喫煙や高脂肪食などで発生する活性酸素は、がんや生活習慣病など種々の病気や老化に関わっていると考えられています。
アンチエイジングや病気予防の観点で、この活性酸素への抗酸化作用を持つポリフェノールサプリメントを積極的に取ったりする方も多いです。

今回は、このポリフェノール関連で有名となった「フレンチパラドックス(フランス人の逆説)」を紹介します。

そもそもの言葉の由来は!?

名前の由来となった事柄は、1989年にWHOが行った世界規模の冠動脈性心疾患調査プロジェクト(MONICAプロジェクト)での報告に遡ります。
フランス人は相対的に喫煙率が高く、またフォアグラやバターなどの高脂肪食を他の欧米諸国と同様、大量に取っている民族です。
特に高脂肪食に関しては、アメリカ人と同等だと考えられています。

フランス料理のフルコースを食べた後、生クリームやバターがたっぷりのデザートを最後に食べると、脂っこくて胃がもたれたことがある方もいると思います。
そのくらい高脂肪食です。
しかしながら、何故かフランス人はアメリカ人に比べて血中の高脂肪が原因の一つとも言われる、冠状動脈性心疾患に罹患する人の割合が半分近くと少ないのです。
これだけはどうしても説明ができず、多くの医師や科学者を悩ませてきた謎でした。

フランス人が愛飲していたものが寄与していた!?

1992年、ボルドー大学のセルジュ・レナウド博士は論文で、「高脂肪食をフランス人は日々取っているのに、心疾患が少ないのは毎日飲んでいる赤ワインのおかげである」ということを報告し、この逆説現象を「フレンチパラドックス」と名付けました。

フランス人には毎日赤ワインを食事と一緒に飲むという習慣があります。
もっと詳細な調査で、フランス国内で比較しても赤ワインを多く飲む地域ほど、心疾患が少ないこともわかりました。
これらのことが発表されて以来、世界中で赤ワインがブームとなりました。
さらに赤ワイン中に含まれている青紫色の天然色素で、ポリフェノールの一種であるアントシアニンがその効果の一端ではないかと考えられたことから、アントシアニンを含むブルーベリーやザクロなどもバカ売れしたそうです。

他の調査では!?

ワインにはアントシアニンの他に、レスベラトロールというポリフェノールも含まれていて、このおかげとも考えられています。
レスベラトロールは抗炎症、抗がん、認知症予防、放射線障害抑制、血糖降下などに効果があるという研究報告があります。

特に一つの機序として、サーチュインと呼ばれる長寿遺伝子を活性化することで健康に寄与するのではないかと考えられてきました。
しかしながら、近年サーチュインが長寿遺伝子であること自体を否定する論文もあり、詳細な健康への寄与のメカニズムは依然として不明のままです。

また、日本人が長寿命で欧米諸国から比べると心疾患なども少ないことは世界的に周知の事実ですが、魚や納豆に加え、ポリフェノールの一種であるカテキンを含んだお茶を毎日のように飲んでいることがその一助だと考えられています。
詳細なメカニズムの理解には更なる研究が必要ではあるものの、ポリフェノールが健康に良いことは事実のようです。
ポリフェノールの効果について患者さんに聞かれた際に、この「フレンチパラドックス」の話をすると喜ばれるかもしれませんね。
是非覚えておいてください。