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服薬指導が高齢患者のアドヒアランス向上に役立った経験
丁寧な服薬指導が必要な骨粗鬆症治療薬の事例集
~ビスホスホネート系薬の面倒な服薬方法による服薬ノンコンプライアンス 懇切丁寧な説明で改善した事例~
丁寧な服薬指導が必要な骨粗鬆症治療薬の事例集
~ビスホスホネート系薬の面倒な服薬方法による服薬ノンコンプライアンス 懇切丁寧な説明で改善した事例~
2017.03.28
1.リカルボン錠 3事例
4週1回のリカルボン錠50mg、服用日を間違えた場合に服用せず
数日のずれは問題がない旨を伝えて服薬コンプライアンス改善
- <患者>
- 70代・女性/骨粗鬆症
- <処方>
- リカルボン50mg
4週に1回の服用だが、服用日を間違えた場合には服用しておらず、そのことを医師に伝えられなかった。数日の服用のズレは問題ないこと、医師にはこちらから事情を連絡しておくと話し、医師と患者の橋渡しができた。それからは、しっかりと服用してもらえるようになった。
<薬剤師>30代・男性・調剤薬局(クリニック・医院近く)・正社員
リカルボン錠50mg、薬を飲んだ日を忘れ残薬が多数
シートへの日付記入・空のシート持参を促して服薬コンプライアンス改善
- <患者>
- 70代・女性/骨粗鬆症
- <処方>
- リカルボン50mg
患者より「いつも薬を飲んだ日を忘れる」と聞いた。一度どのくらい残っているのか確認したところ、症状もないし、服用したりしなかったりしていたことが判明。医師に気兼ねして、処方されるたびにもらっており、症状もないし、効いているかもわからないので、あやふやな服用になっていたとのこと。
骨粗鬆症の症状と薬による効果をかなり説明。また、忘れないように必ずシートに日付を書いて渡し、次回に飲んだ空のシート持参するよう指導。今では残薬もなくなり、骨密度も緩やかに上昇しており、感謝されている。
<薬剤師>40代・女性・調剤薬局(門前薬局)・正社員
服用後30分間“座った状態で”待つ必要があると勘違いし服用せず
横にならなければ問題がない旨を伝えて服薬コンプライアンス改善
- <患者>
- 70代・男性/骨粗鬆症
- <処方>
- リカルボン
服用を開始して4~5回目で、日付がずれることが度々ある患者。飲み方が面倒くさいと毎回のように言っていたので、確認したところ、服用してから30分間座った状態でずっと時間が経つのを待っている状況であった。待っている必要はないので、横にならなければ、例えば家事をしていても大丈夫と伝えたところ、それからほぼずれることなく服用することができている。
<薬剤師>30代・男性・調剤薬局(クリニック・医院近く)・正社員
2.フォサマック錠 1事例
服薬介助している娘の不在時は起床時に服用せず
注射薬へ変更され服薬コンプライアンス改善
- <患者>
- 80代・女性/骨粗鬆症
- <処方>
- フォサマック
患者の娘が通って服薬を補助していた。娘が付き添いで来局したときに話を伺うと、起床時服薬のフォサマックは娘がいない時間なので服薬できていないことがわかった。やむを得ない場合は日中の空腹時の服薬でもかまわないことを説明するとともに、医師にも服薬状況を報告した。次の受診でビスホスホネートの注射薬に変更になった。
<薬剤師>40代・女性・調剤薬局(クリニック・医院近く)・準社員
3.ボナロン錠 2事例
服用後30分間横になれないのが苦痛で服用せず
他剤への処方変更により服薬コンプライアンス改善
- <患者>
- 80代・女性/骨粗鬆症
- <処方>
- ボナロン
服用した後30分横になれないのが辛く、服薬コンプライアンスが悪かった。服用の重要性についてよく説明し、4週に1回タイプのボノテオに処方変更してもらい、服用してもらう。
<薬剤師>50代・女性・調剤併設型ドラッグストア・正社員
“服用してから30分間身動きできない”と勘違いし服用せず
正しい服用方法などを丁寧に説明し服薬コンプライアンス改善
- <患者>
- 70代・女性/骨粗鬆症
- <処方>
- ボナロン
服用してから30分動いてはいけないと勘違いし、動けないのが辛くて服用しなかった患者。正しい服用方法と飲み忘れたときの飲み方について時間をかけて説明し、服用できるようになった。
<薬剤師>50代・女性・調剤薬局(門前薬局)・正社員
4.アレンドロン酸(先発品名:フォサマック、ボナロン) 1事例
アレンドロン酸錠をミネラルウォーターで服用
水道水で飲むように服薬指導をして改善
- <患者>
- 70代・女性/骨粗鬆症
- <処方>
- アレンドロン酸35mg
服薬指導の際に、アレンドロン酸をミネラルウォーターで服用していることが分かった。ミネラルウォーターはカルシウムやマグネシウムを多く含んでいる可能性があるため、水道水で飲むように指導した。
<薬剤師> 30代・男性・調剤薬局(門前薬局)・正社員
5.アクトネル錠 1事例
特殊な服用方法で服用せず
根拠を理解してもらうことで服薬コンプライアンス改善
- <患者>
- 70代・男性/骨粗鬆症
- <処方>
- アクトネル
服用方法(起床時/服用後30分飲食及び側臥位禁止)の説明は受けていたものの、その理由を理解していなかった。納得と理解が得られるよう、丁寧に説明した結果、明るい表情で、「なるぼど!そういうことだったのだね」と述べ、以降、服用方法をしっかり遵守するようになった。
<薬剤師>50代・男性・離職中(前職:調剤併設型ドラッグストア)
東京大学大学院薬学系研究科 澤田教授からの講評
骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネート系薬の経口剤には、起床時に服用し、服用後30分は水以外の飲食をせず、横になってはいけないなど、服用時の注意点が多数あります。これを患者が誤解し、服薬コンプライアンスの低下を来す場合がありますので、患者へ懇切丁寧に説明し、理解を確認する必要があります。ビスホスホネート系薬の服用による患者の負担を減らすため、週1回の経口剤、月1回の経口剤・注射剤、さらには年1回でよい注射剤も登場しています。一方で、毎日服用しない、服用間隔が長いことにより、服薬ノンコンプライアンスとなる場合もありますので、患者に応じた選択が必要です。
2016年9月、リクナビ薬剤師会員に「高齢患者の服薬アドヒアランス不良に関するアンケート」を実施し、その中で、高齢患者への服薬指導に役立つ事例を多くお寄せいただきました。
東京大学大学院薬学系研究科の澤田康文教授に、特に優れた事例をピックアップしてもらい、6つのカテゴリーに分類し、講評をいただきました。
- ① 多剤併用・複数診療科受診により混乱を招いた事例集
- ② 服用するタイミングや剤形の変更・後発医薬品への変更が有効であった事例集
- ③ 丁寧な服薬指導が必要な骨粗鬆症治療薬の事例集
- ④ 患者の性格や羞恥心にも配慮が必要な利尿薬・便秘薬の事例集
- ⑤ 患者が薬識不足で誤った自己判断をした事例集
- ⑥ メディアや知人に流されてしまった事例集
- 監修:東京大学大学院薬学系研究科
- 客員教授
- 澤田康文
- 編集:東京大学大学院薬学系研究科
- 客員教授
- 澤田康文
- 同
- 特任助教
- 佐藤宏樹