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服薬指導が高齢患者のアドヒアランス向上に役立った経験
メディアや知人に流されてしまった事例集
メディアや知人に流されてしまった事例集
2017.03.28
1.メディアの情報に惑わされ、不安から服薬ノンコンプライアンス
薬の効果や副作用を正しく説明し改善した事例 5事例
「週刊誌でクレストールは服用しない方がよいとあったので」と服用せず
- <患者>
- 70代・女性/高脂血症
- <処方>
- クレストール
患者より「週刊誌でクレストールは服用しないほうがよい薬に入っていたので、飲まないでいた」と聞いた。副作用の説明を改めて行い、服用したほうがよい理由も説明し、納得いただき再開してもらった。
<薬剤師>50代・女性・調剤薬局(クリニック・医院近く)・正社員
「週刊誌でクレストールは服用しないほうがよいとあったので怖くなった」と相談
- <患者>
- 70代・女性/高脂血症
- <処方>
- クレストール
患者から「週刊誌に飲んではいけないと書いてあって、飲むのが怖くなった」と聞いた。副作用について説明し、きちんと受診しいつもと違う症状が出たらすぐに医師に診てもらえば心配ないと話した。納得してもらい、「きちんと飲む。よく説明してもらって良かった。」と述べた。
<薬剤師>50代・女性・調剤薬局(門前薬局)・パート
「週刊誌でクレストールは恐い薬と書いてあったので」と一時期服薬を中止
- <患者>
- 70代・女性/高脂血症
- <処方>
- クレストール
患者から「週刊誌に飲んだら恐い薬と書いてあった。飲んでも大丈夫か?恐くて一時やめていた」とあった。自覚症状がないため、やめたい意向だった。将来における生活習慣病のリスクや、それによって老後のQOLが下がること、副作用はあるが確率としては少なく、有益性のほうが勝ることを話し、服薬を継続してもらえた。
<薬剤師>50代・女性・調剤併設型ドラッグストア・契約社員
「週刊誌でクレストールは服用しないほうがよいとあったので」と医師に内緒で拒薬
- <患者>
- 60代・女性/高LDL症
- <処方>
- クレストール錠
週刊誌で副作用があるから飲まないほうがよいという記事を見て、医師には内緒で拒薬していた。ベネフィットについて資材を用いて説明したら、服用してくれるようになった。
<薬剤師>40代・男性・調剤薬局(門前薬局)・正社員
「新聞の記事を見てディオバンを服薬したくない」と申し出
- <患者>
- 70代・女性/高血圧
- <処方>
- ディオバン
新聞などでディオバンの記事を見て、服用したくないと患者が述べた。しかし、服用により血圧も安定しているなら継続したほうがよいとアドバイス。医師もそれを望んでいることを付け加えた。患者は納得し、継続服用してくれた。
<薬剤師> 40代・男性・調剤薬局(門前薬局)・正社員
2.知人・友人の話に惑わされ、服薬ノンコンプライアンス
薬の効果や副作用を正しく説明し改善した 2事例
知人から「ロキソニンはきつい薬だから飲まないほうがいい!」と聞き服用中止
- <患者>
- 70代・女性/腰部脊柱管狭窄症
- <処方>
- ロキソニン
知人からロキソニンはきつい薬だから飲まないほうがよいと言われ、腰痛が治っていないのに途中で服用をやめてしまった。胃の粘膜を保護する胃薬を一緒に飲んでいるので、炎症や痛みが治まるまできちんと服用するように説明し、安心して服用してもらった。
<薬剤師>60代以上・女性・調剤薬局(クリニック・医院近く)・パート
友人から「私の薬は5mg、あなたの薬は80mg、多すぎるから飲まないほうがいい!」と聞き服用中止
- <患者>
- 80代・女性/高血圧症
- <処方>
- ディオバン80
血圧が下がらないと言われたので、服薬できているかどうか確認したところ、「友人が『私の薬は5mgなのに、あなたは80mgで多すぎで、飲まないほうがいい』と言われた。それを信じて、服薬をやめていた」とのこと。説明をしたら理解し、継続的な服薬につながった。
<薬剤師>60代以上・女性・調剤薬局(門前薬局)・正社員
東京大学大学院薬学系研究科 澤田教授からの講評
テレビ、新聞、週刊誌などのマスメディアや書籍により、根拠のない或いは誤った医療情報・健康情報が伝わることは少なくありません。また、インターネットにはそのような情報があふれています。専門知識のない患者は、これらの情報の真偽を判断できずに不安を抱いたり、誤って理解したりする可能性があります。また、家族や友人・知人を介してこれらの情報を得た場合、より抵抗なく受け入れる可能性もあります。メディア等から発信される医療情報・健康情報を常に注視し、患者からの相談・訴えを受けた場合に的確に対応できるように、準備しておく必要があるでしょう。
2016年9月、リクナビ薬剤師会員に「高齢患者の服薬アドヒアランス不良に関するアンケート」を実施し、その中で、高齢患者への服薬指導に役立つ事例を多くお寄せいただきました。
東京大学大学院薬学系研究科の澤田康文教授に、特に優れた事例をピックアップしてもらい、6つのカテゴリーに分類し、講評をいただきました。
- ① 多剤併用・複数診療科受診により混乱を招いた事例集
- ② 服用するタイミングや剤形の変更・後発医薬品への変更が有効であった事例集
- ③ 丁寧な服薬指導が必要な骨粗鬆症治療薬の事例集
- ④ 患者の性格や羞恥心にも配慮が必要な利尿薬・便秘薬の事例集
- ⑤ 患者が薬識不足で誤った自己判断をした事例集
- ⑥ メディアや知人に流されてしまった事例集
- 監修:東京大学大学院薬学系研究科
- 客員教授
- 澤田康文
- 編集:東京大学大学院薬学系研究科
- 客員教授
- 澤田康文
- 同
- 特任助教
- 佐藤宏樹