糖尿病患者とその予備軍は我が国においてとても多く、問題になっています。糖尿病は、放置すると失明などの合併症を発症するため、決して楽観視できないものです。糖尿病にはご存知のように1型と2型がありますが、今回は患者数の多い2型糖尿病の治療薬で、中でも独特のメカニズムを持つDPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬についてお伝えします。

そもそも糖尿病治療薬のメカニズムとは?!

薬剤師であれば周知のことですが、糖尿病の治療としては、要するに「血糖値を下げること」が目標です。糖尿病自体よりかは、糖尿病によって血糖値が高い状態が続くことで、様々な不具合が身体に生じることのほうが問題と考えられます。
現在、経口薬の種類は多岐に渡り、糖尿病の病態管理や治療もより効率的にできるようになってきています。かつては以下のような作用機序の経口薬が中心でした。

  • インスリン感受性を上げる薬(チアゾリジン薬)
  • インスリン分泌を促進する薬(SU薬・グリニド薬)
  • 肝臓での糖新生を抑制する薬(ビグアナイド薬)
  • 糖の吸収を遅延させる薬(α-グルコシダーゼ阻害薬)

近年になって登場したDDP-4阻害薬やSGLT2阻害薬は、これらとは一線を画す薬として、多くの患者さんに処方されています。糖尿病治療薬でよく問題になるのは、血糖値が下がりすぎる低血糖症状です。服薬指導時にこの説明をして、低血糖時にはブドウ糖をとるようにと指導することも多いと思います。今回紹介する2つの薬はこの低血糖が起こりにくい薬として重宝されています
では、それぞれいったいどのような特徴があるのでしょうか?

最も多く処方されているDPP-4阻害薬の特徴

DPP-4阻害薬(グラクティブ®錠・ジャヌビア®錠など)は、発売当初は糖尿病の専門医を中心として慎重に処方されていましたが、現在では最も多く処方されている糖尿病治療薬です。
インスリンは、食物が流入することによる刺激により消化管からインクレチンというホルモンが分泌され、このホルモンによって分泌が促進されます。普段、このインクレチンは分解酵素によって短時間で分解されます。この分解酵素がDPP-4であり、これを阻害するものがDPP-4阻害薬です。この機序によってインクレチン分解が抑えられ、結果としてインスリン分泌が促進されます。
この機構が素晴らしい点は、血糖値が下がるとインクレチンによるインスリン分泌が停止するので、いわゆる薬の効きすぎが起こりにくいことです。そのため、DPP-4阻害薬では血糖が下がりすぎることが少なく、低血糖が起こりにくいのです。

尿中にブドウ糖を多く排出させる?!独特な機序のSGLT2阻害薬の特徴

SGLT2阻害薬は、我が国で初めて販売されたのは2014年と、比較的新しい糖尿病治療薬です。具体的な商品名としては、スーグラ®錠、フォシーガ®錠、デベルザ®錠、カナグル®錠などがあげられます。
健康者では、SGLT2と呼ばれるたんぱく質の働きにより、尿中のブドウ糖が血中へほとんどが再吸収されて尿中にはでてきません。しかし、高血糖状態になると、SGLT2の再吸収能力を超えた分のブドウ糖が尿糖として排出されます。この尿に糖が混ざるという現象は、糖尿病の名前の由来にもなっている現象なので、本来はネガティブな現象です。しかしながら、裏を返すと、尿中にブドウ糖を多く排出できれば血糖値は下がることになります。これに着目して、SGLT2の働きを阻害することで、あえて尿中にブドウ糖をたくさん排出することを目的に作られたのがSGLT2阻害薬です。本来ネガティブなものとして考えられた現象を、治療へと活かしたという点で画期的だと言えます。
この薬は腎臓に作用し、膵臓のβ細胞や肝臓へ作用しないので、ほかの薬と併用しやすい点も大きなメリットです。ただし、もちろん副作用の危険性はゼロではないので、特に他の糖尿病薬と併用する際には副作用モニタリングをきちんと薬剤師でも行うことは必須です。

糖尿病の薬は種類が多く混同している方も多いので、ぜひ作用機序も含めて覚えておいてください。