事例で学ぶ 服薬ケア コミュニケーション
CASE.6
抗悪性腫瘍薬による手足症候群とは?
- 悪性腫瘍
難易度:★★☆
- 疾患名:大腸癌
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- 医薬品販売名:ゼローダ 錠 300
- 医薬品一般名:カペシタビン
問題
事例における、Assessment:評価、Plan:計画 はどのようなもので、
患者には具体的にどのように説明すればよいでしょうか。
<処方> 60 歳代・女性、総合病院 外科、1 月 16 日
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- ゼローダ 錠 300
- 6錠 1日2回 朝夕食後 21日分
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- ヒルドイドソフト軟膏 0.3%
- 25g 1日2回 手足
Subjective data:主観的情報
乳癌治療をしていたけど、腰痛がひどくて骨に転移してる可能性があるので、お薬を変更するってお医者さんから言われました。手に塗るお薬が出ているけど、特に手には何もないのに、なぜかしら?
Objective data:客観的情報
今回、フェソロデックス筋注<フルベストラント>からゼローダ錠<カペシタビン>の内服へ処方変更された。ゼローダ錠は手足症候群を起こす可能性がある。手足症候群の予防のために皮膚の保湿が重要である。
Assessment:評価は? Plan:計画は?
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解答
Assessment:評価
ゼローダ錠の副作用(手足症候群)予防のために保湿剤が処方された。
Plan:計画
患者へ副作用の可能性と症状、予防について十分に説明する。次回、服薬および保湿剤使用のコンプライアンス状況確認と副作用モニタリングを行う。
説明事例
「今回処方された新しいお薬を飲むと、手や足がヒリヒリ・チクチクしたり、赤く腫れたり、皮膚にひび割れや水疱が出るなどの副作用の可能性があります。予防として保湿をすることが大切です。ヒルドイドソフト軟膏は保湿のために処方されていますので 1 日 2 回、しっかりと塗ってください。また、手や足や爪にふだんと違った症状があらわれたときには、すぐに医師か薬剤師にご相談ください。」
解答に必要な医薬品情報
ゼローダ錠 300 の添付文書(2016 年 8 月改訂、第 17 版)
【重大な副作用】
手足症候群(Hand-foot syndrome)(頻度不明):
手掌及び足底に湿性落屑、皮膚潰瘍、水疱、疼痛、知覚不全、有痛性紅斑、腫脹等の手足症候群があらわれることがあるので観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
手足症候群(Hand-foot syndrome:HFS)の対処法
発現機序が不明で、確実な予防法・治療法はありません。したがって、経験的な処置法が主体となりますが、局所の治療に関しては、保湿剤やステロイド外用剤を塗る等の対処法が一般的です。また、ピリドキシン塩酸塩(ビタミン B6)の投与で、症状が軽減することが報告されています。国内第ⅠⅠ相臨床試験ではステロイド外用剤(ベタメタゾン等、薬効が中程度のものから強いものまで)、尿素軟膏及びビタミンA軟膏が単独または併用で、手足症候群に対する治療薬として最も多く使用されました。
(p.18-19)
Q:手足症候群が発現した場合、どのように対処すればよいですか?
A:現在のところ、確立された治療法はありません。
局所の治療に関しては、保湿クリームやステロイド外用剤を塗る等の対処法が一般的で、国内臨床試験における対症療法では、保湿クリームやステロイド外用剤(ベタメタゾン等、薬効が中程度のものから強いものまで)、尿素軟膏及びビタミン A 剤が単独または併用で使用されました。また海外では、5‐FU 持続静注においてビタミン B6 を使用した報告等があります。
<参考>ビタミン B6(内服)投与
本剤で検討したデータではありませんが、26 例の大腸癌患者を対象に、5‐FU 持続静注時に、ビタミン B6 投与群と非投与群に無作為化割り付けをした試験の結果では、ビタミン B6 投与群で手足症候群の症状の改善が認められたとの報告があります。
(p.45)
もっと知る!
重篤な副作用に関しては、厚生労働省が「重篤副作用疾患別対応マニュアル」を作成しています。厚生労働省のサイトより閲覧が可能です。確認をしておくと良いでしょう。
重篤副作用疾患別対応マニュアル一覧
皮膚、肝臓、 腎臓、血液、呼吸器、消化器、心臓・循環器、神経・筋骨格系、卵巣、精神、代謝・内分泌、過敏症、口腔、骨、泌尿器、感覚器(眼)、感覚器(耳)、感覚器(口)、癌
重篤副作用疾患別対応マニュアル:手足症候群平成 22 年 3 月