実は誤解だらけだった!?ドラッグストア薬剤師のリアルなお仕事解説
現在、転職を考えている薬剤師のみなさん。「年収は良さそうだけど、お休みがとりにくそう」といった理由で、転職先の候補からドラッグストアを除外したりしていませんか?
今回リクナビ薬剤師では、ドラッグストアで働いている人を含む薬剤師940人に対してアンケートを実施。現役のドラッグストア勤務薬剤師の本音を聞きました。
1ドラッグストアは高年収ってホント?
そんなイメージを持つ薬剤師は多いのではないでしょうか。リクナビ薬剤師がアンケートを実施したところ、ドラッグストアで働いている薬剤師の、およそ3割が「ドラッグストアは高年収」というイメージを持っていることがわかりました。
では現実はどうなのでしょうか。ドラッグストア勤務の薬剤師は、全国の薬剤師の平均年収と比べて高年収だと言えるのかどうかを見てみましょう。
厚生労働省が実施した平成27年賃金構造基本統計調査によると、薬剤師の平均年収は男性で587.4万円、女性で502.4万円となっています。
それに対し、リクナビ薬剤師の調査によるドラッグストア勤務の正社員薬剤師の平均年収は、調剤併設の場合、男性で68万円、女性で37万円も高い結果となりました。OTCのみの場合でも、男性で5万円、女性で48万円高いことがわかりました。
ドラッグストアで働く薬剤師は、多くの薬剤師がイメージしている通り、確かに高年収であることが明らかになりました。
ドラッグストアは給与に恵まれており、高年収という背景があるためか、ドラッグストア勤務薬剤師に対して「給与に対する満足度」をきくと、調剤併設では約67%、OTCのみでは約45%の方が現在の給与に満足しているという結果が得られました。
一方ほかの業種に従事する薬剤師に給与の満足度をきくと、現在の給与に満足していると回答した割合は、病院薬剤師では約43%、調剤薬局薬剤師では約62%という結果が得られました。
以上の結果から、病院との比較では、調剤併設ドラッグストア、OTCのみのドラッグストアともに満足度が上回っており、調剤薬局との比較では、OTCでは満足度が下回っていたものの、調剤併設は同等であることが分かりました。
キャリアアドバイザーからのコメント
- Q.どうしてドラッグストアは高年収なの?
- A.採用に力を入れていること、経営が安定していること、勤務時間の関係が理由としてあげられます。
ドラッグストアは、M&Aや多店舗展開を加速させているため、慢性的な人手不足もあり、採用にとても力を入れています。そのため、給与水準が高くなる傾向にあります。例えば、新卒の初任給でも年収が500万円(賞与含む)を超える企業もあるほどです。中途採用では、経験・年齢によりますが、600~650万円からスタートしたら、5年目で年収700万円前後になることもあります。
ドラッグストアの大手になると、24時間365日営業の店舗がほとんどです。そのため、22時過ぎのシフトや祝祭日・年末年始などにも勤務に入る必要がでてきます。このような勤務時間を加味していることも、高年収となる理由となっています。しかしながら、最近では、大手を中心として、新卒採用での充足が増えてきており、シフトの融通は聞き入れてもらいやすくなっているようです。
ドラッグストアは、調剤だけでなく、OTCも扱うため、調剤だけに比べて利益率が高くなっています。また、OTCや日用品まで幅広く販売しているので、全体として診療報酬改定の影響を受けづらいのも経営が安定する要因となっています。
2ドラッグストアは休みづらくて忙しい?
ドラッグストアは土日祝日も営業している店舗が多いので、そうイメージするする人は少なくないと思います。
ドラッグストア以外で勤務している薬剤師のおよそ2人に1人が「ドラッグストアは休みない」とイメージしていることが分かりました。
一方、自分たちの職場の休みづらさに関してはどのように思っているのでしょうか。
職場ごとに「年間の休暇」についても答えてもらいました。下記のグラフになりますが、病院勤務の薬剤師がもっとも「年間の休暇が少ない」と思っています。次いで、調剤薬局勤務の薬剤師です。比較して、ドラッグストア勤務の薬剤師は、「年間の休暇は多い」ほうだと思っているようです。
つまり、ドラッグストアは、他業種の薬剤師が思っているほど、忙しくて休みづらい職場ではなく、休みをとりやすい環境をもつ職場であると言えそうです。
キャリアアドバイザーからのコメント
- Q.どうしてドラッグストアはお休みがとりやすいの?
- A.人員が豊富であることと、社内規定としてお休みを取得しやすい制度が整っていることが理由としてあげられます。
ドラッグストアでは新卒採用に力を入れた結果、人材が豊富となり、シフトの融通がきく体制になってきています。
また、人材が豊富になった結果として、1人薬剤師率が減少し、2人体制のドラッグストアが増えてきたため、急なお休みにも対応しやすくなっているのです。
そして、休みを取得しやすい制度を社内規定として整えたことも大きいです。例えば、お子さんが3歳になるまで育児休暇が取得できたり、小学校の高学年まで時短勤務を利用できたりする企業もあります。会社によっては、育児休暇の取得率が90%を超えるなど、希望する方がしっかり取得できる環境も整っています。
3ドラッグストアは、調剤以外の業務が多そう…
ドラッグストアは、OTC医薬品の種類が豊富なうえに日用品も取り扱っているので、その管理や販売に関わる業務が多いといったイメージを抱く薬剤師は多いようです。リクナビ薬剤師が行ったアンケートによると、ドラッグストア以外で勤務する薬剤師さんの70%以上が「雑務が多そう」と回答しました。
それでは、ドラッグストア勤務薬剤師が、調剤以外の業務にどのくらい関与しているのかを見てみましょう。
やはり、ドラッグストアでは、調剤以外のさまざまな業務にも薬剤師が大きく関与していることが分かります。
ただし、このことをネガティブにとらえている薬剤師ばかりではないようです。接客やポップの作成など販促業務に関わることで、薬剤師業務から店舗運営へ興味を広げ、キャリアップをしていく道もあります。
キャリアアドバイザーからのコメント
- Q.調剤以外の業務が多いの?
- A.各社によって薬剤師の働き方が違うので、就業前によく調べた方がよいです。
ドラッグストアにおける品出しなどは、必ずしも薬剤師の日常業務に組み込まれているわけではなく、会社の方針によります。ご自分の希望する業務内容、今後のキャリアを考えて、会社の方針とよくすり合わせたうえで就業先を選べば、「雑務」にとらわれることはありません。
ドラッグストア勤務を希望しており、かつ調剤に専念したいのであれば「調剤専門」スタッフとして就業するという選択肢もあるので、ご自身の希望をキャリアアドバイザーにご相談ください。接客やポップの作成など、業務を負担に感じる薬剤師さんがいる一方で、ポップ作りが楽しくやりがいを感じるとおっしゃる方もいます。なかには本社のプライベートブランドの開発に関わる機会に恵まれ、活き活きとドラッグストアで活躍している薬剤師さんもいらっしゃいます。
4ドラッグストア勤務のメリット・デメリット
ドラッグストアへの転職を考えている薬剤師が最も知りたいこと、それは実際に現場で働いている薬剤師の声ではないでしょうか。そこで、ドラッグストア勤務薬剤師に、ドラッグストア勤務のメリットとデメリットについて聞いてみました。
ドラッグストア勤務でよかった!
●勉強になる
- ・想像より処方箋が来る。処方元が多岐に渡るので勉強になる。(30代 女性 調剤併設)
- ・色々な科の処方箋を受け付けるので知識が深まるし、患者の年齢層も広いので刺激があります。(30代 女性 調剤併設)
- ・OTCについても触れられるので勉強になる。自分ですすめた薬が効果あると認められた時やりがいある。(60代 女性 調剤併設)
●人間関係がいい
- ・若い人が多く、元気がある。(50代 男性 調剤併設)
- ・売り場の職員とも交流があり、閉塞的な人間関係にならないこと。(40代 女性 調剤併設)
- ・人間関係良好でみんなで譲り合って希望日は休ませてもらって、趣味も頑張る事ができます。 (50代 女性 調剤併設)
●セルフメディケーションに貢献できる
- ・病院に行く時間の無い方にも、OTCで対応できる薬をおすすめできて、少しでも力になれること。定時薬を知っている患者さんへ、OTCの相談も受けていて、その患者さんの健康を支えている実感がある。(30代 女性 調剤併設)
- ・調剤薬局では処方薬の服薬指導が主となりますが、ドラッグストアでは、お客様の症状や要望を聞き取りながら、お客様に合ったお薬を自分で提案できるので楽しい。一度接客すると、また来ていただいたり、別のお客様を紹介してくださったりすることもあり、やりがいがある。(40代 女性 OTCのみ)
●患者さんとの距離が近い
- ・お客様との距離が近く、ちょっとした悩みも相談してもらえる。私を頼ってご来店してくれる。(20代 女性 OTCのみ)
- ・お客様に喜ばれてまた来てもらえた時は素直に嬉しい。 病院へ行くよりも時間短縮出来て、なおかつ費用も安くて喜ばれる。(50代 女性 調剤併設)
●その他
- ・1部上場企業なので給与体制や福利厚生が抜群にいい。年間50万以上も退職金積み立てがある。(50代 女性 OTCのみ)
- ・調剤の待ち時間に買い物をしてもらえるため、プレッシャーが少ない。(40代 女性 調剤併設)
- ・平日の連休が取れると、人混み知らずのノンビリとした旅行ができる。 職場が狭苦しくない。 シフト制だと嫌いな人とも意外と会わずに済む。(30代 男性 調剤併設)
- ・社員割引がある(40代 女性 調剤併設)
処方箋も多岐にわたり、加えてOTCの相談もあり、幅広い知識が要求される職場です。病院の門前とは違って、患者さんの生活の場に存在するからこその薬剤師としての役割があります。
また、調剤室での狭い人間関係に悩む薬剤師も多いかと思います。ドラッグストアは、店舗全体で幅広い年齢の人が働いており、開放的な人間関係を築けますし、シフトの融通がきき易い店舗も多いようです。
ドラッグストア勤務のここが大変!
●OTCのフォローまで回らない
- ・勉強する機会が少ない
- ・調剤業務が忙しすぎる店舗では、OTCのフォローまで手が回らないこともあり、登録販売者任せになることもある。思ったよりOTCについて勉強する機会がない。(30代 女性 調剤併設)
●調剤や服薬指導以外の業務もある
- ・レジ業務や品出し、売り場作り、POP書きなどの雑務が多いです。いろいろ経験できて楽しい反面、苦手な業務もあります。(60代以上 女性 調剤併設)
- ・調剤と店頭業務が混在するため、集中力が途切れることがある。(40代 女性 調剤併設)
●祝日の出勤もある
- ・土曜日・日曜日、年末年始、ゴールデンウイーク、連休、お盆等々、世間がお休みの時は仕事。(50代 女性 OTCのみ)
ドラッグストアではOTCの知識を増やすことができます。OTCを扱うことが初めてでも、OTCの知識研修の実施や店舗でのマンツーマンでの指導など、OTC未経験でも安心して働ける環境を各社整えています。さらに、認定薬剤師取得単位となる講座の受講や、調剤・在宅に関する研修も用意している企業が増えています。
休日休暇については、365日営業を行っている店舗もあるため、土日・祝祭日に勤務がある場合もあります。そのため各社とも様々な休暇制度を工夫しており、日曜日・祝日が定休日の店舗での就業や、平日のみの勤務の選択、年末年始に出勤する代わりに最長20日間の長期休暇が取得できるようになっています。