今度は卵巣も切除するという話です。
それ以来、遺伝子検査をどれくらい信用すべきかという社会的議論が巻き起こっています。
今後、遺伝子ではない部分と病気の関係がよりわかってくれば、「遺伝子検査」の結果だけで一喜一憂することなく、遺伝要因に加え、環境要因も見直してみるという幅広い視点からの病気予防が導入されるかもしれません。

また、遺伝子を調べる事で、各人にあった薬を処方するというオーダーメイド医療という考え方にも影響してくると思います。
まだ先の話ですが、個々人が遺伝子の情報をたとえば腕時計みたいなものに保存して持ち歩き、病院や薬局でそれを提示し、それにあった薬を選択するという時代もきます。
そのための準備として今回のお話も頭の片隅に入れておいて頂ければと思います。