薬剤師としてスキルを磨いていくうえで、薬の知識や患者さんとのコミュニケーションなど、基本的技能の向上が大切であるのは言うまでもありません。しかしながら、基礎的なことにもかかわらず、盲点であるのが、調剤報酬点数の理解です。調剤報酬は薬剤師自身の給料にも関わるものですので、実務的にも重要です。今回は調剤報酬点数のポイントを、実際に患者さんへ説明できるように確認してみましょう。
*注意:2016年の診療報酬改定に沿った内容です。

薬局への患者さんの目が厳しくなってきた?!

近年の診療報酬改定や、最近の薬局にまつわる不祥事のニュースなどの影響で、「同じ薬なのになぜ他の薬局と値段が違うの?」とか、「ジェネリックに変更すると安くなる薬だと説明されたのに、何で安くならないの?」などといった質問をしてこられる患者さんも増えてきました。インターネットやスマートフォンの発達もそれを後押ししており、患者さんの薬剤師への目が厳しくなってきています。こういった質問に対して、「国が決めたルールです」、「法律で決まっていることなのでそういうものです」などと答えてしまいがちです。しかし、きちんと説明できないと、納得できなかったり、不正に儲けていると疑ってしまったりする患者さんも出てくるでしょう。逆に言うと、薬剤師への目が厳しい今だからこそ、まさに「ピンチはチャンス」で、きちんと対応できれば「さすが薬のプロだな」という評価を得ることができます。
説明する際は、患者さんは薬価の合計額=自分が薬局で払っている金額だと思っている方が多いので、このことを念頭に入れて、明細書を一緒に確認しながら話してみましょう。

複雑な計算の中でのポイントとは??

調剤報酬は、計算がややこしいことと、改定の度にコロコロとその計算方法や点数が変わるので、複雑なのは確かです。ここでは、各調剤報酬の項目の概要と、患者さんに納得してもらうための説明のコツを紹介したいと思います。
まず薬剤師であればご存じのように、明細は、(1)調剤技術料、(2)薬学管理料、(3)薬剤料、(4)特定保険医療材料の4つの項目から主に成り立っています。それぞれみていきましょう。

(1)調剤技術料

まず、調剤技術料の「調剤基本料」に関しては、処方せんの受付回数や、特定の医療機関に係る処方せんの受付回数の割合(集中率)といった、薬局の特徴によって点数が変わってきます。また、在宅業務の実施など国が定める更なる条件を満たす場合に、これに加えて「基準調剤加算」を、そしてジェネリックへの変更度合によって「後発医薬品調剤体制加算」を取得することができます。これらが薬局よって金額が変わってくる部分です。調剤技術料において、どの薬局でも同じである可能性があるのは「調剤料」です。同じ薬で、粉砕などの同じ作業した場合のみ、どの薬局においても同一点数となります。

(2)薬学管理料

薬学管理料は、おくすり手帳や、かかりつけ薬剤師、在宅業務などによって金額が変わってくる項目です。ここでは、患者さんに質問されることが多い、おくすり手帳に関する可算について、確認します。
おくすり手帳に関する可算は「薬剤服用歴管理指導料」に含まれ、点数の変化は、大きく下記3つの場合に分けられます。

  • 1. 原則6月以内に処方せんを持参した患者に対して行った場合 38点
  • 2. 1の患者以外の患者に対して行った場合 50点
  • 3. 特別養護老人ホーム入所者に対して行った場合 38点

※詳しくは、厚生労働省 「平成28年度診療報酬改定について」診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示)を確認してください
ポイントは、6ヵ月以内に再度来局した患者さんに対しての点数が低くなっていることです。ここは案外わかりやすい部分なので、きちんと可算される条件を説明できるようにしましょう。

(3)薬剤料

調剤報酬において、わからなくなりがちな項目が薬剤料です。薬剤料とは、簡単に説明すると、国が定める薬自体の値段の合計額です。注意点はここでの計算方式が、「小数点以下は五拾五入方式」を採用していることです。5以下は切り捨てますが、5を少しでも超えると繰り上げて計算します。例えば、処方された薬価の合計額が先発品の場合には100円で、ジェネリックに変えたら95.1円と計算できたとします。これを点数にすると、前者が10点、後者が9.51点となり当然後者の方が点数は低くなります。ここで「小数点以下は五拾五入方式」を採用し、両者とも薬剤料という点でみたら10点と同じになります。先発品とジェネリックとの差額が小さいときにはジェネリックに変えても同じ点数になり、結果として負担額が同じになることがあるのは、ここが影響していることが多いです。ですので、患者さんにもジェネリックに変えて安くならないのは、このような計算方式が採用されていることを伝えてみてください。

(4)特定保険医療材料

特定保険医療材料は、材料価格が機能別分類に従って設定され、技術料とは別に評価されているもののことです。具体的には、インスリンの自己注射などが該当します。
参考)厚生労働省 特定保険医療材料制度の概要

そして、これら(1)~(4)の各点数のすべてを合計した最終的な総点数に10をかけて算出したものが実際の患者さんの窓口負担額(円)になります(3割ならここで0.3をさらにかけます)。(3)の時の計算方法とは違い、ここでの計算では「小数点以下は四捨五入方式」です。

近年はパソコンのソフトも発達し、点数から領収金額までを自動で計算してくれるようになりました。また、点数については事務の方にお任せしていて、調剤報酬についてよくわからないという薬剤師も多いのではないでしょうか。
これを機に患者さんからおくすり手帳やジェネリックに関する質問を受けても、説明できるようになってくださいね。