コロナ禍が続く中、ついにワクチンが登場し、ワクチン接種が世界的に進むことで少しだけ明るい未来が見えてきたと感じられます。日本においても医療従事者や高齢者への接種が始まっています。いま一度新型コロナウイルスワクチンに関してご紹介します。

新型コロナウイルスの特徴とは?

新型コロナウイルスは正式にはSARS-CoV-2と呼ばれ、複数存在するコロナウイルス科の中でベータコロナウイルス属の一種になります。以前にパンデミックを起こしたSARSのコロナウイルス(SARS-CoV)やMERSのコロナウイルス(MERS-CoV)もベータコロナウイルス属に含まれ、いわば兄弟ウイルスになります。

ウイルスの構造としては、エンベロープと呼ばれる脂質二重膜にスパイクタンパク質(S)、エンベロープタンパク質(E)、インテクラルメンブレンタンパク質(M)が結合し、カプセルのような構造の中にウイルスの設計図(ゲノム)となるRNAと、ヌクレオカプシドタンパク質(N)が結合した複合体が含有されています。大概の生物は設計図としてDNAを持っていますが、新型コロナウイルスはRNAをゲノムとして持ち、RNAウイルスと呼ばれています。

ウイルスが感染するメカニズムとは?

新型コロナウイルスは他のウイルスと同様、自身で増殖はできず、宿主に寄生し、その宿主の生理機構を利用することで増殖します。

前述したスパイクタンパク質を利用して宿主内の細胞に侵入し、自分の成分を宿主の細胞内へ入れて、自分の設計図をもとに様々なタンパク質を作ります。さらに自分の遺伝情報が入っているRNAをコピーします。作ったタンパク質とコピーしたRNAによって新しいウイルス粒子を組み立てて、細胞外へと出て行きます。この繰り返しによって宿主内で増殖拡大しているのです。

宿主内の免疫もただウイルスの増殖拡大を黙ってみているわけではありません。免疫機構が増殖拡大を抑えようと動きます。

ヒトのような高等生物の場合、免疫系には一時的に働く自然免疫と、敵を記憶して再度の侵入に備える獲得免疫があります。ワクチンはこのうち獲得免疫を利用するものですが、この獲得免疫の主役となるものが抗体になります。

新型コロナワクチンの場合には、ウイルスが宿主細胞内に侵入する際に使うスパイクタンパク質に対する抗体を作り出すことで、スパイクタンパク質が宿主細胞に侵入するのを防ぐことができ、結果として増殖拡大を抑制できるという効果を期待できます。

新型コロナウイルスワクチンは新しい種類のワクチン?

今回、いくつかのワクチンが開発されていますが、その中でも現段階で日本においてメインとなるファイザー社のワクチンについてみていきます。医療関係者の中にはすでに接種が終了している方もいらっしゃることと思います。

新型コロナウイルスワクチンは、これまで使われてきたワクチンとは異なるメカニズムで働くmRNAワクチンになります。新型コロナウイルスの設計図であるmRNA自体を合成し、これを体内に投与することで、体内でコロナウイルスのスパイクタンパク質が合成され、この抗体が作られることで、本物の新型コロナウイルスが侵入してきた際に増殖抑制効果を発揮するというメカニズムになります。

新型コロナウイルスワクチン接種の注意点

薬剤師がワクチンの注射剤の準備業務に従事することもあるため、薬剤師実務レベルで抑えておくべきことをまとめます。

まず、ファイザー社のワクチンは第3相臨床試験の段階で発症予防率が95%で重症化予防効果も明白に示されたことに加えて、安全性も問題ないことがわかっています。

ただし注意事項もあります。
このmRNAは壊れやすいものになりますので注射剤業務の際に激しく攪拌するとmRNAが壊れて効果がなくなってしまうので注意が必要です。また、体温で温めても壊れてしまうリスクがあるので無駄に熱を加えるようなことは避ける必要があります。加えて、ワクチンを打ち終わったあと、その患部を強く揉んでしまうと、この場合にもmRNAが壊れてしまう可能性があるので患部をあまり触らないことが重要です。

そして、今回のワクチンは基本2回接種ですが、2回目接種後の発熱や倦怠感などが比較的多いようなので副反応にも注意しておきましょう。

また、PCR検査はウイルスゲノムの特定の配列を検出するため、ワクチンが効いたとしてもPCR検査で表面にいる細胞内に侵入する前のウイルスや抗体によって増殖拡大が抑えられた状態のウイルスも検出してしまいます。薬剤師としてもこういった注意点を把握しておきましょう。

最後に、よくウイルスは変異するため、ワクチンの効果がなくなってしまうと心配する方も多いでしょうが、設計図を投与するmRNAワクチンの場合には、いくつかの変異にも効果を発揮することが多いです。
ただウイルス変異は大変はやく、今後はどんどん情報が更新されていくものと思います。今後も情報を注視し、また別のコラムにて今後出てくるであろう新型コロナワクチンに関しても紹介できればと思います。
ぜひご自身でも勉強してみてください。

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