コロナ禍で、多くの場で飲み会がなくなり、お酒をみんなで飲む機会は減ったかと思います。気分転換の場所でもあった飲み会ですが、このような状況で、お酒の持つ力が偉大だと感じた方も少なくないでしょう。今回はお酒が持ついい面と悪い面の二面性について考えたいと思います。

お酒って元々は薬だった?

お酒は太古の昔から色々な場面で飲まれてきました。これまでの歴史の中で、人々が集まる祭りや祝い事の場面では必ずと言っていいほどお酒がありました。人にとってのお酒の存在は昔から変わらないと言えます。そんな、人との間に長い歴史のあるお酒ですが、実は元々薬としての面も兼ね備えていました。特に仏教の世界においてお酒は薬として珍重されていたのです。

仏教の世界では、五戒という修行僧が守るべき基本的な決まりがあります。しかし仏教は宗教というよりも、人生をより良くいきるための哲学的な側面の方が強いため、より良く生きるために決まりがあると考えます。加えて、お釈迦さん自体が「苦行では悟りは得られない」としているように、無駄に苦しむことは避ける傾向にあります。
日本における仏教の修行場は山が多く、冬は吹雪の中でとても過酷な寒い環境になります。そのような厳しい環境なので、五戒の中に不飲酒戒(ふおんじゅかい)というお酒を飲んではならないという決まりがあるのですが、仏教の考え方に基づき塩をつまみに少量のお酒を飲んで身体を温めることで修行をきちんと完遂できる場合には飲酒が許されてきました。また、お酒は般若湯(はんにゃとう)という名前で、薬の一つとしてもずっと大切にされてきたのです。

漢方薬の服薬方法としてお酒が利用されることも?

漢方薬には身体を温めたり、血液の循環を良くしたりするものが多いですが、そんな漢方薬の中にも少量のお酒(清酒程度のアルコール濃度のもの)と一緒に服用した方が、効き目が強く発揮される場合があります。

例えば、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)や当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)など、元々生薬末そのものが配合されているものは、お酒のアルコールによって生薬内の脂溶性成分を溶かしながら飲んだ方が成分の吸収率が上がり、加えて、胃腸のもたれも防ぐことができると考えられています。

実際に、時代劇などで漢方薬をお酒で飲む場面が度々登場するのは、こういった背景があるためです。また、薬酒も昔からたくさんありますが、これも薬草はお酒と一緒に取った方が効果的という昔の人の知恵から出来たものと言えます。

お酒のメリットとは?

少量の飲酒によってはいくつかの効果が確認されています。具体例は次の通りです。

(1)食欲増進
お酒によって胃液分泌が盛んになり、消化が促進されて食欲が増すというメカニズムです。
(2)血行促進
お酒によって血管が拡張されて血行が良くなり、その結果体が温まったり、疲労が回復したりします。
(3)ストレス緩和
お酒によって精神的な緊張がほぐれ、ストレス緩和につながります。

また、健康への直接的影響ではないですが、お酒によって(1)、(2)、(3)の効果が発揮されることで、コミュニケーションが円滑になり、人間関係が円滑になることにつながる可能性もあります。いわゆる、「飲みニケーション」と呼ばれるのはこういったお酒の効果に起因します。

お酒にはもちろんデメリットも!

お酒がいくら薬の側面があると言ってももちろん飲み過ぎは健康への悪影響を及ぼします。具体的には、急性アルコール中毒(嘔吐や呼吸困難など)、さらに長期飲酒によって引き起こされる、臓器障害(がんを含めた様々な障害)やアルコール依存症などがあります。いうまでもなく、遺伝的に飲酒できない下戸の方やアルコールアレルギーの方は、飲酒自体にリスクしかないので避けた方が良いです。このような体質の方々は、お酒を飲むのはもちろんですが、アルコール消毒などでも健康被害が出ることもあるので注意が必要です。

お酒と人との関係はかなり長い歴史を持ちますが、近年の研究において、飲酒に関しては少量であっても健康にとってリスクとなる可能性があるという結果が出ているものもあるので、まだまだお酒と健康に関しては未知の部分があるもの確かです。そのため、引き続き各々が無理のない程度に付き合っていくのがベストでしょう。なお、最近では、お酒無しでも楽しく食事会をしようという「ゲコノミクス」と呼ばれる動きも出て来ていますので、将来的には、タバコだけでなく、お酒に関しても控えることがトレンドになる時代が来るかもしれません。これからもお酒とは上手に付き合っていけるとよいですね。ぜひ覚えておいてください。

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