リクナビ薬剤師 リサーチセンター

9 服薬指導が高齢患者のアドヒアランス向上に役立った経験
患者の性格や羞恥心にも配慮が必要な利尿薬・便秘薬の事例集

2017.03.28

1.症状がないのに“下剤”を真面目に服用
調整方法のアドバイスで改善した事例 2事例

医師から出された薬だからとマグラックスを用法通りに毎日服用
必ず飲まなければならない薬ではないことを伝えて自己調整が可能に

<患者>
70代・女性/がん
<処方>
マグラックス

下剤は自己調整して服用する指示が出ていたが、医師に出された薬だからといって、毎日用法通りに服用していた。お腹を下す可能性があるため、必ず飲まなくてもよいことを伝えた。次回来局されたときに、感謝の言葉をいただいた。

<薬剤師>20代・男性・調剤薬局(門前薬局)・正社員

下痢をしているのに酸化マグネシウムを毎日真面目に服用
医師への相談の仕方を指導して排便コントロールが改善

<患者>
70代・男性/統合失調症
<処方>
酸化マグネシウム

薬は医師の指示通りに飲みましょうと指導されて、真面目に服用していた患者。腹部状態を確認したところ、毎日下痢をしているとのこと。酸化マグネシウムはお腹の状態で調節できる薬だと説明されていたようだが、具体的にどのようなときに調節できるかわからなかったようである。それ以降は、診察時に便の回数や性状を医師に伝えて、量や飲み方を調節してもらうように患者に伝えた。また、医師にも事情を説明し、その後の排便コントロールは順調になった。

<薬剤師> 40代・女性・一般病院・正社員

2.外出中のトイレを心配し利尿薬・便秘薬の服薬ノンコンプライアンス
服用方法のアドバイスで改善した事例 2事例

トイレが近くなるので外出時にはラシックスを服用せず
服用方法のアドバイスと包装の工夫で服薬コンプライアンス改善

<患者>
80代・男性/高血圧
<処方>
ラシックス

ラシックスを朝食後に服用するとトイレが近くなるため、外出のあるときは服用していないことがわかった。また、一包化していたため、他の降圧薬も服用していないことがわかった。一包化において、ラシックスだけを別包にして、外出する日の朝食後はラシックス以外の薬を服用してもらい、別包になっているラシックスは、トイレが確保できる場所に移動してから服用してもらうようにすることで、患者も了解して服用するようになった。

<薬剤師>50代・女性・調剤薬局(門前薬局)・正社員

漏らした経験からアミティーザと酸化マグネシウムを服用せず
酸化マグネシウムは調整できることを伝えて服薬コンプライアンス改善

<患者>
70代・男性/慢性便秘症
<処方>
アミティーザ、酸化マグネシウム

地方の城や名所を訪ねることを趣味にしている患者。同じ趣味の仲間とともに、毎月旅行に行っている。ある日、酸化マグネシウムが大量に残っていることが分かり、理由を尋ねたところ、「旅行の移動中に便意を催し、間に合わずに軟便を漏らしてしまった。仲間も一緒にいたので恥ずかしかった。それ以降、あまり服用しないようにしている」とのこと。長い期間、便秘で苦しんでいて、便秘自体はアミティーザで改善したが、今まで酸化マグネシウムも決められたとおりに服用していた。「酸化マグネシウムは便を柔らかくして、排泄しやすくする薬です。アミティーザが主薬で、酸化マグネシウムは補足的に用いています。なので、酸化マグネシウム自体は調整しながらでも大丈夫ですよ」と説明したところ、患者は「安心した。すべて飲まないといけないと思っていたから、薬が残ってしまい、困っていた」と打ち明けてくれた。受診した時に医師に薬が残っていることを伝えれば、数量は調整してくれることも話した。

<薬剤師>30代・男性・調剤薬局(門前薬局)・正社員

東京大学大学院薬学系研究科 澤田教授からの講評

便秘薬は、定期服用の処方であっても、医師から調節してもよい旨の指示を受けているケースは多いです。調節が可能であることは、患者が誤解して誤判断のもと調節して使用すると、服薬ノンコンプライアンスとなります。どのような場合に、どの程度の錠数・回数を調節するのか、具体的にアドバイスする必要があります。

また、便秘薬や利尿薬は、服用によってトイレの回数が増えることがありますので、それが服薬ノンコンプライアンスの原因になることもあります。ただし、外出時のトイレを避けたい、就寝中のトイレを避けたいなど理由は様々ですので、患者の悩みを聞き出し、それに応じたアドバイスを行う必要があります。

2016年9月、リクナビ薬剤師会員に「高齢患者の服薬アドヒアランス不良に関するアンケート」を実施し、その中で、高齢患者への服薬指導に役立つ事例を多くお寄せいただきました。
東京大学大学院薬学系研究科の澤田康文教授に、特に優れた事例をピックアップしてもらい、6つのカテゴリーに分類し、講評をいただきました。

監修:東京大学大学院薬学系研究科
客員教授
澤田康文
編集:東京大学大学院薬学系研究科
客員教授
澤田康文
特任助教
佐藤宏樹

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