早いもので、今度の3月11日に東日本大震災から8年目を迎えます。この震災は日本人であれば絶対に忘れてはいけない記憶の一つになりました。この震災後にも現在に至るまで、震災だけではなく、大雪による雪崩や台風による土砂崩れ、火山噴火による火山灰被害など大変多くの災害に見舞われてきました。
災害大国日本において、薬剤師はいつでも災害医療に関われるように準備しておく必要があるでしょう。以前も震災についてのコラムを書きましたが、今回久しぶりに災害時の薬剤師の役割について考え直してみましょう。

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被災地の現状とは?

現在では復興がかなり進んでおり、他の地域に避難していた方々も徐々に戻ってきています。ただ、未曽有の大震災かつ大きな原発事故を伴ったために、至るところで爪痕が残されています。原発事故による汚染がまだ残っている地域は、人が住めないのはもちろん、除染活動を行う作業員の方々、巡回する警察官や消防士や警備員などの出入りがあります。

住民が戻りつつある地域でも、インフラが完璧に整っていない場所もあり、クリニックや病院、薬局などはまだまだ少ないというのが現状です。そして、被災地では医療系人材がより不足している傾向にあり、薬剤師も例外ではありません。震災当時はボランティア活動などで多くの薬剤師が全国から集まっていましたが、現在ではその大部分が被災地には残っていません。

高齢者ケアに課題

筆者は震災以降、たびたび被災地を訪れ、最近でも環境省の国家プロジェクトのメンバーの一人として、色々な医療系業種、研究者らと共に被災地へ頻繁に訪れ、健康調査や支援活動を行っています。震災から時間が経つにつれ、被災地で求められる内容には大きな変化が生じてきているように感じます。

戻ってくる住民の多くは高齢者で、何かしらの健康問題を抱えていることが多いです。医療施設や医療系人材が不足している中で、健康を害する事態になった場合、大変なことになることは想像にたやすいものと思います。自身の健康や薬のことで不安を感じても相談相手がいないことも多いでしょう。インターネットが発達し、薬のことも簡単に調べられるとは言うものの、高齢者だけで行うのは慣れていない作業であること、さらに個々人の症状に合わせた相談は、人間でないと難しいのではないでしょうか。

いま、薬剤師だからできることとは

被災地で医療系人材の不足が続く中、薬剤師として一助になりたいと考えていても、具体的には何ができるのか、何をしていいのかわからないという声も少なくありません。

被災地では娯楽が少なく、気分が滅入り、精神的・肉体的に病んでしまう方もいらっしゃいます。休みの日は部屋にこもりがちな方も多く、肥満やそれに伴う糖尿病などの生活習慣病も増えています。生活習慣病はがんにつながる傾向にあるので、将来的ながんが心配されます。

生活習慣病の増加に伴い、薬やサプリメントを飲んでいる方が多くいらっしゃいます。また、住民だけでなく、作業員や警備員の方々も服薬している方も少なくありません。服用する薬の種類は抗不安薬や生活習慣病の薬などの比較的ハイリスクなものになります。また、西洋薬が嫌いで、自分の判断で漢方薬を好んで飲んでいる方々もいます。しかし、正しく選択できていない、また正しい方法で服用できていない方も多いのです。こういった状況にも関わらず、医療系人材が不足しているので気軽に相談もできない。被災地に出入りしているとこうした現状が現実としてあると感じます。

薬のプロである薬剤師が主体となって、漢方薬教室や薬膳教室などのイベントをすることが、被災地では大きな意味を持ちます。健康相談の意味もありますが、娯楽を提供できる、人と人とが接する場にもなる、かつ、身体を動かし気分転換の場にもなるなど、多くの利点があります。切望している方々からの反響も大きいので、薬剤師側も薬剤師としてのやりがいを感じられると思います。筆者も被災地で定期的に行っていますが、ぜひこういった活動をする薬剤師が1人でも多く増えてくれることを期待します。特にベテランの薬剤師さんであれば多くの薬や疾患に触れており、様々な知見や知識が蓄積しているものと思います。ぜひ被災地で活かすことを考えてみてください。

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