事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.8
ジプレキサ服用患者が薬局内で水を大量に飲んでいた?
- 神経系
難易度:★☆☆
- 疾患名:統合失調症
-
- 医薬品販売名:ジプレキサ錠 10 mg
- 医薬品一般名:オランザピン
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
<処方> 40歳代・男性、精神科クリニック
-
- ジプレキサ錠 10 mg
- 1錠 1日1回 夕食後 28日分
Subjective data:主観的情報
いつもの薬でしょ。特に変わりないよ。
Objective data:客観的情報
継続処方。薬局内での待ち時間、ペットボトルの水を多飲。ジプレキサ投与開始時に比べ、やや太っている印象あり。
Assessment:評価は? Plan:計画は?
解答・解説を見る
解答
Assessment:評価
水の多飲はジプレキサ服用による「口渇」が出現している可能性がある。また、体重増加も踏まえ、ジプレキサの副作用の可能性を評価する。
Plan:計画
患者は以前より訴えが少なく、色々聞かれるのが苦手そうである。本人の意思を尊重しつつ、最近の変化や副作用の可能性を伝え、早期の受診を勧奨する。患者の承諾を得て、医師にもトレーシングレポートで症状を報告する。検査値(血糖値やHbA1c)のモニタリングも行う。
説明事例
「特にお変わりないということで、いつものお薬が処方されています。今日は 1 点だけお聞きしたいのですがよろしいですか。先ほどお水を沢山飲まれていたようなのですが、最近よくのどが渇くといったことはありませんか? もしかすると、お薬の影響かもしれません。この薬を飲んでいると血糖値が高くなることがあり、そうするとのどがとても渇いたり、おしっこの量が増えたりすることがあります。ほかにもお薬の影響で体重が増えてしまうこともあるんですよ。何か少しでも体調に変化を感じたら、早めに医師か薬剤師にお知らせくださいね。」
解答に必要な医薬品情報
オランザピンは、重大な副作用として、高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡が知られている。投与中は、血糖値の測定等の観察を十分に行うことが大切である。投与にあたっては、これらの副作用が発現する場合があることを、患者およびその家族に十分に説明しておく。口渇、多飲、多尿、頻尿等の症状があらわれた場合には、ただちに投与を中止して、医師の診察をうけるよう指導しておく必要がある。
また、オランザピン投与により体重増加を来すことがあるので、肥満に注意する。肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行う。
詳細はオランザピン製剤の最新の添付文書を参照されたい。
もっと知る!
現時点でジプレキサ服用中の高血糖発現機序は明確ではないが、非臨床および臨床では、いくつかの仮説が示されている。高血糖が示唆される症状(口渇、多飲、多尿、頻尿等)が認められた場合には、血糖値およびその他の臨床的に必要な検査を測定し、糖尿病の有無を診断する。
また、ジプレキサ服用中による体重増加、肥満の発現機序は、現時点では不明であるが、セロトニンやヒスタミンの神経伝達神経伝達物質、ニューロペプチド、神経調節物質、サイトカイン、ホルモン等の複雑な相互作用が考えられている。対処法としては、食事療法や運動療法、場合によっては体重増加のリスクが低い薬剤への変更を考慮する必要がある。