セクシャルハラスメント、パワーハラスメントなどさまざまなハラスメントがある中、最近になってカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が特に注目されるようになってきました。薬剤師にとっても身近な話題です。今回はカスハラについて考えてみましょう。

そもそもカスハラってどんなもの?

カスハラと聞いてもちょっとばかり分かりにくい面もありますが、定義としては、「カスタマー(顧客や取引先)が、商品やサービスに対して、社会通念上不当な手段や要求にて、従業員に精神的・身体的苦痛を与える行為」というものになります。

具体的には、暴行、土下座の要求などの身体的攻撃、脅迫、暴言、人格否定などの精神的攻撃、同じクレームを延々と繰り返すなどの執拗な行為、法外な賠償金請求などの不当要求、口コミで過度の誹謗中傷を行うなどのSNSでの悪評・拡散などになります。

カスハラが分かりにくい理由の一つとして、いわゆるクレームとの違いが分からないということがあると思います。クレームは正当なお客様からの声のことで、もっと言うなら、不当な要求などが目的であったり、手段として社会通念上不相当であるクレームをカスハラと表現すると理解しておくと良いでしょう。ただし、やはり線引きが難しいというのが未だに問題としては残っています。

線引きの難しさへの対処に国が動いた!

カスハラ対策に関しては、ついに法令で義務化されることが決まりました。2026年10月1日より、中小企業含めた全ての企業(1人でも従業員がいれば対象となる)に対して、カスハラ対策が義務化されることになっています。

具体的には、カスハラ対応マニュアルの策定と周知(何が過度な要求にあたるかの基準を定めるなど)、相談窓口の設置と適切な対応体制の整備(組織内にだけでなく必要なときには警察や弁護士と連携できる体制の構築など)、被害者へのケア(メンタルヘルスケアなど)、再発防止のための教育や研修(ロールプレイングを取り入れた研修など)になります。録音や録画などで記録をきちんと取っておくことも必要です。ちなみに、義務で決まっている事柄に違反した場合には、厚生労働省による報告要求、指導、助言、勧告、公表の対象となります。

なお、余談ですが、就職活動中の学生に対するセクシャルハラスメントの防止に関しても同時に義務化されます。以前より、人事の偉い人が内定をエサに、就活生にわいせつ行為を行ったなどの話も存在していましたので良いことと感じます。カスハラを問題視するのであれば、企業自身も気を付けることがあるということです。人事に関わる薬剤師の方は特に気を付けるべき点と言えます。

現場がやるべき事は?

現場レベルでやるべき事を日ごろから確認しておくと良いでしょう。複数人で対応する、証拠の記録、物理的遮断、毅然とした態度などが挙げられるでしょう。よくひたすら謝罪する、その方の態度が軟化するまでずっと我慢強くひたすら聞いているという状況を見聞きしますが、これは対応としては不適切になります。

自分の身を守るためにも、謝りすぎずに、理不尽な場合には法的根拠などを説明しながら対応できない旨を伝えたり、身の危険を感じたらその場を離れて、警察への通報も躊躇なく行うということも必要です。

カスハラ対策を難しくする薬局の特性とは?

薬局には処方箋の応需義務があります。これは処方箋を持ってきた患者さんの受け入れを原則拒否できないというものです。加えて、病気の患者さんがいらっしゃる場所でもあるので、ホスピタリティを意識するとついつい毅然とした態度が取れないという側面や、人手不足から一人で対応する時間もあったり、大手チェーンだと決断系統が本社にあり、現場レベルでは対応しにくいという側面なども持っています。このため、カスハラと認定することに躊躇してしまうことが少なくないようです。

しかしながら、当然薬局も企業である以上は、カスハラ対策は義務です。処方箋の応需義務はあるものの、それは正当な事由なく拒否できないということであり、暴力や脅迫などの正当な事由に該当する行為があれば例外的に拒否や中断ができることと理解はされてきています。

現在日本薬剤師会から厚生労働省に対して、調剤行為の拒否の基準の明確化の議論もされているようなので、いずれはっきりとした法的解釈が明記される日が来るものと思います。日本薬剤師会の方でカスハラに関するポスターも作られているのでそれを薬局に貼るのも効果的と思います。

ぜひカスハラ対策に関してきちんと対処できる医療機関が増えてくることを願います。

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