リクナビ薬剤師 リサーチセンター

7 服薬指導が高齢患者のアドヒアランス向上に役立った経験
服用するタイミングや剤形の変更・後発医薬品への変更が有効であった事例集

2017.03.28

1.“食間”服用の服薬ノンコンプライアンス
服薬タイミングのアドバイスで改善した事例 2事例

1日2回のブイフェンド錠、“食間”の指示で服用する間隔が狭いことが発覚
寝る前の服用を提案して時間を調整

<患者>
70代・男性/肺真菌症
<処方>
ブイフェンド

ブイフェンドを1日2回、食間の指示で処方された患者。当薬局には初めての来局だったが、ブイフェンドの服用は3回目であった。患者本人が管理しているとのことだったので、服用について再度確認した。患者は「食間に飲んでいるから大丈夫」と述べたが、食間をどの程度理解しているのか確認したところ、「食後2時間か食事前2時間だよね、そこはダメなんだよね」と述べたので、服用方法は問題ないなと思った。

しかし、処方箋に1日2回としか記載がなかったことから、服用時点も一応確認したところ、9時と13時だった。生活習慣を確認したところ、起床が8時、就寝が19時、食事が11時と16時とのこと。患者に、あまりに服用時点が狭いことを話し、寝る前に服用するように提案した。患者は寝る前だと胃が悪くなることを気にしていたが、コップ1杯の水で服用すれば大丈夫と伝えると、納得された。

その後、担当の医師に報告したところ、「それでいいです、ありがとうございます」と仰っていただけた。後日、患者が2回目に来局し、服用はどうしているか確認したところ、9時、19時で飲んでいるとのことで、今後も経過観察中。

<薬剤師>30代・女性・調剤薬局(クリニック・医院近く)・正社員

夕食の2時間後に服用するクレメジンの飲み忘れ
就寝前を提案して服薬コンプライアンス改善

<患者>
70代・男性/慢性腎不全
<処方>
クレメジン

患者が「食間はどうしても忘れてしまうんだよね。特に夕食の2時間後なんて忘れるよ!それに、これ飲みにくいから、どうしても飲めなくてね」と述べた。そこで、食前服用や、夕食後の食間は寝る前の服用を提案した。透析が始まったら、連泊で旅行にも行きにくくなるという話などを盛り込み、クレメジンの重要さを説明したところ、「食前服用なら飲めるかな」ということになった。次回来院時、「以前よりだいぶ飲み忘れが減ったよ」ということで、クレメジンの服薬コンプライアンスは向上した。

<薬剤師>30代・女性・調剤薬局(門前薬局)・正社員

2.服薬・使用しづらいため服薬ノンコンプライアンス
剤形変更で改善した事例 3事例

腰痛で湿布が処方されたが貼れずに残薬多数
ローションへの処方変更で服薬コンプライアンス改善

<患者>
80代・男性/腰痛
<処方>
湿布

独居の患者。腰痛に湿布が処方されたが、肩の可動域を考えると貼れないのではないかと思い尋ねたら、「貼れない」との答え。湿布貼付補助器具もあるが、ローションなら使用できそうと判断し、処方変更してもらった。聞いたところ、家に使わない湿布が余っていたとのこと。

<薬剤師>30代・女性・研究職・正社員

カリメートドライシロップが水に溶けにくくて飲みづらく残薬多数
アーガメイトゼリーへ変更して服薬コンプライアンス改善

<患者>
90代・男性/疾患未回答
<処方>
カリメートDS

患者本人へのインタビューから、水に溶けにくく、飲みづらいと申告があった。また、在宅訪問した際に、残薬も大量に見つかったため、服薬コンプライアンス不良と認識した。医師にフィードバックすると、アーガメイトゼリーへ変更となった。以降は服薬コンプライアンスが改善し、継続できている。

<薬剤師>30代・女性・調剤薬局(門前薬局)・正社員

点眼剤の服用がうまくできず、使用目的も理解できずに服薬を断念
服薬意図の説明・げんこつ法の指導で服薬コンプライアンス改善

<患者>
60代・女性/緑内障
<処方>
キサラタン、チモプトール

正常眼圧緑内障で複数の点眼剤を使用しているが、点眼する意味を理解できていなかった。また、点眼に時間がかかること、手が震えてうまく点眼できないことから、服薬コンプライアンスが低下していた。

まず、目の構造を図示して緑内障について説明し、患者の疾患に対する理解を深めた。その上で、正常眼圧でも、さらに眼圧を下げることにより、進行を抑制できること、また、2つの点眼剤を使用する意味があること(房水の産生を抑えるのと、排泄を促進するので作用機序が異なり、相加的に作用する)を説明した。また、うまく点眼できるように、げんこつ法を教えた。さらに、点眼に時間がかかることについて、点眼回数が減る配合剤があることを伝え、医師に相談するよう勧め、以降は配合剤に変更になった。

以上の事により、服薬コンプライアンスが向上した。その後、患者からの信頼を得て、患者希望で他の疾患治療薬を交付する際も常に担当している。

<薬剤師>30代・女性・調剤薬局(門前薬局)・正社員

3.薬の保管に対する患者の不安
後発医薬品への変更で解消した事例 1事例

冷蔵保存のリズモンTG点眼液は、停電時に効かなくなるのではと不安に
冷蔵庫保存不要な後発医薬品への変更で解消

<患者>
60代・女性/緑内障
<処方>
リズモンTG

冷蔵庫で保管する薬剤について、「万一停電した場合、薬効がなくなってしまうのではないか?」など心配していた。室温で保管した場合、ゲル化はしないが、作用時間が短くなる恐れがあることを説明。ジェネリック医薬品で冷蔵庫保管しなくてよい薬剤があったため、そちらに変更した。

<薬剤師> 30代・男性・調剤薬局(門前薬局)・正社員

東京大学大学院薬学系研究科 澤田教授からの講評

患者が服薬ノンコンプライアンスにおちいる原因は様々で、それを聞き出すのが薬剤師の腕の見せどころです。その原因や患者に応じて、対応策を提案する必要があります。

例えば、「食間」指示の場合、その意味を説明するだけでなく、患者の生活スタイルを聴取し、服薬時間を具体的にアドバイスすることが服薬コンプライアンスの向上に繋がります。

また、服用感や使い勝手に対する不満や不安は、剤形変更などで解消することがあります。最近では、製剤・包装に工夫を施し、服用感や使い勝手を向上させた後発医薬品も登場しています。

2016年9月、リクナビ薬剤師会員に「高齢患者の服薬アドヒアランス不良に関するアンケート」を実施し、その中で、高齢患者への服薬指導に役立つ事例を多くお寄せいただきました。
東京大学大学院薬学系研究科の澤田康文教授に、特に優れた事例をピックアップしてもらい、6つのカテゴリーに分類し、講評をいただきました。

監修:東京大学大学院薬学系研究科
客員教授
澤田康文
編集:東京大学大学院薬学系研究科
客員教授
澤田康文
特任助教
佐藤宏樹

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