事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.9
ファモチジン服用中の高齢患者への薬学的管理のポイントは?
- 消化器系
難易度:★☆☆
- 疾患名:胃炎
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- 医薬品販売名:ガスター錠 10 mgほか
- 医薬品一般名:ファモチジン
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
<処方> 70歳代・男性、内科クリニック
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- 【般】アムロジピン錠 5 mg
- 1錠 1日1回 朝食後 14日分
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- 【般】ファモチジン錠 10 mg
- 2錠 1日2回 朝夕食後 14日分
Subjective data:主観的情報
同じ薬だね。最近ボーっとしたり、ちょっと前のことを思い出せないことがあって。家族に心配されちゃったよ。認知症のはじまりかねぇ。
Objective data:客観的情報
継続処方。認知機能低下あり、せん妄の可能性も考えられる。
Assessment:評価は? Plan:計画は?
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解答
Assessment:評価
ヒスタミン H2 受容体拮抗薬は、高齢者において認知機能低下、せん妄を引き起こすリスクがあるため、可能な限り使用を控えることが望ましいとされる。今回の見当識障害とファモチジンとの関連例を評価する。
Plan:計画
ファモチジン使用と時間的に関連が疑われる見当識障害の経時的変化の確認。ファモチジンの影響が疑われる場合は、処方変更等を含めた疑義照会を行う。
説明事例
「ボーっとしたり、ちょっと前のことを思い出せないことがあって、ご家族に心配されてしまったのですね。認知症でもそのような出来事は起こりますが、もしかすると前回から追加になったファモチジンという胃薬の影響も考えられます。ご家族に心配されたのはいつ頃ですか? お薬を変更することで改善されることもありますので、先生にこれから確認させていただいてもよろしいでしょうか。」
解答に必要な医薬品情報
高齢者へのヒスタミン H2 受容体拮抗薬投与
ヒスタミン H2 受容体拮抗薬(H2RA)は、対象となる高齢者において認知機能低下、せん妄を引き起こすリスクがあるため、可能な限り使用を控えることが望ましい。高齢者では腎機能が低下しているものが多く、腎排泄型の本剤は血中濃度が持続する可能性が高いため、H2RA が必要な場合は少量から慎重に投与する。(エビデンスの質:中、推奨度:強)。
[文献]
日本老年医学会:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015 (2018.05.24 アクセス)
(参考)
ファモチジンの添付文書における精神神経系の副作用の記載は以下の通りである。
ガスター錠の添付文書
【使用上の注意】
4.副作用
(3) その他の副作用
精神神経系:全身倦怠感、無気力感(0.1% 未満)、意識障害(頻度不明)
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高齢者における認知機能障害の副作用
高齢者で認知機能障害が疑われる場合、疾患の症状としてだけでなく、薬物の有害事象が合併している可能性を検討することが重要である。
薬物の有害事象としての認知機能障害はさまざまな状態や症状として把握される。しかしながら、軽微な認知機能低下は把握されにくく、関連しうる要因が複数ある場合には薬物の影響を判断することが難しくなる。臨床的には(1)注意力低下が目立つ、(2)薬物使用と時間的に関連が疑われる認知機能障害の経時的変化がみられる、(3)せん妄に類似した症状を呈する場合がある、(4)薬物中止により認知機能障害が改善する、(5)薬物の過剰投与により認知機能障害が悪化することが気づきのポイントとして挙げられている。
[文献]
日本医師会:超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き「2. 認知症」(2018.05.24 アクセス)